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第24話 自由への逃走

「はいじゃあ、質問だ。この家父長制の問題点はなんだと思う?」

「ガウガウ!」

 手を天まで伸びろとばかりに上げたのは垂れた耳を持つブラックアンドタンの毛色の犬。そう、まるでダックスフンドのような。

「じゃあダックス」

「わかりません!」

「いやわかんねえなら自信満々に答えんなよ!? 答えねえよりましだけどさ」

「ウォン! 私にはわかりますとも」

 きらんという擬音が付きそうな顔つきのほっそりとしたリュカオンが妙なポーズをとった。サルーキのような顔つきだったけどこいつの名前はちょっと捻った。

「はい。サッキー」

「長が肉を独占してしまうということでしょう!」

 まーたこいつ妙なことを言いだしているよ、という空気が流れる。たしかにサッキーがかっこつけて妙なことを言いだすのはいつものことだが。

「あー、うんまあ間違いじゃない」

 え、あってるの!? と再び妙な空気になる。

「権力が集中して他の人の意見がないがしろになる。良くも悪くも変化が起こらなくなる。そういう状況に陥りやすい」

 家父長制は社会を維持する分には都合がよい。でも社会情勢の変化には弱い。

 つまり一定段階まで成熟してしまうと進歩しづらくなってしまう。

「ただ俺には時間がないからな。がんがん進歩して、がんがん発展させなきゃいけない。だから知識を横に広げる。そのための学校だ」

 そう。

 俺には時間がない。

 この世界の歴史を紐解けば紐解くほど、ノヴァローマに勝利するには印落ちがいる。俺の寿命はあと六十年持てば御の字。それまでに奴らと勝負をつけなければならないのだ。

「っと。話が脱線したな。それじゃあ……」

 何か設問を出そうとしたところで、部屋の外から澄んだ声が聞こえた。

「クラヴァス! いるー?」

「ユリアか?」

 部屋に入ってきたのはラミアのユリアだった。彼女もたまに学校に通ってくれている。

「ユリアの姐さん! こんにちは!」

 元気よくあいさつしたのはシバだった。ユリアはリュカオンたちからも知らわれている。

「うん! こんにちは! アザーレ君が来てほしいってさ」

「ん、ああ。例の実験結果か。しょうがないな。お前ら、これをやっとけ」

 一枚の紙を取り出して教壇の上に置く。

「ちゃんと自分で考えろよ」

 と、言い残しユリアについていく。


 そうしてクラヴァスとユリアが去った後で、五人のリュカオンはお互いに目を合わせた。

「ワウウ。行ったかな」

 シバがにやりと笑いながらそおっと部屋の窓に近寄る

「どこ行くのー?」

 ピュグマイオイがふにゃりとした声で問いかける。

「ウォン! それはもちろん、自由への扉へ向かうのさ」

 サッキーが格好をつけながら気障っぽい台詞をつぶやく。

「宿題しなくていいのー?」

「バウ! 我々には宿題があります!」

 レタとシェパに止められるがリュカオンたちは屁理屈を述べる。

「ワン。帰ってからやればいい」

「バウ! それなら怒られないですね!」

 一応やや難色を示していたシェパもあっさり丸めこまれ、自由への逃走を始めるために窓から飛び出る。

「いやっほ……」

「どこへ行くんだ?」

 すると窓の外で待ち構えていたクラヴァスに呼び止められた。

 今まさに窓を乗り越えようとしてたリュカオンたちは時間が静止したかのように動きを止めた。

「ト……トイレに……」

「窓から?」

「ち、近かったので……」

「全員で?」

「……」

 リュカオンたちは冷汗をかきながら押し黙るしかなかった。

「そんなに元気があり余ってるなら畑仕事でも手伝え! お前らも一緒にアザーレの畑に来い!」

 ええーという非難の声は完全に黙殺された。


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