3.5章24話ソニックブーム
「これで買い残しないね」
ミアがコーイチの顔を覗き込んだ。
コーイチが頷く。
そのまま、自然にミアの顔を見返した。
「ミア、ちょっとお願いなんだけど……付き合ってもらえないか?」
真面目な表情だった。
ミアの胸がドキリと高鳴る。
(え、なに?)
言葉を返す前に、コーイチはミアの手を軽く引いた。
そのまま歩き出す。
――そして。
「って、なんで森なのよ!」
ミアが思わず声を上げた。
コーイチは振り返りもせず答える。
「動く相手でもムチが当たるか練習したいんだ」
「はぁ……」
ミアは額に手を当てた。
「こんなことだと思った……」
小さくため息。
「私のときめき返せ、ばか」
「ん? 何か言った?」
「もういい」
ミアは剣を抜いた。
森の中を警戒しながら進む。
やがて。
「……いた」
草むらの向こう。
小さなウサギが跳ねている。
ミアは少し離れて位置を取った。
コーイチがムチを構える。
最初は武器屋のところと同じ動きだった。
腕を振り、円を描く。
ムチが遅れて追従する。
一回。
二回。
リズムを探る。
ウサギが跳ねる。
コーイチの目が追う。
三回目。
ムチの軌道が安定する。
腕の動きが少しだけ変わった。
余計な力が抜ける。
タイミング。
距離。
角度。
――振る。
コーイチのムチの先は、もう速すぎて見えなかった。
ドンッ――
明らかに今までの「バシッ」という音とは違う。
腹の奥に響くような重い音が森に広がる。
一瞬遅れて。
空気がビリビリと震えた。
葉がざわりと揺れ、足元の草が波のように倒れる。
そして。
ウサギは真っ二つになっていた。
「あ、やりすぎた……」
「やりすぎたじゃないわよ!」
ミアがコーイチを睨む。
「毛皮がめちゃくちゃで取れないじゃん!」
ミアは、やっぱりという顔をした。
「コーイチのことだから、こうなると思っていた。」
「なんか、ミア、僕のこと諦めてない?」
ミアはわざと意外そうな顔を作る。
「今気がついたの?」




