第3.5章 第6話 こんなにもらったの、初めて!
コーイチとミアのペアとしての初仕事は、上々の滑り出しだった。
森の中で倒した角ウサギは、数も質も申し分ない。
血抜きをし、内臓を外し、魔石を抜き取る。
その作業を繰り返すうち、革袋はすぐに重くなった。
「持ちきれないね、これ」
ミアが苦笑する。
外した内臓は、森の奥にまとめて捨てておく。
人間にとっては不要でも、他の動物にとっては貴重な餌だ。
自然の循環として、そうするのが当たり前らしい。
「今回は、解体はギルドに任せたほうがいいよ」
ミアはそう言って、血の付いた手を拭った。
「量が多いし、手数料払っても損しない」
「そうなんですか?」
「うん。慣れてないと、皮や肉を無駄にしちゃうから」
なるほど、とコーイチは頷いた。
確かに、解体は思った以上に繊細な作業だ。
腹膜を破らないように、内臓を傷つけないように――
教わりながら何度かやってみたが、熟練には程遠い。
ギルドに戻ると、受付で魔石と素材を提出し、解体処理の手続きを行った。
「肉はどうします?」
職員の問いに、ミアは迷いなく答える。
「一匹分だけ、受け取ります。あとは換金で」
「了解。肉は明日だな」
慣れたやり取りだった。
解体手数料を差し引いても、報酬は十分すぎるほど残った。
普段、一人で素材採集をしていたときとは、明らかに違う。
「……多い」
コーイチが素直に口にすると、ミアは目を丸くしてから、ぱっと笑った。
「でしょ!?」
次の瞬間、ミアは勢いよくコーイチに抱きついていた。
「ありがとう!」
「採集で、こんなにもらったの初めて!」
突然のことに、コーイチは一瞬固まる。
「え、あ、いえ……」
腕の中の温もりと、素直な喜びの感情が、そのまま伝わってくる。
どうやら、この報酬はミアにとっても予想以上だったらしい。
「やっぱり、ペア組んで正解だったね」
そう言って離れるミアの顔は、晴れやかだった。
そのまま二人は、いつもの酒場へ向かう。
冒険者としての仕事は終わった。
だが、今日一日の余韻は、まだ終わらない。
――とりあえず。
この日は、ここまで。




