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異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件  作者: カトーSOS


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33/57

第3.5章 第1話 (仮)朝

第3.5章は、第29.9話の続きとなります。


第29.X話は性的な内容を含むため、本編とは別作品として掲載しています。

気になる方は

「異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件(R15の話)」


または、

ノクターンノベルズ

・異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件(18禁の話)


をご覧ください。


そして――


ここからは、少しだけ空気の変わった二人の話です。

挿絵(By みてみん)


 窓の外が、すでに明るい。



 寝返りを打とうとして、動きを止めた。

 布の擦れる音の向こう、微かな呼吸と遠慮がちな物音が聞こえた。



 ベッドには昨夜の名残のような温度だけが、まだ残っている。


 ――あ。



昨夜のことが、遅れて思い出される。

 酒場。少し飲みすぎた彼女。腕に絡みついてきた感触。

 「今日、泊まっちゃダメ?」と、消え入りそうな声。


 思い出すと、胸の奥がむず痒くなる。


 コーイチは天井を見たまま、ゆっくり息を吐いて、体を起こす。



「……あ、起きた?」

 視線を巡らせると、ミアはもう起きていた。


 部屋の隅で、手早く身支度をしている。

 動きが早い。無駄がない。


「おはよう」


 声をかけると、ミアは振り返って、少しだけ笑った。


「おはよう。起こしちゃった?」


「いえ。今、起きました」


「そっか」


 それだけ言って、また手を動かす。


 バッグを閉じ、髪をまとめ、服のシワを軽く点検する。

 町娘の動きだ。


 昨夜のことが、少し遠く感じられる。


「……忙しそうですね」


「うん。家に帰らないと」


 さらっと言った。


「仕事あるから」


 その言葉で、コーイチは思い出す。


 そうだ。

 ミアは、いわゆる――実家暮らしだ。


 冒険者はバイト。

 家業が本業。


 昨夜、ここに泊まったことを、今さら意識する。


「泊まっちゃいましたけど……大丈夫なんですか」


 少し間があった。


 ミアは、一瞬だけ動きを止めてから、軽く笑った。


「あー、大丈夫大丈夫」


 あまりにも即答だった。


「むしろね」


 続けて言いかけて、ぴたりと止まる。


 そして、しまった、という顔をした。


「……?」


「いや、なんでもない」


 視線を逸らしながら、革袋を肩にかける。


 だが、明らかに挙動がおかしい。


「……むしろ?」


 コーイチが促すと、ミアは一度、ため息をついた。


「泊まるって、言ってきた」


「……誰に?」


「家に」


 一拍。


 コーイチは、言葉の意味を咀嚼した。


「……え?」


「だから」


 ミアは、少しだけ頬を掻く。


「今日、帰らないって言ったら」


 そこで、また止まる。


「“ちゃんと送りなさいよ”って」


 沈黙。


 次の瞬間、コーイチは吹き出していた。


「……」


「ちょっと! 笑わないでよ!」


「いえ……すみません」


 肩を震わせながら、言葉を絞り出す。


「てっきり……」


「てっきり?」


「……襲った側かと」


 ミアが、きょとんとした。


 そして、理解した瞬間、顔を赤くする。


「ちがうから!」


 即座に否定した。


「私は……」


 言いかけて、やめる。


 代わりに、ふっと笑った。


「……襲われた方、だったから」


ミアは言ってみて、さらに顔を赤くした。


「……なるほど」


 コーイチは、まだ少し笑いを残したまま頷いた。


 ミアは、最後にもう一度だけ身支度を確認する。


コーイチは立ち上がり、軽く伸びをする。


「じゃ、行ってくるね」


「はい」


 一瞬、間が空く。


 そのまま出ていくのかと思ったが、ミアは振り返った。


「今日さ」


「はい?」


「どうする?」


 それは、何気ない問いだった。

 だが、意味ははっきりしている。


「……ペア、でしたね」


「うん」


 ミアはにっと笑った。


「正式に」


 コーイチは、少しだけ考えた。

 考えるふりをした、と言った方が正しい。


「お願いします」


「よし」


 満足そうに頷く。


「じゃ、夜はギルドで落ち合おう」


 そう言って、ミアは部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 静かになる。


 この町に来てから、初めての朝。

 一人ではない朝。


 生活が、少し形を変え始めた感覚があった。


 それは冒険でも、戦闘でもない。

 だが、確実に前に進んでいる。


 コーイチは、ゆっくり立ち上がった。


挿絵(By みてみん)




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