第23.3話 揺れる布と、迷う手
第23.3話 揺れる布と、迷う手
ミアはコーイチの手を軽く握ったまま、
そのままベッドの上に体を預けた。
柔らかく沈む布の感触。
わずかに揺れた寝台が、すぐに静かになる。
「……こっち」
小さく呼ぶ声が、静かな部屋に落ちる。
コーイチはゆっくりと近づいた。
ミアは上を向いたまま、
視線だけをコーイチに向けている。
その目が、じっとこちらを見ていた。
「そんな顔しないでよ」
「どんな顔ですか」
「構えてる顔」
ミアはくすっと笑った。
からかうようでいて、
どこか照れているようにも見える。
コーイチが答えようとしたとき、
ミアの肩の布がふわりと揺れた。
体勢を変えた拍子に、
肩口がわずかにずれ、
白い肌が少しだけのぞく。
灯りの中で、その肌が静かに浮かぶ。
コーイチは一度だけ視線を外し、
それからもう一度ミアを見る。
ミアが小さく息を吐いた。
「……そんなに困る?」
「いえ、その……」
言葉を探しているうちに、
自分の声が少し低くなっていることに気づく。
「変なの」
ミアは肩の布を直そうとして、
逆に指が滑り、
もう少しだけずれてしまった。
ほんのわずかな動き。
それなのに、
コーイチには妙に大きく見える。
触れてはいない。
でも、触れたように感じる距離。
ミアはその反応を見て、
ほんの少しだけ頬を赤くした。
「コーイチって、ほんと優しいね」
「そうでしょうか」
「うん。なんか……落ち着く」
ミアはゆっくりと手を伸ばし、
コーイチの服の端をつまんだ。
強く引くわけではない。
ただ、そこに触れているだけ。
それだけで、
二人の間の空気が変わる。
コーイチはその指先を見た。
服の端をつまむ力は弱い。
本気で引けば、すぐに離れてしまいそうなほど。
それでも、
離してほしくないと思っている自分に気づく。
「ねえ」
「はい」
「もう少し……近くにいて」
コーイチはゆっくりと腰を下ろした。
ベッドがわずかに沈む。
ミアは逃げない。
むしろ、少しだけ体を寄せる。
距離が、また縮まる。
二人の影が重なり、
部屋の空気がさらに深く沈んでいく。
コーイチは言葉を探したが、
結局何も言えなかった。
ミアも何も言わない。
ただ、同じ距離のまま、
同じ夜の中にいる。
揺れる布と、
迷う手。
その小さな距離が、
やけに長く感じられた。
【あとがき】
第23.4話「静けさの中で、息を整える」以降は、年齢制限が適当と判断したため、本編とは別作品として公開いたします。
■ R15版(小説家になろう)
『異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件(R15の話)』
2026年7月30日 20時公開予定
第3章 第23.4話「静けさの中で、息を整える」
■ 18禁版
『異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件(18禁の話)』
2026年7月30日 20時公開予定
第3章 第23.4話「静けさの中で、息を整える」
本編は、このまま一般向けの内容で続きます。
次回更新予定
2026年8月20日 20時公開
第3.5章 第1話「朝(仮)」
引き続き、本編をお楽しみください。




