第3章 第23.5話 避妊魔法
第3章 第23.5話 避妊魔法
コーイチはふと動きを止めた。
さっきまでは勢いだった。
でも、急に現実が頭に浮かんだ。
(避妊……どうしよう)
準備なんてしていない。
コーイチは少しためらった。
ミアはその変化を敏感に感じ取る。
「どうしたの?」
コーイチは困ったように笑った。
「ごめん」
「え?」
「こんなふうになると思ってなくて……準備してないんです」
ミアは首をかしげる。
「準備?」
「避妊の用意です」
ミアはきょとんとした。
「えっ?」
コーイチは言葉を選びながら続ける。
「このままだと……子どもができるかもしれないし」
ミアは一瞬ぽかんとしたあと、あっさり言った。
「できないよ」
「えっ?」
今度はコーイチが固まる。
ミアは逆に不思議そうな顔をした。
「えっ?」
「いや、だから……避妊」
ミアは当たり前のように答えた。
「魔法かけてある」
コーイチは一瞬黙った。
「……魔法?」
「うん」
「魔法って……」
少し考えてから聞く。
「……おまじない?」
ミアは目を丸くした。
「おまじないで避妊できるわけないじゃない」
コーイチはさらに困惑する。
「えっ?」
ミアは笑いながら続けた。
「ちゃんとした魔法だよ」
コーイチの頭の中で、何かが引っかかった。
「避妊の……魔法?」
「うん」
ミアは当然という顔でうなずく。
「女なら普通に使うよ」
コーイチはまだ理解が追いつかない。
「そんな魔法が……あるんですか?」
ミアは首をかしげる。
「あるよ?」
そして、不思議そうにコーイチを見る。
「知らないの?」
コーイチは黙った。
ミアはそこで、ふと思った。
(あれ?)
コーイチは何でも知っている。
石鹸の作り方も。
料理のことも。
商売のことも。
びっくりするくらい物知りだ。
でも。
(時々)
(当たり前のことを知らない)
ミアは小さく笑った。
「母親が教えるの」
「……え?」
「避妊魔法」
ミアは肩をすくめた。
「女の子はみんな覚えるよ」
コーイチはしばらく黙っていた。
異世界の常識。
また一つ、自分の知らない世界があった。
「文化の違いですね……」
そうつぶやくしかなかった。
ミアはその言葉を聞いて、くすっと笑った。
「文化って、面白いね」
コーイチも苦笑するしかなかった。




