第3章 第23.1話 こういうの久しぶり
第3章 第23.1話 こういうの久しぶり
ミアはコーイチの胸に額を当てたまま、少しだけ息を吐いた。
静かだ。
さっきまで酒場のざわめきの中にいたのに、急に世界が小さくなったみたいだった。
コーイチの腕が背中にある。
思ったより、しっかりしている。
ミアは少しだけ顔を上げた。
距離が近い。
思わず笑う。
「ねえ」
「はい」
「なんか、変」
「変?」
「うん」
ミアは肩をすくめた。
「こういうの、久しぶり」
コーイチは少しだけ首をかしげる。
「そうなんですか」
「そうなの」
ミアはまたコーイチの胸に顔を寄せる。
少しだけ、くすぐったい。
「コーイチ」
「はい」
「緊張してる?」
コーイチは少し黙った。
「……してるかもしれません」
ミアが笑った。
「やっぱり」
コーイチの胸が小さく動く。
息が触れる。
ミアは少しだけ体を離した。
顔が近い。
「ねえ」
「はい」
「キス、しないの?」
コーイチが一瞬だけ目を見開く。
ミアはくすっと笑った。
「変な顔」
「いや……」
ミアは肩をすくめた。
「こういう時って、だいたいするものでしょ」
コーイチは少しだけ迷った。
それから、ゆっくり顔を近づける。
ミアは逃げない。
ただ、少しだけ目を細めた。
唇が触れる。
ほんの一瞬。
それだけだった。
ミアが少し驚いた顔をする。
「……え?」
コーイチは離れた。
「すみません」
ミアは思わず笑った。
「なにそれ」
「いや……」
「短すぎ」
ミアは肩を揺らして笑う。
それから、コーイチの胸を軽く押した。
「ほら」
コーイチが一歩下がる。
ミアがベッドの縁に腰を下ろした。
「こっち」
手を軽く振る。
コーイチは少しだけ戸惑いながら、隣に座った。
ベッドがきし、と鳴る。
ミアは足を軽く揺らした。
「ねえ」
「はい」
「さっきの」
「はい」
「もう一回」
コーイチは少しだけ息を吸う。
ミアが笑う。
「そんなに真面目な顔しなくていいのに」
それでもコーイチは、ゆっくり顔を近づけた。
今度は、ミアも少し前に出る。
唇が触れる。
今度は、少し長い。
ミアの指が、コーイチの服を軽くつまむ。
離れる。
ミアが小さく息を吐いた。
「……」
少しだけ頬が赤い。
「ねえ」
「はい」
「コーイチ」
「はい」
ミアは少し考えてから言った。
「なんかさ」
「はい」
「さっきから、優しいね」
コーイチは少し首をかしげる。
「そうですか?」
ミアは笑った。
「うん」
それから、コーイチの肩に軽く頭を乗せる。
「悪くない」
小さくつぶやいた。
窓の外で、風が鳴る。
夜はまだ静かだった。




