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異世界転生した理系男子が、地味スキルで冒険者をやっていたら、なぜか誰からも攻撃が当たらない件  作者: カトーSOS


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第3章 第22話 待ち合わせ

挿絵(By みてみん)


第3章 第22話 待ち合わせ


朝、目が覚めた瞬間に思った。


 ――服、どうしよう。


 今着ているのは、動きやすさを優先した服と、簡単な防具。

 冒険者としては問題ないが、街歩きにはどうにも落ち着かない。


 昨日の酒場での会話が、頭をよぎる。


 ちゃんとしたご飯を食べに行こう。


 その「ちゃんとした」という言葉が、妙に引っかかっていた。


 宿屋の女将に相談すると、即答だった。


「服? それならバザーだね。古着屋が何軒か出るよ。安いし、冒険者でも浮かない」


「まともな服、ありますか」


「あるある。今よりは、ね」


 その言い方が、少し気になった。


 今よりはマシ。

 つまり、今は相当ひどいということか。


 だが、他に選択肢はない。


 約束は昼からだ。

 朝のうちに済ませるには、ちょうどいい。


 バザーは、すでに人で賑わっていた。

 食べ物の匂い、呼び込みの声、布が擦れる音。


 言われた通り、古着屋はいくつかあった。

 新品ではないが、手入れはされている。


 派手なものは避けた。

 目立たない色、動きやすい形。


 鏡代わりの金属板に映る自分を見て、少しだけ考える。


「……まあ、いいか」


 防具を外し、上着を替えただけだ。

 それでも、いつもより“街の人間”に近づいた気がした。


 昼少し前、町の広場に着く。


 待ち合わせ場所だ。


 まだ、ミアはいない。


 人の行き交う中で、立ち止まる。

 噴水の音が、やけに大きく聞こえた。


 心なし、落ち着かない。


 理由は分かっている。

 分かっているから、余計に落ち着かない。


「……中学生か」


 心の中で自分に突っ込みを入れる。


 待ち合わせで緊張するなど、いつ以来だ。

 しかも、相手は冒険者仲間だ。


 そう思っているのに、口元が緩む。


 少し、ニヤけた。


 しばらくして、人の流れの向こうから、見慣れた姿が現れた。


 ――ミアだ。


 だが、いつもと違う。


 動きやすさ重視の服ではない。

 町娘の装い。

 派手ではないが、柔らかい色合いでまとめられている。


 冒険者の彼女ではなく、街に溶け込む彼女だった。


 目が合う。


 ミアは小さく手を振り、こちらへ歩いてくる。


「待った?」


「少しだけ待ちましたけど、待ってません」


「どっちだよ」


 ミアが笑う。


 その笑顔が、妙に近い。


「……その服、いいね」


「ありがとうございます」


 言われて、少し安心する。


 選択は、間違っていなかったらしい。


 ミアは一歩近づいて、じっとこちらを見る。


「緊張してる?」


「……してません」


「してる顔だよ、それ」


 からかうような声。

 だが、悪意はない。


 むしろ、楽しそうだ。


「かわいい」


 不意に言われて、思考が止まる。


「え?」


「その反応」


 ミアは、くすっと笑った。


 コーイチは、視線を逸らす。


 言い返せない。

 図星だからだ。


 しばらくして、ミアが歩き出す。


「じゃ、行こ」


「どこからですか」


「市場。軽く見てから、公園行って、それからご飯」


 自然な流れ。

 計画というより、慣れた順序だ。


「結局、歩くんですね」


「デートなんて、そんなもんでしょ」


 さらっと言われて、足が一瞬止まりかける。


 だが、何も言わずに歩調を合わせた。


 人混みの中、肩が触れそうで触れない距離。


 冒険でも、戦闘でもない。


 ただ、街を歩いているだけだ。


 それなのに――


 胸の奥が、静かに騒がしかった。

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