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【悲報】吾輩、九州産のポンコツ栗毛に転生するも、心臓がバケモノすぎてバテるという概念が存在しない  作者: 猫の造形美
九州産馬キリシマノカゼ

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馬視点2

吾輩は馬である。

名前はキリシマノカゼ。

絶賛、ニート期間中である。

いや、正確には出走登録をしても賞金不足で全部除外されるというJRAの冷酷なシステムのおかげで、図らずも長期休暇をもぎ取っている状態だ。

同級生のエリートたちが秋のG1戦線でバチバチに削り合っているなか、吾輩は霧島の爽やかな秋風に吹かれながら、毎日美味しい青草をハムハムしている。

最高だ。

お休みが多くて本当に嬉しい。

……いや、待て。

本当に嬉しいか?

ふと、前世の記憶が警鐘を鳴らす。


「競馬界において、若くて健康な馬がレースに出ずにずっと休んでいる」


このシチュエーションが意味することは、そう、リストラ。

すなわち馬肉ルートの足音が後ろから迫っているのではないかという、心臓がバクバクする恐怖である。


「じいさん、頼むから吾輩の顔を見て『美味そうだな』とか思わないでくれよ!」


と、源次郎じいさんが放牧地にやってくるたびに、吾輩は必死に「まだ走れます!心臓めちゃくちゃ元気です!」とアピールするために無駄な猛ダッシュを披露している。

じいさんは「おぉ、カゼは元気なかね」と笑っているが、目が笑っていない気がして本当に怖い。

だが、ここで吾輩は別の可能性に気がついた。

吾輩はこれでも「一般新馬戦」と「1勝クラス」を勝った、立派な2勝馬である。

しかも一応、由緒正しいスタミナ血統を引く牝馬だ。


「あれ? もしかして吾輩、もうレースを引退してお母さんになれるんじゃないか?」


競馬界において、牝馬が2勝していれば、引退して故郷の牧場で子供を産むセカンドキャリアは十分にあり得る。

毎日必死に走らなくてもいい。

ドロドロの不良馬場で泥水を飲む必要もない。

ただ牧場で のんびり暮らし、可愛い我が子を産んで育てる仕事。

悪くない。

いや、むしろ最高の玉の輿シートではないか。

しかし、そこで吾輩はハッと我に返り、重大な事実に気づいて猛烈に不安になった。

待ってほしい。

もし吾輩が繁殖牝馬になったら、結婚相手は誰になるんだ?

今の日本の生産界のトップに君臨しているのは、あの「1分7秒台」とかで走る、超高速・超キレキレの良血スピードスターたちである。

対する吾輩は、「どれだけ走っても息が上がらない代わりに、最高速度が死ぬほど遅い」という、極端な体力お化けだ。

もし、そんな超高速エリートの旦那さまと、吾輩のような泥臭い火山灰育ちの女が結婚したら、生まれてくる子供はどうなる?

『お父さんの超スピード』と『お母さんの無限スタミナ』が奇跡の融合を果たせば、それこそ世界最強馬が誕生するかもしれない。

だが、遺伝の神様が気まぐれを起こして、最悪のパターン、つまり『お父さんのスタミナ不足』と『お母さんのスピード不足』がガッチャンコしてしまったら……?

生まれてくるのは「最初から最後まで一貫して超ノロノロ走り、そのままどこまでもバテずに走り続ける、ただの燃費が良いだけの超遅い馬」である。

そんな新種の生き物が生まれたら、それこそ即座に親子揃って馬肉ステーキの鉄板の上に直行だ。


「ダメだ、繁殖に上がるのもリスクが高すぎる……!」


放牧地で一人、冷や汗を流す吾輩。

走れば賞金が足りずに除外され、休めば馬肉の影に怯え、引退を夢見れば遺伝の恐怖に戦慄する。


吾輩は馬である。

このままニート生活を満喫していていいのか、それともやっぱり必死に走って賞金を稼ぐべきなのか、栗毛の耳をパタパタさせながら、今日もJRAの理不尽な番組表を恨めしく睨みつけている。


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