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【悲報】吾輩、九州産のポンコツ栗毛に転生するも、心臓がバケモノすぎてバテるという概念が存在しない  作者: 猫の造形美
九州産馬スノードロップ

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第七話 私は老いた

私は激怒した。

必ず、かの老いという理不尽を打ち砕かねばならぬと決意した。

私は競馬を知らぬ。だが、足が痛いことだけは分かる。

「母上」

「なんだ」

私は歩いていた。ゆっくりと。本当にゆっくりと。

昔は違かった。走った。飛んだ。暴れた。柵を壊した。今は違う。歩いている。

「母上」

「なんだ」

「私は老いた」

「七歳である」

「老いた」

「七歳である」

私は激怒した。

「否定しろ!」

「事実である」

母上は冷酷だった。いつも通りだった。

私は空を見上げた。青かった。非常に青かった。

最近。人間たちの会話が変わった。

『無理はさせるな』『脚元がな』『年齢もあるし』『最後の春かな』

最後。嫌な言葉だった。

私は最後が嫌いである。終わりも嫌いである。敗北も嫌いである。ついでに除外も嫌いである。

「母上」

「なんだ」

「最後らしいぞ」

「そうか」

「もっと驚け」

「驚かん」

私は鼻を鳴らした。

「私はまだ走れる」

「そうであるな」

「まだ強い」

「そうであるな」

「勝てる」

母上は少し考えた。

「知らん」

私は激怒した。

「またそれか!」

「競馬である」

「うむ」

「分からん」

反論できなかった。最近、この理屈に弱い。

風が吹いた。白い鬣が揺れた。

私は思い出していた。

二歳。最強だった。

三歳。主人公だった。

四歳。迷走した。

五歳。覚醒した。

六歳。届かなかった。

そして七歳。私は少し疲れていた。

「母上」

「なんだ」

「怖い」

母上がこちらを見た。珍しかった。

「何がであるか」

「分からん」

私は正直に答えた。

負けることか。終わることか。走れなくなることか。よく分からなかった。ただ。少し怖かった。

母上はしばらく黙っていた。そして。

「吾輩も怖かった」

と言った。私は笑った。またそれである。母上は大体怖がっている。

第一部の読者なら知っている。……いや。吾輩は読者ではなかった。

「母上」

「なんだ」

「母上はいつも怖いな」

「そうである」

「情けない」

「そうであるな」

私は吹き出した。否定しないのである。本当に変な馬だ。

しばらく笑った後。私は言った。

「だが」

「うむ」

「母上は勝った」

「そうであるな」

「なら私も勝つ」

「知らん」

「勝つ」

「そうか」

いつもの会話だった。だが。少しだけ違った。

二歳の頃なら。私は最強だ!と言っていた。

今は違う。勝てるか分からない。それでも。勝ちたい。

その違いが。自分でも少し不思議だった。

遠くで人間たちの声が聞こえた。

『阪神大賞典三着か』『衰えたかな』『でも春天は走るだろ』『最後の挑戦だな』

最後。またその言葉だった。私は嫌だった。非常に嫌だった。

だから。私は激怒した。

必ず、かの「最後」という言葉を打ち砕かねばならぬと決意した。

私は競馬を知らぬ。だが。まだ終わっていないことだけは分かる。

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