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【悲報】吾輩、九州産のポンコツ栗毛に転生するも、心臓がバケモノすぎてバテるという概念が存在しない  作者: 猫の造形美
九州産馬スノードロップ

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第四話 私は迷走した

私は激怒した。

必ず、かの理不尽なる距離を打ち砕かねばならぬと決意した。

私は競馬を知らぬ。だが、長いことだけは分かる。

「母上」

「なんだ」

私は悩んでいた。非常に悩んでいた。

三歳が終わった。結局。三冠馬にはなれなかった。

それどころか。思っていたほど勝てなかった。

不思議である。私は強いはずだった。実際、皆もそう言う。だが勝てない。なぜだ。

「母上」

「なんだ」

「私は弱いのか」

母上は草を噛んでいた。しばらく考えてから。

「違う」

と言った。私は安心した。やはりそうであったか。

英雄の娘が弱いはずがない。ところが。

「では強いのだな」

「それも違う」

私は固まった。

「どっちだ」

「知らん」

「知らんのか」

「知らん」

母上は堂々としていた。知らないことを堂々と言う。

これは英雄の資質かもしれない。私も見習おうと思った。

「私も知らん」

「そうか」

風が吹いた。何も解決しなかった。

私は最近よく走っている。千八。二千。二二〇〇。二四〇〇。色々走っている。

だが。勝てない。

勝てそうで勝てない。強そうで強くない。速そうで速くない。非常に微妙である。

「母上」

「なんだ」

「私は何者なのだ」

「馬である」

「そういうことではない」

私は深刻だった。母上は深刻ではなかった。

「私は短距離馬ではない」

「そうであるな」

「マイラーでもない」

「そうであるな」

「中距離馬か」

「知らん」

私は地面を掻いた。

「なぜ皆分からないのだ」

「分からんからである」

それもそうだった。私は少し考えた。そして閃いた。

「母上」

「なんだ」

「私が万能だからではないか」

母上は草を食った。

「違う」

即答だった。私は激怒した。

「なぜだ!」

「万能なら勝っている」

反論できなかった。

その時。遠くで牧場の人間が話していた。

『あの子、長いところ向きじゃないか?』

『どうだろうなあ』

『スタミナはあるよな』

私は耳を動かした。長いところ。

私は競馬を知らぬ。だが。長いという言葉は好きだった。

なんとなく偉そうだからである。

「母上」

「なんだ」

「長いところとは何だ」

母上は少し黙った。そして。

「長いのである」

と言った。私は激怒した。

「説明になっていない!」

「三千とかである」

私は考えた。三千。長そうだった。非常に長そうだった。

「母上は得意だったのか」

「そうであるな」

「楽しかったか」

母上は珍しく考え込んだ。風が吹いた。草が揺れた。しばらくして。

「楽ではあった」

と言った。私は首を傾げた。楽しいではなく。楽。

「違うのか」

「違う」

「どう違う」

「息ができる」

私は意味が分からなかった。だが。母上は本気だった。

「皆苦しそうだった」

「うむ」

「吾輩は普通だった」

「うむ」

「不思議であった」

私は固まった。なんということだろう。

それは。少し格好良かった。非常に格好良かった。英雄らしかった。私は燃えた。

「母上!」

「なんだ」

「私もそうなる!」

「知らん」

「なる!」

「好きにするのである」

私は頷いた。そして決意した。

必ず、かの長いところを征服せねばならぬと。

私は競馬を知らぬ。だが。

母上が歩いた道だけは、少し気になり始めていた。

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