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【悲報】吾輩、九州産のポンコツ栗毛に転生するも、心臓がバケモノすぎてバテるという概念が存在しない  作者: 猫の造形美
九州産馬スノードロップ

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第三話 私は理解できない

私は激怒した。

必ず、かの理不尽なる敗北を打ち砕かねばならぬと決意した。

私は競馬を知らぬ。だが、負けたことだけは分かる。

「母上」

「なんだ」

私は地面を睨んだ。

気に入らなかった。実に気に入らなかった。

私は強いはずだった。

新馬戦を勝った。オープンも勝った。

皆が言っていた。

『すごい』『将来が楽しみ』『期待の白毛だ』

当然である。私は主人公なのだから。

ところが。負けた。盛大に負けた。

言い訳のしようもないほど負けた。

「理不尽である」

「負けたのである」

「理不尽だ」

「そうか」

母上は草を食っていた。いつも通りだった。

なぜそんなに平然としていられるのだろう。私は納得できなかった。

「母上」

「なんだ」

「私は主人公だぞ」

「そうであるな」

「なぜ負けた」

「知らん」

私は激怒した。

「そこは答えろ!」

「吾輩は見ておらん」

それはそうだった。母上は牧場にいる。私は競馬場にいる。物理的に無理だった。

しかし。

「だが私は強かったぞ」

「そうか」

「皆そう言っていた」

「そうか」

「なのに負けた」

「そうか」

話にならなかった。私はしばらく考えた。そして結論に至った。

「陰謀である」

「違う」

即答だった。

「なぜだ」

「大体違う」

私は不満だった。世の中には陰謀というものがある。少なくとも私はそう思う。

だが母上は現実主義者だった。夢がない。

「母上」

「なんだ」

「母上は負けたことがあるか」

母上は黙った。しばらくして。

「ある」

と言った。私は驚いた。

「あるのか」

「ある」

「天皇賞馬なのに」

「その前に負けている」

私は考えた。言われてみれば当然だった。

いきなり天皇賞を勝つ馬はいない。たぶん。知らないが。

「悔しかったか」

「悔しかった」

「どうした」

「草を食った」

私は理解できなかった。

「それで解決するのか」

「しない」

「しないのか」

「しない」

母上は断言した。そして。

「だが腹は減る」

と言った。名言のような気がした。気のせいかもしれない。

私はしばらく考えた。

敗北。挫折。苦難。試練。

主人公には付き物である。

つまり。

「これは成長イベントか」

「何の話であるか」

「主人公が強くなるやつだ」

「そうか」

母上は興味なさそうだった。だが私は確信した。

これは物語の中盤なのだ。ここで負けるのは予定調和である。むしろ順調ですらある。

「母上」

「なんだ」

「私は理解した」

「そうか」

「次は勝つ」

「知らん」

私は激怒した。

「少しは信じろ!」

「吾輩もそう思っていた」

「うむ」

「負けた」

私は黙った。反論できなかった。

母上は実績がある。実績がある相手は強い。非常に強い。

その時だった。風が吹いた。白い鬣が揺れた。

私は空を見上げた。

負けた。確かに負けた。だが。終わってはいない。

母上もそうだったのだ。

負けて。負けて。それでも走って。最後に天皇賞を勝った。

ならば。私もまだ終わっていない。

「母上」

「なんだ」

「私は三冠馬になる」

「まだ言うのであるか」

「なる」

「そうか」

「必ずだ」

母上は小さく息を吐いた。そして。

「好きにするのである」

と言った。

私は少しだけ嬉しかった。もちろん口には出さない。

主人公だからである。

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