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【悲報】吾輩、九州産のポンコツ栗毛に転生するも、心臓がバケモノすぎてバテるという概念が存在しない  作者: 猫の造形美
九州産馬スノードロップ

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第一話 私は激怒した

私は激怒した。

必ず、かの理不尽なる放牧地を改革せねばならぬと決意した。

私は競馬を知らぬ。だが、理不尽だけは分かる。

朝である。空は青い。草は青い。風は心地よい。

一見すると平和な世界である。しかし、欺瞞である。

この放牧地には重大な問題が存在する。

柵だ。

私はその巨大な柵を睨みつけた。

白く美しい私の瞳に、敵の姿が映る。

あの柵の向こうにも草がある。こちらにも草がある。なのに私は行けない。

なぜだ。

私は考えた。十分ほど考えた。そして結論に至った。

理不尽である。

「母上!」

近くで草を食べていた母上が顔を上げた。

「なんだ」

母上ことキリシマノカゼは、相変わらず落ち着いていた。

偉大なる天皇賞馬。

九州の大地より現れ、幾多の試練を乗り越え、ついには栄光を掴んだ英雄である。

私はその血を受け継ぐ者だ。

「私は決意した!」

「そうか」

「この放牧地を改革する!」

「そうか」

「反応が薄い!」

「草が美味いのである」

母上は再び草を食べ始めた。

私は驚愕した。英雄とはもっとこう、情熱的な存在ではないのか。

「母上!」

「なんだ」

「この柵をどう思う!」

「柵である」

「その通りだ!」

私は勢いよく頷いた。

「ならば問題だとは思わないのか!」

「思わん」

「なぜだ!」

「柵だからである」

意味が分からない。私は激怒した。

必ず、かの固定観念を打ち破らねばならぬと決意した。

私は哲学を知らぬ。だが、母上が間違っていることだけは分かる。

「母上は昔、数々の困難に立ち向かったと聞く!」

「聞いたのであるか」

「立ち向かったのだろう!」

「嫌であった」

「えっ」

「できれば立ち向かいたくなかった」

「えっ」

「向向から来たのである」

私は困惑した。英雄譚と違う。

「だが勝ったではないか!」

「結果的には」

「ならば今こそ戦う時だ!」

「何と」

母上は面倒そうにこちらを見た。

「柵とであるか」

「そうだ!」

「やめろ」

「なぜ!」

「弁償である」

私は言葉を失った。

なるほど。さすが英雄。視点が違う。

私はまだそこまで考えていなかった。

しかし。それでも。

志ある者は進まねばならぬ。

私は激怒した。

必ず、この閉塞した世界を変えねばならぬと決意した。

私は法律を知らぬ。だが、自由だけは分かる。

私は柵へ向かった。

「やめろ」

母上の声が聞こえる。

だが、偉業を成す者は常に反対されるものだ。歴史が証明している。

私は歴史を知らぬ。だが、たぶんそうだ。

「はあああああああ!」

私は走った。

白い身体が風を切る。大地が揺れる。

私は走る。走る。走る。

そして。

ドゴン。

私は転んだ。

柵は無事だった。痛かった。とても痛かった。

私はしばらく動けなかった。

母上が近づいてきた。

「言ったのである」

「……」

「やめろと」

「……」

「聞かなかった」

「……」

私は立ち上がった。

足は無事だった。誇りは無事ではなかった。

「母上」

「なんだ」

「柵は強い」

「そうであるな」

私は柵を見た。敵ながら見事だった。

今日のところは認めよう。

だが。戦いは終わっていない。

私は激怒した。

必ず、いつの日かあの柵を打ち破らねばならぬと決意した。

私は土木工学を知らぬ。だが、いつか勝てることだけは分かる。

「勝てんのである」

母上が言った。

「なぜだ!」

「お前が馬だからである」

「私は運命に選ばれた!」

「柵も頑丈に作られている」

「母上は夢がない!」

「現実がある」

風が吹いた。草が揺れた。

母上はまた草を食べ始めた。

私は柵を睨み続けた。

遠くの丘の向こうに、まだ見ぬ世界がある。

きっとそこには新たな冒険がある。新たな試練がある。新たな運命がある。

私はその全てを乗り越えるだろう。

なぜなら。

私は主人公だからである。

「母上!」

「なんだ」

「私は世界を変える!」

母上は少しだけ沈黙した。そして言った。

「まず草を食え」

私は激怒した。

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