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俺はJKを助けたいのか、それとも助けられたいのか  作者: 酉 真菜
第2章:人類のため働きつづける世界
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第27話:お話会!(もちろん対面じゃありません)

 一方そのころ、みこたちの緊張感とは裏腹に、俺とジックを含む4人は昔話に花を咲かせていた。チャッ子たちが外で調査を始めたその時、俺たちはジョージの話を聞いていた。


「……そうそう、だからさ、その壊れちゃったロボット店員の代わりに、俺が働くことになってさ。でも、レストラン店員って全員ロボットなわけじゃん。だから、俺一人生身の人間なんだけど、ロボットにかなうわけなくて……」


「たしかに、たしかに」


「そのレストランの常連とはいえ、ウェイターとかやったことないから、顔なじみのお客さんに次はあっち、次はこっちって指示出してもらっていたってわけよ」


「店長からの指示とかなかったの?」


「いや、あったけど、全部端末に送られてくるし、無味乾燥な指示だからわかりづらいの、ほんと!明らかに店の回転率も悪くなっていたから、完全に邪魔になっていたなあ……」


 俺からすると、ジョージの時代には、全員ロボットの店員っていうのが当たり前なのが意外すぎる。あんまり想像がつかないなあ……。


「ジックは何か昔あった変な事件とかないの?」


 とジョージが聞いてみた。


「こんな老いぼれに聞いたって面白い話なんぞ、覚えておらんわい。そういえば、エマの妹の話をカムに聞かせてやったらどうだ?」


「リンダの話って、リンダの小学校の話ってこと?」


「そうそう、小学校の話だよ」


「リンダの小学校で変な動画が流行っていたことがあってね」


「変な動画?」


 エマは、リンダの話を始めた。


 ********************************************

 リンダは小学校に着くと、クラスのみんながスマホで何か見ているようだった。


「おはよう。マイクとルーク、何をそんなに夢中になって見ているの?」


 すると、教室の奥から少年がリンダの方へ駆けてきた。


「おはよう! 俺、勉強やめることにした! だからリンダ、将来俺のことを養ってくれ!」


「嫌で~す」


 マイクとルークが動画を止めて、リンダに気がつく。


「あっ、リンダおはよう。この動画知らないの?最近クラス中に流行っているのだけれど」


「僕は3日前ぐらいに見つけたんだけど、ルークなんか暇があったらずっと見ているような様だぞ」


「そこまでじゃないよ」


 さっき駆けてきた少年は少し飛び跳ねながら、


「隣のクラスでも、隣の隣のクラスでもみんな見ているよ!」


「ビリー、そんなにいろいろ見てきたのか」


 リンダはみんなが見ているという動画に興味を持ち始めた。


「私にも見せてくれない?」


 そういうと、ルークが持っているスマホでその動画を見せてもらった。

 動画の中では、パイプオルガンの前にパーティーメガネをかけた男性が座っていた。

 メガネのレンズには色がついていて、目の表情が読み取れない。

 男性はオルガンで短いフレーズを引きながら、カメラの方を変な笑みを浮かべながらずっと見ている。ただそれだけの動画だった。


「え、何このシュールな動画……」


 リンダはちょっと引き気味に言った。マイクが答える。


「いや、このどこかで聞いたことあるフレーズがなんかハマるんだよね」


 さらにルークが付け加える。


「オルガンで鍵盤を見ずに、カメラにニチャアという顔を向けているのにもなんかシュールさを感じるんだよ。ハマるわ……」


 リンダはやはり少し引きながら、軽くうなずいた。ビリーの視線を感じて振り向くと、ビリーがノートの切れ端を目に当てながら、同じ笑みを浮かべてみている。

 リンダはルークとマイクの方を向くと、ビリーの方を見ながら、二人はうんうんとうなづいていた。


 リンダは一限が音楽の時間だったため、3人と一緒に音楽室に移動した。

 始業のベルが鳴る。

 先生が入ってくると、早速授業が開始した。


「おはようございます、皆さん。今日はこの曲から始めましょう」


 先生はピアノの前に座る。するとさっきの動画に出てきたパーティーメガネを付けた。

 リンダ以外のほかの生徒もカバンからそのメガネを取り出し立ち上がった。

 リンダも立ち上がる。

 ビリーだけなぜか青と赤の3Dメガネをかけている。


 先生がピアノを弾き始めた。さっきの短いフレーズだ。

 すると、生徒たちは歌いも踊りもせずに、ただあのニチャアとした笑みを浮かべ始めた。

 リンダは眼鏡もなく、ただ戸惑ったが、とりあえず、同じくニチャアとする笑みを浮かべてみた。


 ********************************************

 これまでのエマの話に耳を傾けていた俺は思わず話を遮った。


「え?怖っ……それでなんか呪われたとか?」


「いや、授業で扱ったのもその時一回だけらしいよ」


 すると、今度はボブが反応した。


「いや、前にもエマの妹の話聞いたけど、やっぱりなんかハマるよね。なんか同じ笑みを浮かべたくなる」


 ボブの顔を直接見ることはできていないが、見なくてもリンダの見たその笑みを浮かべているような気がした。

 そう考えると、何か背筋にゾクゾクッと感じるものがあった。

 俺は自分の顔に笑みが移る前に、話を変えた。


「そういえば、ビリーの扱いひどくない?特にリンダ……」


「あ~、なんかリンダにゾッコンの男の子らしいんだけど、リンダはほとんど気にしていないらしいんだよね」


 なんか俺はビリーに同情した。もう少し、アプローチの仕方を変えれば……。

 エマはこの後もリンダの話を続けてくれた。その話は興味深いときもあれば、面白いときもあり、また気味が悪いときもあった。

 俺は話にのめりこみ、部屋の外ではチャッ子と一誠が動き回っていることを知る由もないのだった。


 ********************************************


(これは、もうそろそろか……)


 所長からの確認メッセージに気がついた私は内容を見ずとも中身をだいたい想像することができた。

 そこに羅列されている名前を確認する。


(これで次の船も出せるな……)


 私は確認メッセージがもう一つあることに気がついた。

 私の助言に対して、いちいち確認しなくてもよいというのに……。

 所長さんはかなり用心深いらしい、いや用心深くできているというべきだろうか。


(これで、やっとあいつを……)


 ********************************************


極秘調査報告書 25

ミスリムでの看守ロボット

 看守ロボットはラッセル所長とともに中央AI:Russelで管理・駆動されている。Russelはラッセル所長の未来予測、収容所運営、命令系統を演算しているため、看守ロボット等の演算に多くのリソースを割くことができない。そのため、3時間おきに看守ロボットから情報を吸い上げ、そこから最適な実行プログラムを割り出す。看守ロボットは3時間おきにプログラムがアップデートされ、そのプログラムを元に収容所の監視・末端運営を行っている。

(ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所所蔵)

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