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俺はJKを助けたいのか、それとも助けられたいのか  作者: 酉 真菜
第2章:人類のため働きつづける世界
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第19話:人心混乱

 到着したのだろうか。そこは元の船内だった。

 視界がグルグルする。吐こうにも吐けないつらさが俺を襲った。

 元気になるまで気を失わせてほしい気分だ。


 しばらくすると視界が安定してきた。

 真菜たち3人もいつの間にか、目が覚め同じような苦しみを味わっているようだった。

 まだ起き上がる気分になれない。


 周りのロボットたちはいつの間にか動き出しているようだった。

 ドアが開く。その先はよく見えないが明るい光がさしているようだった。

 ロボットが2、3人下りると、代わりに担架が入ってくる。

 担架を押す人もロボットもいないようだった。どうやら担架も全自動らしい。

 担架は俺に近づいてくると、あっという間にひとりでに俺を担架の上にのせてしまった。

 横を見ると、3人も担架に乗せられていた。

 ドアから順に俺たちは船外へ運び出された。


 担架は頭を先にして進んでいく。自分がどこに連れていかれるのか、どんな状況なのか不安に感じる。

 ドアのすぐ外にはシロ氏が立っていた。俺は手も足も動かなかったが、何とか目配せをしようとする。しかし、シロ氏は俺と目が合うとすぐにどこかへ行ってしまった。

 船から離れると、白い四角い通路を通り抜けていく。

 俺の右横には、真菜が並走し、その後にみこと英利羽が続く。


 この通路は意外と短く、すぐに天井が高い建物の中に入った。

 今通っているここは部屋だろうかそれとも幅の広い廊下だろうか。

 左側の真っ白い壁には等間隔に四角い線が入っている。取っ手はないが、扉のように見える。

 それに対して、右側は何もないただのだだっ広い壁だった。

 真菜の顔が見える。真菜の目には光がない。

 何か変なものを嗅がされたのではないだろうか。それとも……


 かなりこの廊下を走った後、担架は右に曲がる。

 俺の担架だけは曲がる角度が緩く、3人と離れてしまっている。

 するといきなり、俺の担架が止まった。

 3人を乗せた担架はどんどん先に行ってしまう。


 ――――――真菜ああ!


 俺は必死に叫ぶ。しかし、俺の口は全くいうことを聞いてくれなかった。

 なぜか口は思うように動かず、声も全く出ない。

 俺と3人の担架はそのまま静かに分かれていったのだった。


 俺の頭の方で自動ドアのようなものが開いた音がした。

 担架が動き始める。俺だけどこかに連れていかれるのだろうか。

 担架は少し動くと止まる。するとドアが閉まり、体に上昇しているような感覚が襲う。

 これはエレベーターか。

 このエレベーターには、鏡も窓もないただの白い箱だった。

 階のボタンはあるが、今何階なのかわからない。

 ああ、このまま俺に拷問でもされるのだろうか。


『また恩を仇で返しているのがわからないの?』


 ああ、その通りだ。俺は今まで好き勝手やってきたんだ。その報いを受けているんだ。

 俺はどうなってもいい。どうかあの3人だけは……3人だけは何の苦しみもなく、開放してやってくれ。どうか、どうか……神様……。


 エレベーターの動きが止まる。

 足の方にあるドアが開くと、担架が動き出す。

 目の前には、ガラス張りの部屋がたくさん見えた。

 その中には人が入っていた。服装もまちまちだ。

 いつも見かけるような服を着ている人もいれば、異世界から抜け出してきたような服装の人、毛皮のようなものを羽織っている人、どんな構造をしているかわからない服を着た人まで多種多様な人がいた。

 どこまで、この部屋は続いているのだろう。ここからよく見えるだけで、5階ぐらい上までびっしりと部屋が配置されている。

 担架はすぐに頭の方向に進行方向を変えてしまったため、それ以上のことはよく見えなかった。


 担架はどうやら部屋の前の廊下を走っているらしい。

 右側には柵、左側には同じようなガラス張りの部屋があった。

 部屋の中の人たちに関しては、中には興味を示す人もいたが、大半の人たちはうつろな目でただ部屋の片隅に座っているだけだった。


 多くの部屋の前を通り過ぎたところで、担架がいきなり止まる。

 すると左に曲がって、担架は俺を下した。

 どうやらここはガラス張りの部屋の一つらしい。


 俺を下した担架はすぐに動き出すとどこかへ行ってしまった。

 俺は、すぐ立ち上がるって廊下へ出ようとする。

 しかし、そこにはガラス窓があるようだった。

 担架はどこから抜けたのだろうか。この窓が閉まった瞬間はなかったはず。

 担架はまるでガラスがなかったかのように抜けていったということだ。

 俺はガラスをくまなく調べてみたが、アリが通れそうな穴さえも一つも見つからなかった。


 とりあえず、俺は部屋の端に座った。座り込むと途端に不安がこみ上げてくる。

 ああ、どうしよう。3人と離れてしまった。

 3人はどうしているだろうか。ああ、この先どうなるのだろうか。

 ここから出られる見込みはあるのだろうか。

 そもそもなんでこんなところに閉じ込められてしまったのだろうか。

 衛星タイタンだなんて言っていたが、本当にそうだったらここを自力で抜け出すなんて無茶だ。

 それに、32世紀なんて未来に来てしまったとしたら、もう俺に何ができようか。

 たとえ俺が乗ってきた船が亜光速飛行できるために未来へタイムトラベルできるのだとして、俺がその船を奪ったとしても、どうやって過去に行けばよいのだろうか。

 未来への片道切符なら、俺らにもう居場所などない。

 ここで朽ちていくことしかできないのだろうか。

 座ってなどいられない。何か考えなければ。


 ああ、分からない、分からない。

 つまり、光速なんだから、32世紀の未来で、ここはタイタン。

 たくさんの捕虜っぽい人がいて、ここはガラスで、担架が通り抜けて……


 分からない。分からない。ああどうしよ、ああ分からない。

 どうしたらいいんだ。大丈夫、できる。俺ならできる。

 でも3人はどこにいるかわからない。ああどうしよ。本当にどうしよう。

 もう最悪だ。ああもう最悪……。


 俺はいつの間にか部屋の中をぐるぐると回っていた。

 俺の回転速度は少しずつ上がっていく。

 俺の速度に合わせて、頭の回転も速くなった気がした。

 しかし、何も出てこない。

 出てくるのはただ不安要素だけで、ごちゃごちゃと俺を混乱させるだけだった。

 肩が壁にぶつかる。ガラスにぶつかる。

 痛い、でもわからない。よくわからない。ああどうしよ、どうしよ。


 その時、部屋の奥で何か音がしたのだった。


極秘調査報告書 19

カルロス事件

 転送ゲート実験4-file058において、初めて生身の人間がこのゲートを使用した。当時の被験者カルロス・ガソルは、仲間の研究者にゲートの設定を頼み、タイタン用宇宙服を着用して、ゲートを潜り抜けた。結果時座標のズレ0の地球に無事に到着を果たした。これを機に様々な被験者が研究に参加することとなる。転送ゲート実験5-file002において、カルロス・ガソル率いる計200人の被験者が新たな宇宙服の実験のためにゲートをくぐった。すると、185名は無事に1か月後の地球にたどり着くも、1名は同時刻の地球で、5名はタイタンで、7名は2週間後の地球で青い液体となって見つかる。2名は現在も行方不明である。

現在、特殊な素材でできた船体を使用することで、その内部の生命を輸送することに成功している。

(ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所所蔵)

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