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俺はJKを助けたいのか、それとも助けられたいのか  作者: 酉 真菜
第1章:世界と世界の交錯の始まり
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第11話:きづくよアッチェレランド

「すいません、遅くなって……」


「えっ」


 真菜は思わず声が出てしまう。この男と誠司の会話を盗み聞きしようとしていたのがばれたのだろう。

 この警備員を呼んだのもこの男に違いない。


「彼女らは私の客人です。前の商談が長引いてしまって、ずいぶんと待たせてしまいました」


 客人とは誰であろうか。もしかしたら、真菜たちのことを見に来たのではなく、別の仕事の件で戻ってきたのかもしれない。

 真菜は心の中で、この男が自分たちに用はなく、早くどこか行くことを願う。

 しかし、そんな願いも届かず、その男は警備員の前に入り、どう見ても真菜たち3人に話しかけているようにしか見えなかった。


「しかし、こんな高校生に何が……」


 警備員は、3人を不審に思っているらしい。


「最近なら、小学生でも専門家としてここに来ることもありますよ。私の客人に失礼では?」


「それもそうですね。失礼しました」


 警備員は去っていく。

 どうやら、男は3人を助けてくれたらしい。

 何が狙いだろうか……と英利羽は疑う。

 男は、3人の顔を眺めた。

 真菜は、英利羽とみこの方へ座席を移る。男は会釈をすると、真菜が座っていた方の座席に座った。


「君たちは、松本……湊誠司の知り合いですか?ずっと前からこっちを見ていたようでしたから」


「はい……」


「そうですか。一応、君たちが彼のどんな人か教えてくれないでしょうか?」


 3人は顔を見合わせる。

 この人なら信用できるかもしれない。真菜はそう思い、これまでのことを話そうとした。

 しかし、その前に英利羽が話し始める。


「実は……わたしたち、湊脳神経外科で幼い頃知り合ったんです。親があの病院に通っていて、幼かったわたしたちはよく待合室で3人一緒に遊んでいました。誠司にもいろいろ遊んでもらって、親のように面倒を見てもらったんです」


「そんな子たちがいたなんてなあ……。それで、なんで東京にいるのですか?」


「今は東京の高校の寮にいるんです。誠司を見て、ついつい、ついてきてしまったわけです。すいません……」


「いろいろしているんだなあ、あいつも」


 その男は、なにか昔を懐かしむような顔をする。誠司とはどういう関係なのだろうか……。


「誠司とは……」


 と英利羽が聞いてみる。


「ああ、私の自己紹介がまだでしたね。私は竿田敦と申します。松本とは、高校の同期です。」


「松本?」


「彼の旧姓が松本なんですよ。母方の親戚から病院を引き継ぐときに、母親の旧姓の湊に変わったって聞いています。まあ、私は今でも松本と呼んでしまいますが」


「知らなかった……」


 真菜からすれば、初耳の情報だ。たしかに、誠司の過去について知っていることは少ない。

 英利羽がいうように、誠司の話を疑ってかかれば、ほとんど知らないようなものだ。


「私は山吹真菜です。この子が九十九里みこで、こっちが芳乃牧英利羽よ。」


「はじめまして」


 みこも英利羽も竿田に軽くおじぎをする。

 英利羽は少し身を乗り出すと、


「そういえば、誠司と何を話していたんですか?」


「ああ、聞いていないようですね。実は、今度新しくできた、MR. Yushima Amusement Parkの招待券がありまして、それを渡したところなのですよ」


 MR……ユシマ アミューズメントパーク?英利羽はどこかで見たような気がした。

 そう、図書館の新聞に大きく掲げられていたのだ。


「たしか、新聞で読みました。3か月前にオープンしたとか……」


「そう、知っていましたか。私はこの会社で、MRユシマの担当なんです。なので、私も何枚か招待券を持っているってわけです。まだβ版ですが、開発中のシステムが搭載されたARグラスを松本に体験してもらって、感想や意見をもらおうと思っています。たしか4台貸し出したので、もしかしたら……」


「わたしたちの分だ!」


「きっと明日、体験できると思いますよ。楽しみにしていてください」


 3人は急に知らされた明日のイベントに胸が躍った。

 特にみこは最新のデバイスが使えると聞いて、竿田でもわかるぐらい目を輝かせていた。

 竿田は3人の様子を見て、満足そうだ。


「喜んでくれているようで、私たちも開発した甲斐があります」


 そこで、真菜はみこの持っているARグラスを思い出した。あのARグラスのようなものなのだろうか……。


「そのユシマで体験するAR?ってどんなものなんですか?」


「あっ、知らなかったんですか、すいません。体験できることは、ARというより複合現実、MRです。私たちのテーマパークのコンセプトは、普段コンタクトを取れない相手とも気軽に会話できるということです。」


「普段コンタクトを取れない相手?」


「たとえば、歴史上の人物や著名人、アニメキャラクターなどです。」


「すごい!じゃあ、たとえば……織田信長とも会話できるってこと?でもどうやって……」


 みこはさらに目を輝かして、竿田へ身を乗り出す。


「あの世界初のGAI、エウダイモニアが、公開されている情報すべてを使って、再現している、というのが正確な表現でしょう。ただ、MRユシマでの人物、もちろん織田信長はかなりの文献が存在するため、ほとんど本人と考えても差し支えないレベルです」


「エウダイモニア……?GAI……?」


みこはよくわかってないようだ。竿田は続ける。


「ただ、松本にはアニメキャラクターの招待券を渡したので、今回は織田信長とは話せませんが……」


「そうなんだ……。でもすごいわ!」


 みこからすると、仕組みのところはいまいちよくわからないものの、とにかくちゃんと会話ができるというのだ。やっとみこが想像していたような未来を体験できるに違いない。


「みこは神巫女物語にはまっているんですが、妹の乃々もいますか?」


「いますよ」


 竿田は、持っていたカバンの中からタブレットを取り出す。

 少し操作したと思うと、3人の方に画面を向けた。


「これが松本の使うARグラスで体験できるアニメのリストです。実は、私あまりアニメに詳しくないので、神巫女物語のような有名なものではないとわからないのですが……」


 みこは夢中になって、画面をスクロールしていた。

『神巫女物語』、『鈴木話』、『おっちゃんは魔法使い』の字が見える。3人が一緒に中央の部屋で見たアニメだ。

 そのほかにも、『高校生が地球侵略を試みるようです。そして、地球側も負けません。』や『でぃべ~と!』、『TrueDrydays』、『彼女たちは今日も京都でぶらぶらします。』などかなりの作品数が登録されているようだった。

 竿田は続ける。


「今後拡大していこうと思っていますが、現在の設備では、一台のARグラスで最大5作品までが限界です。今回のβ版では、7作品までご利用いただけます」


「どうしよっかなぁ」


 みこは、タブレットに表示されているリストをスクロールして、もう7作品選んでいるようだ。

 そんな様子のみこを横目に、英利羽は誠司についての話に切り替える。


「誠司って、高校時代どんな感じだったんですか?」


「そうだね……いいやつですよ、少し変わっていたけど。私たちは蛍雪高校に通っていて、多くの生徒は蛍雪大学に進学します。私は経営学部志望でしたが、松本とその周りの友人たちはみんな医学部志望でした。しかし、彼は大学への進学試験で医学部に必要な点数が取れなかったようでした。そういう人たちの多くは、別の学部に進学するか、この近くの医学部へ進学します。しかし、彼は一浪してわざわざ関西の大学へ進学したと聞いています」


「そうだったんですか……」


「高校時代は、アニメが好きなやつぐらいしか思っていませんでした。高校卒業して数年後、偶然町中でばったり会ったんです。それから、よく話すようになり今ではかなりメールでやり取りしていますよ」


「じゃあ、大人になってから親しくなったって感じですね」


「そういうことになりますね。たまに電話するときも結構おもしろい話をしてくれて、もっと高校時代に仲良くしたかったなと思っていますね」


 竿田の表情を見てみると、誠司との電話が竿田にとって楽しい時間であることがよく伝わってきた。

 友達いなそうな風貌しているが、意外と交友関係は広いのかもしれない。

 真菜は英利羽と話している竿田の外見をよく観察してみた。


 真菜のよく知る誠司は、洗濯をしすぎたようなよれよれの服を着ているイメージだ。

 病院がある日は、そこそこちゃんとした服でエレベーターに乗るのを見るが、休日となると一日中ぼさぼさの頭でコンタクトを入れずに歩き回っている。

 それに比べて、目の前にいる竿田は誠司と同級生に見えない。

 おしゃれなスーツを着こなし、おそらくかなり高価な靴とカバンが体の一部のようになじんでいる。

 サラサラの髪で、どこか表情も若々しい。これが一流のサラリーマンというやつだろうか。


「えっと、誠司って何歳なんですか?」


 ついつい、真菜は竿田に聞いてみたくなってしまった。


「37歳だと思いますよ、誕生日を超えていると思うので……。私たち2000年生まれなんです」


 真菜は少し驚いた。誠司はてっきり40代後半だと思っていた。

 一方、英利羽はじっと考え込んでいる様子だった。すると、


「ということは、高校卒業は2018年……2018年度ですか?」


「そうだね」


「高3のとき、どうでした?」


「そうですね、高3で志望学部ごとに分かれて授業受けていたので、あんまり見かけなかったですね。進学試験ぐらいでしたね、大変だったのは……」


「2018年、他には……」


「そうだね……特にないかな」


 英利羽が誠司の高3の時の話を聞いているのは、来年は受験だからだろうか。

 その『来年』はいつ来るのかわからないが……。

 英利羽の方を見てみると、竿田を凝視して固まっているようだった。

 なにか有益な情報が得られたのだろうか。


 さらに数十分3人は竿田と話し続けた後、3人は竿田に別れを告げ、誠司の家へと向かうのだった。


極秘調査報告書 11

竿田敦

 MR.Yushima Amusement Parkの運営担当。蛍雪高校出身で、湊誠司の同級生である。蛍雪大学経営学部卒業後、株式会社MR Parkに就職。34歳になるとMR.Yushima Amusement Parkのプロジェクトチーフを任される。日本の民間会社で初となる、GAI エウダイモニアの設置に貢献した人物の一人。

(ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所所蔵)

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