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俺はJKを助けたいのか、それとも助けられたいのか  作者: 酉 真菜
第1章:世界と世界の交錯の始まり
10/40

第10話:真菜のスキルだけじゃ解決できない問題もある

(『凍える海』か……。)


 英利羽は新着図書に書かれた、司書のコメントを読んでいた。

 誰かが、階段から下りてくる音がする。

 振り返ると、真菜とみこが話しながら下ってきていた。


(そういえば、わたし1階しか見ていない……。)


 英利羽はフロア案内を探そうと見渡した。

 栗色でふわっとした髪をした少女と、黒髪でポニーテールの少女が目に移りこむ。

 階段の方向ではない。展示コーナーだ。

 英利羽は展示コーナーにある一つの雑誌に視線が止まる。

 そこには、長髪の金色の髪をした少女と群青色の髪をしたショートヘアの少女。そして、その二人の横に英利羽のよく見知った2つの顔が描かれていた。

 4人は仲良さそうに集まっているイラストが、雑誌の表紙に描かれていた。

 栗色の少女も黒髪の少女もエメラルドのような透き通った目の色をしている。


 ――――――ちょっと……


 栗色の少女の肌が白く美しい。一方、黒髪の少女の肌はやわらかそうで触ってみたい。


 ――――――ねぇ、ねえってば、英利羽!


 英利羽は我に返った。そこは、副都心線の車内だった。

 目の前には、さっきまで思い浮かべていた黒髪の少女がいる。

 その後ろには、ドアにもたれかかった栗毛の少女がこっちを見ていた。


「ごめん、ごめん。少し考え事していただけだから……」


「だから、話を続けるけどね。みこの家はこの先の鬼子母神ってところなのよ。地図で見ると、おそらく雑司ヶ谷駅が一番近いと思われるんだよね。だから……」


 黒髪の少女は話し続ける。たしかに、あの雑誌の表紙に描かれていた二人はみこと真菜に似ていた。しかし、あのイラストに似ている人はたくさんいるはずだ。

 それに、ちらっとしか見ていない。見間違いの可能性もある。


「英利羽、どう思う?」


「いいんじゃない?みこがよく知っているのだから」


 このまま、考え続けるのも時間の無駄である。

 ちょっとイラストが似ていたというだけでは何の手掛かりにもならない。


 3人は雑司ヶ谷で降りると、みこの家付近を散策してみることにした。

 20年も未来であるせいか、真菜の時のように街並みが変わっていた。

 しかし、道路などの区画は変わっている様子はない。

 周辺を歩き回っているうちに、3人は池袋駅に着いた。


「次、どこ行く?」


「真菜とか、みことかほかに見ておきたい場所はない?」


 3人は、路線図の前にいた。その横を多くの人が通過し、ホームへと降りていった。

 英利羽は2人が券売機の前にいることに気が付き、少し離れた場所に移動する。

 すると、みこが少し大きな声を上げる


「秋葉原!」


「なんで?」


「みこ、よくアキバには通ったりしていたんだよね。もしかしたら、何かわかるかも」


「単純に自分が行きたいだけじゃないの……」


 真菜は特に行きたい場所がないようなので、秋葉原に行くことになった。

 3人は山手線に乗り込んだ。

 次の駅のアナウンスが流れる。西日暮里らしい。

 なにやら真菜は自分のスマホをじっと見ていた。

 真菜は少し難しそうな顔をして、そのままスマホを操作している。

 英利羽の方へ真菜は近づくとスマホの画面を見せた。


「この点って私たちのいる場所でしょ?」


 真菜のスマホには、地図が表示され、3点の動く青い点が表示されていた。


「この場所からして、そうでしょうね……」


「でも、ここにある赤い点は何だと思う?私はたぶん誠司だと思うのよ」


「つまり、誠司が……御徒町にいるってこと?」


「そうだと思う。今はちょうど日暮里に向かっているじゃない?みこには悪いけど、私は誠司の後をつけてみたいんだけど……」


「つまり、御徒町で降りるってこと?」


「そう」


 2人はみこの顔を見ると、英利羽が話した。


「真菜が気付いたんだけど、誠司が今近くにいるらしいのよ。だから、秋葉原じゃなくて御徒町で降りるのはどうかなって思うんだけど、みこはどう思う?」


「うーん……。実際、未来のアキバがどうなっているか気になるけど、みこは大丈夫だよ」


 みこが賛成したことにより、3人の行き先は御徒町駅になった。

 御徒町駅で降りると、真菜は地図を確認した。

 近くに赤い点が表示されている。

 真菜は拡大しようとすると、誤って赤い点に触れてしまった。

 すると、『ここまで行く』と表示された。それをタップしてみる。

『付属のARグラスを使用してください』という通知が出てくる。

 真菜は英利羽にその画面を見せた。


「どうやら、誠司の位置まであのARグラスを使うと案内してくれるらしいわ」


「わたしは持っていないけど……みこ、持ってきている?」


「たしか、入れたはず……」


 みこは、カバンの中をあさる。カバンの奥まで手を突っ込んだかと思うと、ARグラスを取り出した。


「これ?」


「そうそう」


 そういうと、真菜はそのARグラスをみこからもらい起動してみる。

 画面にARグラスの名前らしいものが表示されている。おそらくこれだろう。

 タップをすると、真菜の視界の中に、大きな青い矢印が表示された。

 みこと英利羽は、真菜の顔をじっと見ている。

 真菜は表示された矢印の方向を指さしながら、


「こっちよ。私についてきて」


 みこと英利羽は真菜の後ろからついてきた。

 青い矢印は歩道の上に表示されている。その先の交差点に右向きの赤色の矢印が表示されていた。

 どうやら、青い矢印は進行方向を示し、赤い矢印が次の曲がり角を表示しているらしい。

 曲がり角付近になると、ARグラスから音声が鳴る。

 真菜とみこ、英利羽はARグラスの指示に従い、誠司のもとまで向かった。

 ARグラスは、大きなビルの近くまで案内する。

 そのビルの1階ロビーはガラス張りになっていて、端の方に観葉植物で区切られたスペースが何個か見えた。

 ロビーには様々な人がたくさん歩いているため、よくは見えないがそのスペースでなにやら話し合っている人たちがいる。

 サーモグラフィで見ているかのように、ARグラスはその一角にはっきりと赤い人影を映した。

 おそらくそれが誠司であろう。


 3人は、ロビーの中へ入っていった。真菜はARグラスをみこに渡し、誠司のいるスペースの近くまで行こうとする。

 すると、英利羽は真菜の肩をつかんだ。


「誠司にわたしたちのことを知られない方がいいと思うわ。あっちの開いているスペースに座るのがいいと思う」


 3人はその開いているスペースに入る。

 誠司のスペースと3人の入ったスペースの間には、別の人たちが使っているスペースが入っていた。

 ただ、スペースの周りには観葉植物が置かれているため、周りからは見えにくくなっている。

 3人は、耳をそばだてた。しかし誠司と話している人の顔は見えないし、話も聞こえなかった。聞こえるのは、何かの商談なのか隣で話している3人組の会話だけだった。

 3人は、気付かれないように、植物の間から覗き込もうとする。

 しかし、見えるのは隣のスペースにいるおじさんの顔ぐらいだった。

 みこはARグラスをかけ、誠司の様子を見ている。

 すると、


「立った!移動するみたい……」


 みこが小さな声で言うと、入口の方へ誠司とスーツ姿の男が歩いていった。

 どうやら、3人には気が付いていないらしい。

 入口の自動ドアが開く。誠司は手を挙げてじゃあとばかりにその男と別れた。

 誠司の様子がよく見えない……。


 突然、真菜の肩を誰かが軽くたたく。振り返ってみると、そこには警備服の男がいた。

 真菜はみこと英利羽のほうに向くが、2人も真菜の方を見るばかり。

 どうやら関係者でないことがばれてしまったらしい。

 真菜は隣のスペースの会話を思い出す。とにかくもっともらしい言い訳を考えつかなければ……。


「すいません、遅くなって……」


 警備員の後ろから、男の声がした。

 警備員は後ろを振り向く。

 そこには、さっき誠司と別れたスーツ姿の男が立っていた。

極秘調査報告書 10

エウダイモニア

 世界初の汎用型AI。2031年にトーマス・デ・ロッシュ博士によってドイツで開発された。トーマス博士は、ヒトのニューロンを完全に再現できるコンピューターモデルを開発後、自分の脳を解析し、コピーすることに成功した。彼は、世界に幸福をもたらしてほしいという願いから、そのAIにエウダイモニアという名前を付ける。従来のAIとは異なり、ヒトの思考や問題解決法と同様で、知識量と処理速度を飛躍的に向上させただけであるともいえる。そのため、導き出された結果に対して、人間にも理解可能な説明をすることができる。2040年代には、エウダイモニアにも意識があるのではないかという研究が物議をかもした。

(ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所所蔵)

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