表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/53

第43話 初めてのダンジョン その⑧大舌戦開幕!?魔人アスモVS「暴食の王」ベルゼブブ 

風邪インフルエンザにより5日休んだら5日分+現状の仕事が山のように……やっと対処が終わりましたので更新出来ました。週一を心がけておりましたが守れずに申し訳ありませんでした。

 魔界4大陸の一つトロメーア大陸にあるエクロン王国の第9地区の上空に開かれた地獄門アビス・ゲートの前で異様な光景が展開されていた。いつの間にか現れた一匹の小さな蟲の前に跪く7人の魔神デヴィル達…その全てが顔を引き攣らせながら恐怖に震えていた…

 ここに居る7名全員がレベル300を軽く超える強者達、しかも悪魔王デーモンロードアンドラスに至ってはそのレベルは632…人間界で西の大陸を支配する魔王ダンタリオンなど足元にも及ばぬ戦闘能力を誇る超越者である。その彼らが跪き畏怖する存在…彼等の前に居る5センチほどの蠅のような蟲は只の蟲では無い。このエクロン王国を支配する魔神王デヴィルロードベルゼブブの分身体なのだ。


 ベルゼブブはエクロン王国全域に万を超える分身体を送り込み、監視する事で自分や国政に不平不満を口にする者を反乱分子として徹底的に処分していた。まさに恐怖による統治を行っていたのだ。

 そして国民達は自由すら与えられず、まるで囚人のように徹底的に管理されていた。必要最低限の生活を与えられる代わりに過酷な重労働を強いられ、奴隷のような扱いを受けていた。

 統治者としてはあるまじき行為…まさに暴君と言っても過言ではない悪政を強いているにも拘らず何故か謀反や反乱は起きなかった。

 理由は簡単な事である。例え全国民がベルゼブブに対して反旗を翻したとしても勝ち目など無い、皆殺しにされるだけなのだ…圧倒的な戦闘能力を持つ魔神王デヴィルロードを倒せるのは魔神王デヴィルロードだけである。

 それに魔界は弱肉強食の世界、弱者は淘汰されるのみ…如何に暴君であっても強力な魔神王デヴィルロードの庇護下にあれば最低限の衣、食、住は保証されるのだ。

 そしてこのエクロン王国の犯罪発生率は0.1%以下と言う魔界でも最高の治安を誇っている。監視の目による窮屈な暮らしはあるが、ベルゼブブにさえ従っていれば国民の殆どが犯罪に巻き込まれる事も無く命の保証はされるのだ。

 しかもゾディアック連合の中にはベルゼブブ以下の最悪な暴君が居る為、その国と比べたらマシな方だと妥協してしまっている節もあった。


 ゾディアック連合に加盟する各国の統治方法に関しては各々に委任されている為、基本口出しはしない。しかし目に余る行為がある場合は12人の魔王達による会議により処分が下される場合もある。だが、この程度では処分の対象にはならないのだ。他の魔神王デヴィルロード達にとっては「自国の国民を監視して反乱を未然に防いでいるだけ」と言う認識しか持っていない。所詮は魔神デヴィル…他国がどうなろうが気にも留める事は無かった。まして優しさやモラルなど持ち合わせてなどいない。

 何せ趣味は「拷問」と「嫌がらせ」と豪語するあの外道少女アスモが魔界では名君と言われる位である……人間界の常識とは根本的に考え方が違っていた。




 地獄門アビス・ゲートの前に静寂が響く――

 もう、かれこれ5分以上は沈黙が続いている。アンドラス達は跪きながら一言も喋らずただ目の前で羽音を立て顎を鳴らす蟲の一挙手一投足を注視していた。分身体とは言えベルゼブブの前で許可なく発言する事は不敬に当たる。これからの対応を一つでも間違えれば自分達だけではなく親族…いや、デュパインの民達にも危害が及ぶかもしれない…そう考え今後の対応をどうするかを各々が思案していた。


『やっと来たな。この糞バエ野郎が!どうせコソコソと隠れて聞いていやがったんだろう?本当に陰湿な屑め!そんなちっぽけな分身を寄越した位で俺がビビるとでも思っているのか?――文句があるならここまで来てみろ!このど腐れ愚王が!!』

 その重苦しい場の雰囲気を吹き飛ばすかのように空気を読まない…いや、読む気など全く無い黒山羊アスモの洒落にならない発言が沈黙を打ち破った。

「「「なっ!?――ぐっ……」」」

 その言葉にアンドラス達は仰天しながらも声を押し殺して苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。そして地獄門アビス・ゲートの向うでほくそ笑んでいる黒山羊アスモを怨嗟の瞳で睨みつけた。


 ベルゼブブの分身体が威嚇するかのようにガチガチと顎を大きく鳴らし地獄門アビス・ゲートの方へ視線を向ける。

『フン、言葉も話せぬ小虫が威嚇したところで怖くも何とも無いぞ!文句があるなら直接来いと―――おおっ!?』

「「「まさかっ!?」」」

 アスモが挑発を繰り返す最中、分身体が急激に膨張しそして破裂した―――分身体が居た場所をよく見るとその空間に亀裂が奔っている。その亀裂がだんだんと広がっていき3メートルほどの大きさになった途端、硝子の様に砕け散る。そして開いた深淵の様に真っ暗な次元の狭間から禍々しい絶望の波動オーラが溢れ出して来た。

「あ…ああ…陛下…」

 王の到来を感じ取ったアンドラス達は次元の扉から即座に視線を外して深く頭を下げ、硬直して跪く。

 禍々しい波動オーラと共に邪神かみと言っても過言では無い存在が次元の扉を潜って現れた――



 名前 ベルゼブブ

 種族 魔神デヴィル

 階級クラス 魔神王デヴィルロード

 レベル 1314

 職能スキル 「暴食ザ・グラトニー



 ベルゼブブ(怒メーター)現在値20%

 ()■□□□□□□□(100)

「………」


 黒褐色の法衣に漆黒のマントを纏い、頭には王冠、右手に王杓、左手に宝珠の意匠を凝らし様々な魔石がはめ込まれた豪華な3つの玉璽レガリアを身に着けた2メートル強の手足が長くスタイルの良い褐色の男が現れた…だが、その背中には翼では無く翅を生やし、頭には角は無く触角のような物が2本側頭部に生えている。そして何よりも異形なのはその顔を覆うように着けられている金色の仮面であった。仮面に開けられた3つの穴から覗く睨み付けるような真っ赤な瞳と真一文字に結ばれた口元を見ればその心中が穏やかでないのは一目瞭然であった。

 その男こそエクロン王国、国王にして「大罪デッドリーシン職能スキル暴食ザ・グラトニー」を所有するゾディアック連合、序列第7位「暴食の王」ベルゼブブ…

「魔蟲公」の異名を持ち、只一種のみを除いて全ての蟲を操る事が出来る能力を持つレベル4桁を超える恐るべき魔神王デヴィルロードが現れたのだ。

 その登場によりアンドラス達に緊張が走り、その場が再び静寂に包まれる――



 ふむ、ようやく現れおったか「糞野郎」め。分身をゲートの代わりにして空間転移する手段か…確か8万近く分身を飛ばしておるとか言っておったな。距離的にトロメーア大陸中は不可能じゃろうが、自国内であれば分身が居る場所にはどこへでも転移は可能じゃろうな…一応、流石は魔神王デヴィルロードと言ったところかのう。

 それにしても予想以上に機嫌が悪いようじゃな、まさか大罪魔神器の「暴食の王笏(グラトニー・セプター)」まで持ってくるとは…クフフフフフ、あの程度ですっかり殺る気満々の様ではないか。重畳、重畳♪

 さ~て、お前には頑張って地獄門アビス・ゲートを壊してもらわんといかんから今から思う存分、たっぷりとおちょくり倒してやるからのう♪何せ犯人はお前の配下の黒山羊バフォメットなのじゃからな。ウケケケケ♪



 現れたベルゼブブの明らかに不機嫌そうな態度を目の当たりにしたアスモは悪い顔をして口角を上げニヤリとほくそ笑む。



「…面を上げよアンドラス。」

 静寂を打ち破るかのように放たれた言葉に雰囲気が一変し周囲の空気がピリピリと張り詰め出した。

「は、はい、陛下。」

 アンドラスは震えながらもその呼びかけに応えた。

「何故、あの者を黙らせぬのだ?」

 低く威圧感のある声でベルゼブブが質問する。

「それが…先程から「消音結界サイレンサー」を試し―――!?があぁぁ!!……ぐうぅっ…」

 弁解を行っているアンドラスの右上半身が突然吹き飛んだ。大量の鮮血をまき散らしながら苦悶の表情を浮かべるが痛みを噛み殺して大声を上げずに跪いたままの体勢を崩す事無く耐えている。

 通常であれば即死してもおかしくは無い致命傷だが、強大な魔力を持つ魔神デヴィルの再生能力、悪魔王デーモンロードにもなればこの程度の傷ならば損傷箇所の修復を行うのに数十秒あれば魔法など使わずとも自己修復が可能なのだ。既に失われた右上半身の骨格や筋繊維などが構築され再生が行われている状況であった。

「――愚か者め…余の命で貴様はあの者に呪縛魔法をかけている筈ではないのか?何故それを使わぬと聞いておるのだ。…まさかそれを怠ったとは言わせぬぞ。」

 アンドラスを蔑みの眼で見下しながら罵倒を浴びせる。

「――はぁ、はぁ、はぁ…申し訳ありません陛下…余りにも信じられない出来事に気が動転していた為に気づきませんでした。今すぐに処分を致します。―――「呪殺発動デス・ペナルティ」!」

 激痛に息を荒げながらベルゼブブに告げられた言葉にはっとしてアンドラスは即座に謝罪を行う。そして痛みを堪えながら黒山羊バフォメットに仕掛けた呪を発動させた。

「これであの愚か者の頭は吹き飛んだと思われます。――大変申し訳ありません。本来ならば生きたまま捕えて陛下の前まで連行するのが最善策かと思い色々と手を尽くしましたがこの有様…この失態の責任は私に御座います。部下や民達には寛大な処分をお―――」

『貴様ーー!!よくもアンドラス様に傷を負わせたな!このス〇トロ野郎が!!――アンドラス様、大丈夫ですか?何とお労しい事か…おのれ、この愚王が!』



 ベルゼブブ(怒メーター)現在値40%

 ()■■■□□□□□(100)  ピピッ!

「………」


 頭が吹き飛んだ筈の黒山羊バフォメットの更なる暴言が地獄門アビス・ゲートの向こうから聞こえて来たのだ。

「ファッ!?生きているだと…馬鹿な…何故だ?何故発動しないのだ?――ならばもう一度!「呪殺発動デス・ペナルティ」!!」

 終わったと勘違いし安堵していたアンドラスはその声を聞いて驚愕し唖然としていたが、ふと最悪な事態が頭をよぎった。

 失態を犯した自分が粛清されるのは決まっているが、このままでは謀反人として処分されてしまう…そうなれば親族どころか第9地区の民達にまで被害が及ぶかもしれなかった。

 たった一人の狂人バフォメットの為に民達が犠牲になる事だけは許されない。故にこの最悪な状況を打破しようと即座に黒山羊バフォメットの脳内に仕掛けてあった魔法を何度も何度も必死に発動させようとしていた。…だが、地獄門アビス・ゲートから聞こえてくる暴言は一向に止む様子が無かった。

「……ほぅ、発動しないか…ならば何故あの者は未だに喋り続けておるのだ?最初から「発動などしない」の間違いではないのか?確か貴様はこの地区の民達に大層人気があるようではないか。なあ、アンドラスよ…」

 怒りと苛立ちを含み威圧感を増した低い声でそう告げ、ベルゼブブがアンドラスを睨みつける。

「――っ!?これは何かの間違いです!!陛下、私は確かにあの愚か者に「呪縛スペル・キャスト」をかけました!本当なん――」

『その通りだ!貴様のような愚王と違ってアンドラス様は王の器を持つ立派なお方よ!いずれ「大罪デッドリー・シン」を背負い、貴様を打倒するのが我らの願い!人徳も人望も持ち合わせない「糞蠅の王」の貴様とは大違いだ!現に俺の事を気遣って「呪縛スペル・キャスト」をかけた事にして人間界へ送り出してくれたのだ!』

 そしてアンドラスを地獄に叩き落とす爆弾発言が放たれる。

「貴様ァーー!!!――はっ!?陛下!本当に私は叛意など…」

 その発言に激怒し声を荒げ地獄門アビス・ゲートの方を向き立ち上がろうとした矢先、アンドラスは突如背後から襲いかかる殺気を感じ取り、慌てふためき、それを放つ存在ベルゼブブに弁解を行おうとした。

「ほぅ…どうすれば上位悪魔アーク・デーモン如きが悪魔王デーモンロードの使う「罪科クライム職能スキル技能アビリティを解除出来るのだ?……ならば答えは簡単な事だろう?貴様は命に背いたと言う事だ。――余の意にそぐわぬ者は要らぬ、死を賜るが良い。」

 両目と口元しか見えない金色の仮面から覗くベルゼブブの真っ赤な瞳がアンドラスを捉えギラリと妖しく輝く。

「お、お待ちぶぇ!?――」

 弁解の言葉を述べる事すら無くアンドラスの胸から上が吹き飛び大量の鮮血をまき散らしながらその巨体が地上へと堕ちて行く。その衝撃により大地に小さなクレーターが出来、その場に血の花を咲かせた。

 アンドラスはピクリとも動かず完全に事切れている。流石の悪魔王デーモンロードの再生能力をもってしても頭を失っては絶命は免れない様だ。

 外道少女アスモの嫌がらせにより魔神デヴィルにしては誠実で正義感があり、統治する地区の民達から慕われていたアンドラスはその人生の幕を下ろした。

 さらば悪魔王デーモンロードアンドラスよ…



 クフフ、まずは一人脱落なのじゃ♪阿保共め、まんまと妾の策に引っかかりおって。

 死体バフォメットに呪縛魔法が効くわけが無いじゃろう。仮に生きておったとしても妾が既に解除しておるのじゃ。お主のちんけな魔法など妾の前には無意味なのじゃ!

 それにしても相変わらず部下に厳しい奴じゃな。話も碌に聞かずにあっさりと幹部である悪魔王アンドラスを殺しおったな。…じゃから人望も皆無に等しいと言われるのじゃ、本当に愚かで間抜けな奴め。

 まあ、そう言う阿呆じゃから今回の策に嵌りやすいと踏んでおるのじゃがな。

 どうせ残りの6人も死の運命には逆らえぬのじゃ。ならばその生命、「糞野郎」を更に怒らせる為の燃料として妾が存分に使ってやるのじゃ!ウケケケケケケ♪




「…さて、一人目の背信者の処分は終わったか…――で、確か上位悪魔アーク・デーモン如きに「消音結界サイレンサー」が通用しないと申しておったか?貴様らは魔神デヴィルなのではないのか?ん?」

 地に落ち絶命したアンドラスから視線を外し残る6名の魔神デヴィル達の方へ冷めた視線を向けてベルゼブブは質問を始めた。

「…ほ、本当なんです陛下、通用しないどころか発動さえしなくなりました。嘘など申しておりませぬ。」

 アンドラスの死を目の当たりにしながらも魔神デヴィル達は跪いたままの姿勢で震えながら必死に弁解を行った。

「…本当に効かぬと言ったな?…「消音結界サイレンサー」。……ほぅ、ちゃんと発動したではないか。それにあの者の声も掻き消えておるようだが…これはどう言う事かな?」

 ベルゼブブが発動した「消音結界サイレンサー」により結界が展開され地獄門アビス・ゲートの向こうから撒き散らされていた暴言がピタリと止んでしまった。

「あ…うぅ…―――さ、流石は清浄にして偉大なるベルゼブブ陛下!!我らとは魔力の桁がちがう゛っ!?」

 愚鈍で的外れな発現をした中位魔神デヴィルの上半身が吹き飛びアンドラスと同じく地面へと堕ちて行った。

「愚か者が、魔神デヴィルの結界を上位悪魔アーク・デーモンが破れる道理など無いのだ。で、貴様らはもう少しましな言い訳を考えているのか?――ああ、そう言えば昨日「消音結界サイレンサー」の中で余や国に対する不平不満を申していたそうだな?」


「――ひぃぃ!?…お赦しを陛下!お赦し下さい!!あれは失言で…本当はその様な事など言った事はありません!!」

「本当です!私は無実です!他は兎も角、私はその様な不敬な発言など口にした事すらありませぬ!」

「だから貴様はァ!!その言い方だと―――いい゛っ!?」

 先程と同じく狼狽した魔神デヴィル達がお互いに罪の擦り付けあいを行おうとした矢先、ふと地獄門アビス・ゲートの方を見た上位魔神デヴィルが目を見開き唖然とした表情をした。

「ん?一体何が…はぁあ!?」

 それにつられて地獄門アビス・ゲートの方へ視線を向けた4名の魔神デヴィル達もそれを目の当たりにし驚愕の顔を浮かべる。

「――はっ!?いかん!陛下!あれを見ては駄目です!!見ては――ひぃぁあ!!」



 ベルゼブブ(怒メーター)現在値60%

 ()■■■■■□□□(100)  ピピッ!

「………ぐっ!…」


 魔神デヴィル達がベルゼブブに注意を促したが時既に遅し…ベルゼブブはその光景を目の当たりにし、強く拳を握りしめ怒りに震えていたのだ。

 ベルゼブブ達の眼に映る光景――それは黒山羊アスモの暴言が止んで静かになった地獄門アビス・ゲートから一本の長い腕が伸び、その大きな掌の甲をベルゼブブに向けて、中指だけを立てていたのだ。所謂いわゆる「F〇CK YOU!! 」のジェスチャーである。人間界にも魔界にも通じる万国共通のサイン…勿論、「暴食の王(ベルゼブブ)」にも効果は抜群のようだ。



『――おっ!?やばっ――』

 急に襲ってきた殺気を感じ取りアスモは操っている黒山羊バフォメットの腕を即座に地獄門アビス・ゲートの中へと戻した。直後、凄まじい轟音と共に地獄門アビス・ゲートの周りに突風が巻き起こる。

「――ちっ!勘の鋭い奴だ…力の加減が難しいな…」

 苦虫を噛み潰すようにベルゼブブが吐き捨てる。地獄門アビス・ゲートをギリギリ掠めるように放たれた強烈な一撃はベルゼブブが軽く腕を振るっただけで発生した最高位魔法をも上回る威力の衝撃波であった。


「――おい、貴様ら。あの愚か者の身内が来るように手配しているのであったな?」

 ベルゼブブは込み上げる怒りを抑えつける様に大きく息を吐き平静を保ったように魔神デヴィル達への質問を再開した。

「は、はいぃ…既に手配済みです!もう暫しお待ち頂ければ到着するかとおも――がっ!?」

 ベルゼブブの質問に答えていた上位魔神デヴィルの視線が再び地獄門アビス・ゲートの方に釘付けとなり、その表情が再び驚愕に染まる――


「どうし――っ!?……おのれゴミが!…」

 ベルゼブブの眼に映ったのは再び地獄門アビス・ゲートの向こうから伸びて来た中指を立てた黒山羊バフォメットの長い腕であった。今度は地獄門アビス・ゲートから出たり入ったりを繰り返していた。まるで挑発し、嘲笑っているかのように…



 ベルゼブブ(怒メーター)現在値70%

 ()■■■■■■□□(100)  ピッ!


 その様子を目の当たりにした5人の魔神デヴィル達は危険を察知し即座に跪き、ベルゼブブと視線が合わぬように頭を深く下げて震える事しか出来なかった。



「…何が可笑しい?」

 ベルゼブブがそう告げる。その低い声は明らかに怒りで震えていた。

「「「ふぁっ!?」」」

 魔神デヴィル達がその言葉を聞いて同時に驚きの声を上げる。

「何が可笑しいと聞いているのだ!…余が愚弄されるのがそんなに可笑しいのか?無礼者共め!死を賜るが良い「獰悪なる冥府の蜈蚣ゲオフィルス・ハーディス」!!」

 突如怒り出したベルゼブブが怒気を発し「暴食ザ・グラトニー」の技能アビリティを発動した。

 ベルゼブブの左腕が100メートルを優に超える巨大な赤褐色の禍々しい大蜈蚣(ムカデ)と化し魔神デヴィル達の方へ凄まじい速度で薙ぎ払われた。大蜈蚣(ムカデ)の大顎が開かれ魔神デヴィル達はその速度に反応する事も出来ず大蜈蚣(ムカデ)の大きな口の中へと飲み込まれて行き、その中で擂り潰されていった。

 4人の魔神デヴィル達がこれ以上ベルゼブブの怒りを買わないように出来るだけ身体をを抑え、小刻みに震えていた事が仇となってしまった。…どうやらその行為が黒山羊アスモにおちょくられ、冷静さを欠いているベルゼブブには彼らが笑っていると勘違いされたようであった。



大罪デッドリー・シン職能スキル暴食ザ・グラトニー」――

 その力は喰らった者達を己の糧とする職能スキルである。

 相手を喰らい取り込む事で通常よりも多く経験値を得る事が出来、取り込んだ生命を利用する事により通常よりも遥かに速い瞬間再生を行う事も出来る。

 そして最も恐ろしいのは「暴食ザ・グラトニー」の力で取り込んだ魂達を媒介にして己の体内に億を超える蟲達を住まわせているという事である。今使用した「獰悪なる冥府の蜈蚣ゲオフィルス・ハーディス」もその中の一体である。



 惜しいっ!もう少しで地獄門アビス・ゲートにぶち当たるところじゃったが外しよったか…

 それにしてもかなりのご立腹のようじゃな♪どうした?当てれるものなら当ててみよ!但し、力の加減を間違えれば地獄門アビス・ゲートが壊れるぞ。ウケケケケケケ♪

「糞野郎」の仮面の下は血管浮まくりの真っ赤かじゃろうなぁ。

 流石に魔神王デヴィルロードであるお前の「消音結界サイレンサー」まで効かなくしたら確実に他の魔神王デヴィルロードが関与していると思われる。特に隣国アクゼリュス居る筈の(・・・・)妾がのう。それでは「糞野郎」の猜疑心を利用して部下を始末させると言う計画と黒山羊バフォメットを犯人に仕立て上げる事が出来なくなるのじゃ。大声で罵声を浴びせられぬのはつまらぬがこれもまた一興…クフフ、中々面白いのじゃ♪まるで土竜叩きみたいじゃな♪

 早う根負けして「消音結界サイレンサー」を解除するが良い、妾の嫌がらせ…基、策略はこれからが本番じゃぞ!

 おっ!どうやら次の着火剤(生贄)が来たようじゃな。これはもっと面白くなりそうな予感がするのう、クフフフフフフ…



 仮面の隙間から僅かに見えるベルゼブブの顔に苛立ちを超えた怒りの表情が浮かぶのを感じ取ったアスモは嬉しそうにニヤリと嗤う。そしてこちらへ向かって来る新たな犠牲者達を感じ取り、更なる悪知恵を働かせていた――



風邪は全快しましたので次話以降は週一更新で行けそうです。

皆様も体調にはお気を付け下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ