第39話 初めてのダンジョン その④アスモVS悪魔軍団
広大なジグルス遺跡の地下迷宮をアスモは「導きの珠」の案内により最下層にあたる地下11階まで難なく到達する事が出来た。
「ふむ、約200メートル先に多数の悪魔の反応があるのじゃ、と言う事はここが最下層じゃろうな。それにしても迷う事無くここまで容易く到達出来るとは魔道具とは本当に便利な物じゃな。壊滅しおった先行隊の雑魚共は役に立たんと思っておったが、しっかりと最下層までの記録を残しておくとは中々やるではないか。生き残りおった奴には一応感謝しておくとするかの。――さて、「不可視の外套」を着けているから悪魔程度では妾を感知する事は出来ぬじゃろうがこれだけ近ければ目視される可能性もあるのじゃ、それに戦う前に「アレ」の確認を先にしておく必要があるから気取られぬようにせねばならぬのじゃ。――ではやるか「消えよ」」
アスモが「不可視の外套」に念じるとその姿が周りの景色と同化していく。
「さて、奴らの住処に移動して調査を開始するとしようかの。それが終わればお楽しみの戦闘&レベルアップなのじゃ、クフフフフ♪」
微笑みながらそう呟きアスモは悪魔達のいる場所まで移動を開始する。ヒカリゴケだけが周りを照らす薄暗く何もない地下迷宮の通路に少女の無邪気な笑い声だけが微かに響く――
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悪魔達の反応のある場所へ向けてアスモは地下迷宮最下層をさらに奥へと突き進んだ。すると通路の先にはっきりとした灯りが燈っているのが見えてきた。その灯りは人間達が使用する「魔燈火」と名付けられた魔道具では無く松明か灯篭を設置して照らしているようだ。
それにしても薄暗い地下迷宮では非常に目立つその光景はあからさまに不自然とも言える状況であった。
まるで危険を知らせるかのように警告灯として設置してあるのか若しくは誘蛾灯の様に獲物を誘い込む為の罠なのか…
通常であれば確実に警戒するであろうがアスモは全く気にする事も無く前進を続ける。まあ「不可視の外套」を装備しているのだから当たり前の事だろうか。
そして通路を抜けると巨大な地底湖のある鍾乳洞が現れた。
その天井を見上げれば大自然の芸術とも言える幻想の世界や目の前に広がる神秘的な雰囲気に呑まれそうになる。
「ほぉー、中々の絶景ではないか。――じゃが、この景色に似合わぬ余計な物も多い様じゃな…」
だが、下の景色を見た瞬間にアスモは現実に引き戻された。
地面には悪魔達が今まで喰い散らかした大量の怪物達の残骸、そして最低でも数人分はある新しく食い散らかされたであろう血のこびり付いた人間の骨やその装備品が無造作に転がっていた。多分先行し壊滅したA級冒険者達の成れの果てと思われる。
更に周りを見ると中には悪魔達の骨も多数転がっている。冒険者達の死体と同じく血がこびり付き新しいものと思われる。…その状況から見て先行隊との戦闘で死亡しその後、悪魔達に餌として処分されたのだろうと言う事は想像がついた。
そしてさらに奥にあたる地底湖周辺に視線を移すとそこには大量の悪魔達が集結し蠢いていた。
その悪魔達の姿は牛や馬等の草食動物、そして狼や山猫等の肉食動物の様な姿をしたまるで統一性の無い様々な種類の獣の頭部に上半身は人間、そして下半身は頭部と同じ獣の下半身をした2足歩行の半獣半人の様な姿をしていた。
悪魔を見た事が無い者であれば話を聞くだけでは只の獣人なのでは?と思う事が普通かもしれないが、その見分け方としては一部の例外を除いてほぼ全ての悪魔に共通しているのは羊の様な螺旋形の角を2本側頭部生やし、尖った爪の付いたコウモリのような翼に細長く先の尖った尻尾を持っていると言う点である。
下位悪魔はアスモと同じ子供位の大きさから1メートル7,80センチ程まで様々な大きさ、中位悪魔はそれ以上の大体2メートル前後の大きさであった。中には一際大きな2メートル半ばを軽く超える巨大な牛の様な悪魔も居た。
見る限り総数100は確実に居るであろう悪魔達が蠢く様子は通常では考えられない異様にして異常な光景であった。
普通の神経をした者がこの光景を目の当たりにすれば一目散に逃げ出すであろうが、その光景を目の当たりにしたアスモは身震いし歓喜に顔を綻ばせながら静かにガッツポーズを決める。
おぉー!居る居る♪いっぱい居るのじゃ♪
クフフフ、やったのじゃ、今の妾にはあ奴らが素晴らしい金脈に見えてしまうのじゃ♪これは間違いなくレベルが軽く10以上は上がるのが確実じゃな♪今日は本当に最高の一日なのじゃ♪
あー殺したい、今すぐぶち殺して楽しみたいのじゃ!
…じゃが、まずは状況確認をせねばいかん、何せ「アレ」も見つけておかねばならぬからのう。
では早速調べるとするかの、先ずは悪魔共の方からじゃな。
――――うむ、報告通りの結構な数じゃな。えーと、数は総計120体…内訳はレベル56~67の中位悪魔が14体、レベル21~37の下位悪魔が105体、ん?レベル32の人間が1人………じゃとぉ!?
どう見ても一人だけ違う例外を感知したアスモはすぐさまその反応があった方向を見るが殆どの悪魔達が集結している地底湖とは離れた場所であった為、肉眼では確認できなかった。仕方なく「千里眼」を使い透視で再度確認を行う。
そこには十数体の下位悪魔に取り囲まれ地面に組み敷かれて凌辱されている一人の女が居た。状況から判断すると多分先行した冒険者達の生き残りと思われる。
女の装備品や服は剥ぎ取られ裸の状態で全身が血と下位悪魔達の物であろう体液や精液で汚されていた。見た所、致命傷になる様な傷は無いが全身に擦過傷、そして首元や乳房には噛み付かれた様な痕が多数みられた。
下位悪魔達が狂喜の声を上げ女を犯し続けているのに対して女は嬌声一つ上げない。昨日から延々と凌辱を受け続けてきたのであろう。その疲労や心労は計り知れないものがあると思われた。
かろうじて息はある様だがもしかして精神は壊れてしまったのかもしれない。
それでも下位悪魔達は構わず代わる代わるその女を犯し続ける。
あの女は多分先行した奴らの生き残りの様じゃな。
それにしても昨日から悪魔共の慰み者にされておると言う事は恐らく前も後ろもガバガバ…もとい、もう使い物にはならんじゃろうな。
まあ、あの様子から見て精神は既に壊れておるじゃろう。死ぬまで犯し続けられ死んだらそのまま餌として喰われると言った所じゃの。
まあ、どちらにせよ妾にはあの女が生きていようが死のうが全く関係ない事じゃ。
しかし汚いのう、悪魔共は妾が直接撲殺してやろうと思っておったが、あそこの奴らを素手で触るのはご免なのじゃ、返り血を浴びるのは良いが下等生物の体液や精液など悍ましくて触れたくも無いのじゃ。
あそこに関しては女共々後で焼き払ってしまうとするか。汚物は消毒なのじゃ!
さて、悪魔共の状況は確認したから次は「アレ」の正確な場所を探すとするかの。
アスモは一応同じギルドに所属する冒険者である女の事など全く気にする事も無く華麗にスルーしもう一つの目的である「アレ」の調査を開始する。
彼女にとってゼフォン以外の利用価値すら無い人間がどうなろうとどうでも良い事なのだ。
そしてアスモは悪魔達の中心に位置する場所を再度「千里眼」で確認し目的の「アレ」を見つける――
それは異様な光景であった。そこには空間に穴が開き、直径2メートル程の大きさのブラックホールの様な真っ黒な次元の狭間が形成されていたのだ。
その空間に開いた穴の正体は「地獄門」この穴を潜る事により魔界と人間界の移動が可能になるのだ。
そして「地獄門」を守護するかのように穴を中心に悪魔達が取り囲み密集していた。
――はぁ、随分と雑な奴らじゃな。…どう見てもあの程度のサイズでは下位悪魔如きであったとしても悪魔が出入りできるサイズの訳が無いじゃろ。間抜けな人間共ならまだしも妾にその程度の隠蔽工作が通用するとでも思っておるのか愚か者共め。
さて、悪魔達の中心にある「アレ」の囮はすぐに確認出来たが、本命は何処にあるのじゃろうか…
「神の眼」が使えれば一瞬で解決なのじゃが、今の妾ではこの程度の範囲でも時間をかけて慎重に調べねばならぬのは実に面倒なのじゃ。
はぁ、如何に魔神王とは言えレベルが低い最弱の状況では情けないものよのう…
――――ん?あそこの湖の奥は……あった、あったのじゃ!あそこの奥に結界があるのじゃ。
景色に溶け込むように視覚阻害で扉を隠して上手く隠蔽しておるではないか。人間どころか下手な魔神でもまず見つける事は出来ぬのじゃ、かなり精巧な結界の様じゃな。
それに随分と強力な結界装置を使用しておる、まず並みの魔神ではこの装置を用意出来んじゃろ。下手をすれば上位以上の魔神が絡んでおるやもしれんな…
さて、中の様子を透視してみるか。―――うむ、予想通りあったのじゃ。やはりこの鍾乳洞内にあるのは外側の人間界、つまりこの地下迷宮から開けたあくまで見つかって破壊されても良い囮で結界で隠している扉の奥にあるのが内側の魔界から開けた本命と言う事じゃな。
確かに大きいのう、しかも良く安定させておる。この様子では更に穴を広げるつもりの様じゃな。
――そしてあそこで鎮座しておるのが門の番人と言った所か…
ほぉ、レベル97か。ふむ、今の状態では少し厄介じゃな。先にここの悪魔共を始末してレベルを上げてから戦うとするかの。
それにしてもあ奴の姿はどこかで見たような種族じゃな……――あっ!?思い出したのじゃ、確かあ奴はあの糞野郎の国にだけおる固有種の悪魔じゃ!
…と言う事はこの「地獄門」はあ奴が関与していると言う事なのか?
しかし幾ら「地獄門」を広げようが魔神王が通り抜けられる大きさなど今まで聞いた事すら無いと思うがのう。
まあ中央大陸におる阿呆は自分で開けて来た様じゃが、あんな芸当は奴の「大罪」職能の持つ技能のなせる業じゃと思われる故、例外としか言えぬの。
もし普通に開けるならば一体、何千、何万年掛かるのじゃ?いや、それでも無理やも知れぬ。
ならばあの糞野郎の配下が勝手に行ったのかと言いたい所じゃが、それはまず考えられぬのじゃ。
他人どころか身内ですら信用せず国民を力と恐怖で縛り付ける腐った性格のあ奴は絶対に秘密など許さぬ。それどころかあ奴の国では隠れて何かをする事など出来ぬ筈じゃからな。
そう考えればあ奴が主体で行っておると見るのが妥当じゃな。…あ奴には何か秘策でもあるのか?
どちらにせよあ奴が何を考えておるかも調べる必要があるのじゃ、慎重に事を進めねばならぬのう。
まあ良い、奥の奴が出て来てここに居る悪魔共と一緒に共闘でもされると面倒な事になるのじゃ、本当はゆっくりと殺戮を楽しみたかったのじゃが、ここの奴らは早めに一掃しレベルを上げてから奥に居る門の番人と楽しむとするか。
さてと、先程の汚物共と一緒に全員火葬してやるとするかの……ん?あの人間何か言っておるのか?
アスモは悪魔達の耳障りな声にかき消されほとんど聞こえない微かな女の声を聴き百メートル以上離れた先いる女の方へと静かに移動する。
まさに魔神の耳は地獄耳とは良く言ったものである。
女を取り囲み犯し続ける下位悪魔達のもとへ近づき女の言葉に耳を傾けた。
「…お前ら…なんか……絶対…屈しない…から…」
ほぅ、精神は壊れておらぬ様じゃな。これ程の責め苦を受けて屈せぬとは中々やるではないか。
その心意気に免じて妾が楽にしてやるとするのじゃ。一応、名を聞いて…いや隠密中じゃから視ておくとするかの。
アスモは「鑑定眼」で女の能力を確認した。
名前 シンシア・プリムス
種族 人間
職業 B級冒険者
レベル 32
職能 「魔工技師」、「魔導師」
名前はシンシア・プリムス、B級冒険者か…ん?職能「魔工技師」……「魔工技師」じゃと!?
確か魔道具に関する膨大な知識を持ち更に開発する事が出来る者が習得できる希少な職能ではないか。
この女の知識、いや技術は妾に必要なのじゃ。ここは助けて恩を売るか若しくは助けた後に記憶を視て知識だけでも奪うか…どちらにしてもこの女を今死なせる訳には行かんのじゃ。
どちらにせよ始める予定じゃったから早速、戦るとするか‥
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「グヘヘヘ、泣き叫んでも誰も来ないぞ!死ぬまで我らに嬲られて餌になるのがお前の運命だ。快楽に身を任せれば多少は楽になるかも――なぁあ!?」
下衆な笑いを浮かべながらシンシアを犯し続けていた豚顔の下位悪魔の首が中空を舞う――
「な、何だ!?コイツいきなり死にやがったぞ!」
「どうしてコイツの首が飛んだんだ?」
「おいっ!そこに何かいるぞ!!」
突然起こった衝撃的な光景を目の当たりにし、シンシアを取り囲んでいた下位悪魔達が恐慌状態に陥り声を上げる。そして一人の下位悪魔が指差した場所へと一斉に視線を移す。
そこには何も無かった。――いや、その何も無い空間がぐにゃりと歪み蠢く。
「一体、何―――ギャウ!?」
「――グヒャ!?」
「たひゅけ…てえ!?ギャアアァァ!!」
下位悪魔達がそれに気付いた時には既に遅かった。透明な何かは空間を歪めながら凄まじいスピードで動き下位悪魔達の周りを移動しながら次々と攻撃を加えて来たのである。その攻撃により肉が爆ぜ四肢が千切られる者もいた。
突然襲撃してきた姿すら捉える事が出来ない何かが自分達を一方的に惨殺して行く――いや、空間が蠢き何かが自分達の周りを移動しているのは判るのだが下位悪魔程度ではその凄まじいスピードに体どころか目で追う事すら出来なかった。仮に何かが透明で無かったとしてもその攻撃を躱す事は叶わないであろう。
その状況に心底恐怖した下位悪魔達の阿鼻叫喚の悲鳴が鍾乳洞に木霊する。
そしてほんの十数秒でシンシアを取り囲んでいた十数体の下位悪魔が腸をまき散らし、バラバラの肉塊へと姿を変えた――
「う…あ、あ…何が…一体?」
シンシアは目の前で起こった信じられない出来事に思考が追い付かず混乱し固まっていた。すると目の前の空間が歪み何かが姿を現した。
「ふむ、無事とは言えぬが一応生きておる様じゃな?安心するが良い、妾がお主を助けてやるのじゃ。――それにしてもたったこれだけでまたレベルが上がったのじゃ♪」
そこにはパッチリとした大きな金色の瞳に通った鼻すじ、形の良いぷっくりした唇、そして美しく透き通るような白い肌のまるでお人形さんのような小顔で愛らしい顔立ちに無邪気な笑顔を浮かべる8歳位の可憐な美少女が深紅の美しく長い髪を靡かせながらシンシアに近づき話しかけてきたのだ。
だが只の美少女では無かった。洗礼された漆黒の衣装を身に纏い、その頭には黒曜石の様に美しく輝く小さな2本の角を生やし、背中に小さな悪魔の翼、そして悪魔の尻尾を生やしていた。
「え…助けに…子供?でもその姿…魔族なの?あ…A級冒険者!?」
先程の衝撃的な光景に加えて昨日からの責め苦により思考が上手く回らない状況で混乱していた為、最初は不安な表情でアスモを見ていたシンシアが「不可視の外套」の下から覗く「金剛鉄鉱」のプレートを見た瞬間に安堵しその表情を柔らかく変えた。
「妾の名はアスモじゃ。史上最速でA級冒険者になった可憐にして美しい超絶な力の持ち主なのじゃ。――それにしても汚い物を触ってしもうたのじゃ。その上、下等生物共の体液や精液臭いのじゃ、お主も匂うから一緒に洗ってやるのじゃ「清めの光」―――ついでに傷も治してやろう「完全なる治癒」」
アスモは魔法を発動し自身とシンシアの身体の洗浄を行い、その後にシンシアの怪我や損傷した箇所を一瞬にして治療した。
「痛みが一瞬で…それに傷も全て治ってる。嘘でしょ!?無詠唱で「完全なる治癒」を使えるなんて…同じA級だったテーズ団長やバルドルさんでも出来ない芸当だわ…」
アスモの目の前で地面に座り込んだ裸の女が己の全身をまじまじと見回し驚きの表情をしていた。
年齢は20代前半、栗色のショートボブの髪にぱっちりとした優しそうな栗色の瞳を持つ小顔で活発そうな小麦色の肌のスレンダー体系の美女。それが「魔工技師」の職能を持つB級冒険者シンシア・プリムスである。
その姿は先程の血や悪魔達の体液にまみれて汚れていた姿からは想像も出来ない綺麗な容姿であった。
「どうじゃ、さっぱりしたであろう?それから最初から無かった膜以外は綺麗に治してあるから人間の男相手でも充分に楽しめる筈じゃ、妾に感謝するのじゃぞ。あとお主の仲間には悪いがそ奴らと妾を一緒にされては困るのう。妾とは強さの桁が違うのじゃ、何せ妾は最速でS級冒険になる予定なのじゃからな。この地下迷宮探索もその為の手段の一つでしかないのじゃ。――今から残りの下等生物共を始末するからお主はそこでゆっくりと見ておるが良い。――「魔法障壁」。さて、待たせたようじゃな。妾は何時でも構わぬぞ?」
アスモはシンシアを保護するために結界を張り、そして先程から向けられていた視線の方へくるりと踵を返す。
「ひぃっ!!」
シンシアは先程まで安堵していたがアスモの視線の先に居る者達を目の当たりにし、この絶望的な状況を思い出して恐怖に顔を歪めた。
アスモ達の10メートル程先にはこの空間に居る全ての悪魔達が集結し警戒の目で2人を見ていたのだ。
「貴様…我らに気取られず一体何処から侵入したのだ?――それにしても只の子供のように見えるが下位悪魔とは言え12人を短時間で倒すとは中々の実力者のようだな。貴様は何者…いや、その胸元のプレートは確か冒険者?だったか…「金剛鉄鉱」と言う事は昨日仕留めた男2人と同じA級と言う奴か。――確か昨日尋問し殺したバルドルと言う男が貴様らの中では最強の男だったな…ならばそれ以下の貴様がここに来たところで意味などあるまい。態々死地に赴くとは愚かな餓鬼だな。ガハハ。」
話しかけてきた一際大きな牛の頭を持つ中位悪魔がアスモを見て小馬鹿にしたように笑う。
「――ふむ、レベル67の中位悪魔か…一応、主がこの場でのボスと言う事の様じゃな。それにしても口のきき方を知らぬ奴じゃ、姿だけでは無くおつむも獣と言ったところかの。――で、質問じゃがお主ら「地獄門」を利用して何を企んでおるのじゃ?」
「…ほぉ、良く知っているじゃないか。あれを見て「地獄門」だと理解できるとはな。それにしても随分と生意気な餓鬼だ。――まあ、いいだろう、どうせここで貴様は死ぬのだ。貴様の質問には答えてやる…と言いたいが正直言って俺は目的など詳しくは知らん。我らはここを死守するように言われているだけだ。だから貴様にはここで死んで貰うぞ。」
「ほぉ、死んで貰うとな?それはこちらの台詞なのじゃ、妾の前に態々密集してくるとは何と愚かな事よの。…クフフフ、低能な下等生物では妾の実力すら理解出来ぬのか。詳しい話しは奥の結界の中に居る奴に聞くとするのじゃ、何も知らぬ只の捨て駒のお主らにもう用は無い、死んで妾の経験値となれ!二重合成魔法「破砕嵐撃波」!!」
アスモは右手に風属性、左手に土属性の魔方陣を展開しそれを一つに融合させて二重合成魔法を発動させ悪魔達に向かって放った――
「――馬鹿なっ、無詠唱で合成魔法だとぉ!?み、皆、避けろー!!」
牛頭の中位悪魔の声に反応出来たのは十体程度であった。残りの者は全て迫りくる巨大な破壊の渦に飲み込まれた。そして悪魔達は渦の中で抗う術も無く五体をばらばらに引き千切られ擂り潰されていったのだ。
風・土合成魔法「破砕嵐撃波」――その威力は凄まじく破壊の渦は大地を深く抉り、渦により発生した岩石の飛礫が辺り一帯に弾け飛び鍾乳洞の形を変えた。
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「破砕嵐撃波」により破壊された鍾乳洞内では砂塵が舞い周辺の視界を遮っていた―
「うぐっ、…何て威力の魔法を放ちやがる…――おい、生き残りは何人だ?」
破壊の渦は回避したが飛礫により手傷を負った牛頭の中位悪魔が周囲を見渡し生き残った者達へ声をかける。
「…生き残りは中位悪魔が10人だけだ。…だが全員飛礫による傷を負っている。」
「たったの10人だとぉ!?100以上は居たのだぞ!――糞がぁ!!こんな馬鹿な事があってたまるか!全員、回復魔法をかけて早く治療しやがれ!遠距離戦では勝ち目が無いぞ!ここからは油断せずに接近戦を全員で仕掛けてあの糞餓鬼を仕留めるぞ!!」
仲間の報告に驚愕を受けたが即座に気持ちを切り替えて全員を鼓舞し戦闘態勢を取る。
「クフフフフ♪接近戦ならば勝てるじゃと?――面白いのう、ならば来るが良い。じゃが、もう何をしてもお主らに勝ち目など無いのじゃがな。――はぁ♡それにしても体が熱いのじゃ♪」
砂塵の中からアスモが姿を現し恍惚の表情を浮かべながら悪魔達へと歩を進める。
「舐めるな糞餓鬼がぁ!!お前ら一斉に掛かれ!!」
牛頭の中位悪魔が号令をかけ真っ先にアスモに向かって突進した。それに呼応するかのように全員がアスモに仕掛ける。
「ふん!」
「――っぶべるぅあぁ!?」
アスモはその場から微動だにする事無く突進して来る牛頭の中位悪魔を迎え撃つ。そしてタイミング良く手を振り下ろして地面に叩き付けた。たったの一撃で牛頭の中位悪魔の肉体は弾け飛び地面に鮮血の花を咲かせる。
その瞬間アスモに向かって来ていた全ての中位悪魔達が一斉に動きを止めて後ずさった。全員が恐怖に顔を引き攣らせ目の前の美少女に視線を向ける。
「たった一撃でだと…化物か…」
「ありえねえ、一体何なんだこの餓鬼は…」
「クフフフ、やはり一気にレベルが10以上も上がると力の加減が難しいのう♪身体の火照りも収まって来たし、この後の戦いの事もある故、準備体操をしておかねばならんのじゃ。――ん?どうしたのじゃ、掛かって来ぬのか?お主らをここから生かして返すつもりは無いから泣こうが喚こうが意味は無いのじゃぞ。ならばせめて戦士としての矜持でも見せてみる気は無いのかのう?」
アスモは嬉々とした表情を浮かべながら中位悪魔達へ死刑宣告とも言える言葉を告げる。
「ひいぃ!こんなの勝てる訳ねえ!」
犬顔の中位悪魔がアスモが入って来た通路の方へと逃げ出した。――だが、一瞬にして回り込まれてしまう。
「た、助けてくださいぃ…俺は命令でここに居ただけなんです。大人しく魔界に帰りますからどうか、どうか…」
犬顔の中位悪魔は土下座をしアスモに慈悲を乞う。
「それは無理じゃな。第一、主らの王である糞野郎が許す訳が無いじゃろ。逃げ帰ったら主の一族郎党が奴の餌食になるに決まっておるではないか。まあ、ここで妾の経験値となる事を光栄に思って死ぬが良い。――そう言えば技能のレベルも上げておくのを忘れておったのじゃ。先に謝っておくが力の加減は出来んから勘弁するが良い――職能「狂戦士」発動。技能LV1「猛獣」行使。」
アスモが「狂戦士」による肉体強化を行う。すると四肢の筋肉が少し肥大し身体から白い闘気のようなものが立ち込めて来た。そして金色の瞳の瞳孔が獣の様に鋭くなっていく。
そしてアスモは足元で土下座をしていた犬顔の中位悪魔の頭を無造作に踏み拉く。その威力により轟音と震動が発生し鍾乳洞が少し揺れる。そして犬顔の中位悪魔の上半身は弾け飛び絶命の声すら上げる事無く事切れ踏み抜かれた地面には巨大なクレーターが形成された。
「クフフ、またレベルが上がったのじゃ♪それにしても軽く踏んだだけでこの威力とは中々の職能じゃな。――さてと、少しは妾を楽しませてみよ。では行くぞ!」
圧倒的な戦力を持つ捕食者の前に怯える草食獣達に向かって血に飢えた猛獣が襲い掛かった――




