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第29話 魔神王誘拐事件 その④人質確保

 王都アルアスの東にある港の倉庫街にアスモを乗せた馬車が到着した―


「そろそろアジトに着くぞ。眼鏡とお守りの準備をして下さいね旦那、あとお前らも早くしろよ。」

 馭者をしているパウロがスティング達に何かを準備するように伝えている。

「ああ、もう準備している。」

「あいよ。」

「了解。」

 スティング達はそう言ってフレームに魔法刻印ルーンを刻んである眼鏡と水晶のような鉱石で出来た首飾りをかけた。


 あれは魔法具マジックアイテムか?

 刻まれた魔法刻印ルーンとあの水晶?からして結界を抜ける為の道具と見た。多分アジトに入る為の道具なのじゃろうが、それにしても何と滑稽な…屑共の阿保面に拍車がかかっておるな。

 もうすぐ奴らのアジトに着くか…着いた途端に皆殺しにしてやろうと思ったが、本来の仕事である貴族の娘とクレアを確保してからにしておこう。

 取り敢えず今の妾に必要なのは金と名声じゃ、この屑共にはその為の贄になって貰うとしよう。

 特にこのスティングと言う男は使える。こ奴だけは死体の原型を留めておくとしよう。


 アスモは馬車の中でスティング達の様子を見ながらそんな事を考えていた。


「着きましたぜ。旦那達!」


「おう、お前ら降りるぞ、ガキを下ろせ。あとガキには首飾りだけ付けておけ。」


「へい、兄貴。おい早く降りやがれガキ!それからこれを付けるから動くなよ。」

 スティングの命令でハンスはアスモの鎖を引いて馬車から強引に降ろした。そしてアスモの首に首飾りを付けた。

「…ふぅ。」

 アスモは無言でため息を吐いた。


 我慢、我慢、我慢…いや、やっぱり殺す、ぶち殺す、いや、今は駄目じゃ、…金、金、プリン!プリン!そうじゃプリンじゃ!


 アスモは心の中で怒りを抑えようと己の欲する物欲の源を思い浮かべて冷静さを保とうとしていた。


「さてと、合図をするか。」

 馬車を止めたパウロが手に持った小さな笛を吹く。音は全く鳴らないがこれも魔法具マジックアイテムなのであろう。すると倉庫の門が開いて屈強な肉体をした2人の男が出迎えた。やはりこの2人も眼鏡と首飾りをしていた。そして片耳に変わった耳飾りをしている。

 どうやらこの笛は到着の合図を鳴らす為の道具のようだ。多分、犬笛の様な特殊な波長を発生させる仕様になっているのだろう。その波長を2人の男が付けている耳飾りが合図として捉える様になっているのであろう。


「お帰りなさい。スティングの旦那達、もう皆集まってますぜ。―ほー、そいつが淫魔サキュバスのガキか?パウロお前、さっきのダークエルフといい今日は最高についてる日じゃねえか!ボーナスもたんまり貰えるんだろうな。羨ましい限りだぜ。」


「へへへ、まさに人生最高の日・・・・・・だぜ。ダークエルフはあのお方が直接買い取ってくれるらしいしそれだけで褒美に金貨50枚貰えるらしい。それにコイツと子爵家のガキの2つの目玉商品に他のガキ共をオークションにかけた売値の5%のボーナスまで貰えるんだからな。当分遊んで暮らせるぜ。もう死んでも良い・・・・・・ぐらいだ!」

 パウロは手に入るであろう莫大な報酬の事を考えて顔を綻ばせている。

 だが、それは手に入る事は無い夢で終わるのだが…


「…‥」

 アスモは倉庫の周りを見回していた。その様子をパウロ達がニヤニヤと笑い見ていた。

「コイツ驚いてやがるな。」


「まあ、そりゃここに来た奴らは今のを見たらびっくりするだろ。何せお前ら2人が行き止まりの壁をすり抜けて出て来たんだからな。」


「確かにこの眼鏡が無きゃ、ここは巨大な塀にしか見えないからな。しかもこの首飾りが無ければ出入りも出来ない作りだ。一度入ったらこれが無きゃ逃げる事も出来ないからな。」


 どうやら彼らの言う様にこの魔法具マジックアイテムである眼鏡を付けていないとこの倉庫は只の巨大な塀に見えるらしい。だが、アスモには通用しない。彼女にははっきりと倉庫の全容が見えているのだ。


 ここがこ奴らのアジトか‥ふむ、結界に色々細工をしているようじゃな。

 倉庫の壁全体に巨大な魔法刻印ルーンを書き込んで幻術を発生させておるな。

 そしてこ奴らの言う様に魔法具マジックアイテムの眼鏡を付けておらん他者には塀に見える様に視覚操作をしておるのじゃな。

 それに倉庫の屋根に数本立てられておる金属柱が「千里眼クレアボヤンス」等の感知魔法を阻害しているのじゃろう。これは妾の予想通りであったな。

 こんな結界なんぞ妾には無意味なのは当たり前じゃが、この程度の細工では人間には通用しても魔神デヴィルであれば下位ランクであっても簡単に見破られる位の児戯じゃな。

 さて、確かこの水晶が無ければ入ったら出られない・・・・・・・・・とか言っておったの。

 良い事を思いついたぞ。ククク…


 アスモは何かを企み心の中でほくそ笑んだ。



「―取り敢えずここに長居する訳には行かねえから人目の無い内に中に入ろうぜ。」

 そう言って誘拐犯達はアジト内へと移動した。

 とうとう魔王アスモを自分達のアジトへ招き入れてしまったのだ。



 ▼

「おらっ、早くこっちに来いよ。お友達に会わせてやるからなアーちゃん。・・・・・

 パウロがアスモを挑発するように話しかけてきた。

「おい、あまり調子に乗ると怪我では済まなくなるぞ。そいつが本気で暴れたらお前なんぞ簡単に殺されるぞ。一応、俺が居るから抵抗しても無駄と見て大人しくしているだけで実力はC級以上の猛者だぞ。」

 パウロはスティングの忠告に応じ即座にアスモから距離を取った。

「―っと、そうでしたね。ヘヘヘ…すいません旦那。でもコイツの落ち着いた面を見てると少し脅してやろうかと思ってしまうんですよ。それに昨日の事と言いコイツの態度が気に入らなくてね。」


「確かに落ち着いているな。ふむ、やけくそになって暴れられては困るしな。―おい、ラットお前ガキに「麻痺パライザー」をかけろ。但し、後遺症が残らない程度にな。」

 スティングはラットにアスモへ状態異常系魔法をかけて大人しくさせるように指示を出して先に進んで行った。

「了解だぜ兄貴、じゃあ行くぜ――「麻痺パライザー」!」

 ラットが魔法を詠唱しアスモへ向かって「麻痺パライザー」を発動させた。

 ラットの手から放たれた光がパチパチと音を立ててアスモの全身を取り囲むと電気ショックに似た光が全身を駆け巡った。

「これで良し…ん?」

 ラットはアスモを見る。

「…ん?」

 アスモは何かしたのか?と言う顔でラットを見る。

 そして2人は同時に首を傾げた。

「馬鹿な、効いてないだと!」

 ラットは状況をやっと理解し驚愕していた。

「馬鹿かお前は、コイツはお前よりも実力が上だと言っただろうが!後遺症が残らない程度とは言ったが、威力を抑え過ぎたら意味が無いだろ。もう少し威力を上げて試してみろ。」


「わかったよ兄貴。でもさっきのは全開に近い威力で放ったはずだが…まあいいかもう一度行くぞ―」

 ラットはアスモを見て訝しげに考えながらも再度魔法を放とうと詠唱を始めた。


 しもうた、こ奴はさっき妾に「麻痺パライザー」をかけて動きを奪うつもりじゃったんじゃな。

 何をされたか判らなかった故に対応出来なんだではないか。

 しかし、麻痺とはどういう演技をすればいいのか?拷問で電撃刑を与えてやった時の者達の様な真似をすればいいのか?妾には状態異常系の魔法は一切効かんからよう判らんのう…


 アスモは真剣に悩んでいた。麻痺どころか毒、催眠、幻惑等の全ての状態異常を受け付けない職能スキルを持つ為、どのような対応をしていいかわからないのだ。

 今までの人生で状態異常と言うものを経験したのは3万6千年以上の人生の中で2度・・のみ。

 それは先日の大失態による史上最弱の魔神・・・・・・・への転身と史上最強の魔神・・・・・・・に半殺しされた時に経験した恐慌パニック状態のみであった。


 そんな事を考えていた矢先にラットから魔法が放たれる―


「――「麻痺パライザー」!」


 よしっ!今度こそ上手く演じるのじゃ。


 再度ラットの手から放たれた「麻痺パライザー」の光がアスモの全身を駆け巡った。

「ぐわあああ!痺れたのじゃ!うう…」

 少し棒読みであったがアスモは痺れたふりをして地面に倒れた。

「へへ、やっと効いたか。―兄貴、今度は上手く効きましたぜ!」

 ラットはアスモの大根役者とも言える芝居に騙された様で全く気にする事無く、魔法が効いた事を喜んでいた。

「そうか、じゃあ早く運んで来いよ。」

 先を歩くスティングがアスモを運ぶように指示を出した。

「了解でさ!」

 ラットはひょいとアスモを担ぎ上げてスティング達の後を追った。


 ▼

 スティング達が倉庫の奥の監禁部屋にアスモを運ぼうとしていた時に手前のドアがガチャリと開いて2メートルを軽く超える上半身裸の厳つい巨体の男がズルズルと何かを引き摺りながら出てきた。

「おう、お前ら早かったな。―で目的の物は手に入ったのか?」

 下品な笑いを浮かべながら男が話しかけてきた。

「…お前、商品に手を付けたのか―」

 スティングが男に向かって構えを取った。

 どうやら男が引き摺っていたを見て一気に機嫌が悪くなったようだ。

 そのは裸の女であった。全身が痣や傷だらけで所々から血が滴っていた。口からも吐血していたようだ。多分内臓も損傷していたのであろう。

 だが、もう既に動かないそれが治療など必要無いであろう事はその場に居た全員が理解していた。


「おいおい、待てよこいつは違うぜ。良く見ろよ、ガキじゃなく大人の女だろ。港の近くに居た娼婦を攫ってきたんだよ。壊れちまったんでゴミ捨て場に処分しに行こうと思ってな。」

 男はスティングから発せられる殺気に焦る事も無く対応している。

「馬鹿かお前は…大体、これで何人目だ?お前の下らない趣味のせいでゴミ捨て場が死体安置所モルグに変わっちまってるじゃねーか。女を犯しながら殺すのが楽しいだと?この変態野郎が。…流石にこれだけ娼婦が消えると治安部隊に怪しまれるだろうが。」


「そこん所は問題無いって。俺が攫ってきた娼婦共は戦時中に王都まで逃げて来た奴らや移住してきた奴らしか手を付けてねえよ。身元がはっきりしない娼婦が消えた所で誰も気にしないだろ。それに俺達は王都のガキ共を攫ってるんだぜ。しかも貴族のガキまでな。どう考えてもこっちの方が問題だろ、それに俺はガキを犯すのは趣味じゃねえよ。」

 男は悪びれる事無く悪態をつき己の非道を正当化しようとしていた。

「何がガキにはだ。手前は昨日逃げようとした貴族のガキの従者を半殺しにしただろうが!亜人、それも猫人族キャットピープルのガキは高く売れるんだぞ。しかもあれじゃもう治療も出来ねえだろうが。」


「ありゃ、逃げようとしたガキが悪いんだぜ。躾のつもりで遊んでやったらああなっただけだって。―それにその所為で自分の取り分が減る事に納得したんだからもう一々掘り返すなよスティングさんよ・・・・・・・・。」

 男はスティングの言葉を大人しく聞いていたが鬱陶しくなった様で逆にスティングを挑発するような態度に出た。

「あぁ!?喧嘩売ってんのか手前は?」

 スティングは刀に手をかけた。

「そんな事は言ってないだろ。一々切れるなよスティングさん・・・・・・・。」

 スティングと男が睨み合い、2人から発生する闘気オーラによって周りの空気が一気に変わって行く。

「ちょ、ちょ、ちょ、待った!待って下さい!スティングの旦那!それにボルツの旦那も!ボルツの旦那も本当にやり合ったらスティングの旦那に勝てないのは判ってる筈でしょ。ボルツの旦那には冗談かも知れねえがスティングの旦那には冗談は通じないんですよ。だから挑発するのはよして下さい。それにこんな所で2人に暴れられたら倉庫が壊れちまうかもしれねえ。そんな事になったらあの方に確実に殺されますよ。」

 パウロが一触即発の2人の間に割って入り必死に止める。


 ふざけんじゃねーぞ、この脳筋共が!

 お前らの所為でおれのボーナスが手に入らなかったらどうするんだ!

 特にこの半裸の脳筋ゴリラは昨日大事な商品をぶっ壊しやがったからな。これ以上余計な真似はさせてたまるか。

 手前らA級冒険者と違って資格すら持ってない俺には大金を稼ぐチャンスなんか存在しないんだよ。

 この仕事を最後に犯罪から足を洗って昔から夢だった店を持つんだ。

 俺の人生設計をこんな所で狂わされてたまるかよ。


 パウロは己の夢の為に必死の様だ。だがその夢は絶対に叶う事は無かった。


「ほら、ボルツの旦那。スティングの旦那に謝って下さいよ。こんな事で怪我しても一銭の得にもなりませんよ。」


「…確かにお前の言う通りだな。ちょっと冗談が過ぎたようだスティング、済まなかったな。」

 ボルツはパウロの説得に応じスティングに謝った。

「ちっ、仕方ない。これで終わりにするか。ボルツ、その死体はちゃんと捨てて来いよ。―おいラット、ガキを部屋に放り込んだら中央倉庫まで来いよ。おい、行くぞお前ら。」

 スティングはそう言い放ちその場を後にする。

「分かったって。ちゃんと始末してくるぜ。―おっ!そのガキが例の淫魔サキュバスか?こいつは気絶させてるのか?しかも手枷まで着けてよ。」

 ボルツがラットの背負っているアスモをまじまじと見た。

「ええ、ちょっと「麻痺パライザー」で眠らせたんですよ。それにこのガキが付けてるのはF級のプレートですがスティングの旦那の見立てではC級以上の力があるそうですよ。―それからコイツにはちょっかいはかけないで下さいよ。オークションの目玉商品として売り出すそうですから。」

 ラットは念を押す様にボルツを注意した。

「分かってるって。さっきも言っただろ、ガキには興味無いってな。―C級以上か…コイツが逃げたら・・・・・・・・面白いかもな…」

 ボルツは物騒な事を呟きながら娼婦の死体を引き摺って行った。

 去って行くボルツの能力ステータスを気絶した振りをしながらアスモは「鑑定眼(スキャニング)」で確認していた。


 名前 ボルツ・ドレアム

 種族 人間

 職業ジョブ A級冒険者

 レベル 42

 職能スキル 「武闘師範マスター・モンク


 ククク、安心するがよい。後でちゃんと期待に応えて面白い事・・・・をしてやるからの。

 ふむ、あ奴もA級冒険者か…まあ実力はもう一人よりも格下か。所詮、雑魚じゃな。

 それにしてもA級の7人中2人が犯罪者とは…いや、他の奴らも会った事が無いから安心とは分からんの。

 …この国は本当に大丈夫なのか?


 どうでも良い筈の公国の将来に不安を感じながらアスモは目的の人質達の居る監禁部屋に運ばれて行った―



 ▼

 人質達が監禁されている部屋の重厚で頑丈そうな鋼鉄の扉の鍵が開けられ外から扉が開かれた。

「おい、ガキ共、新しいお友達が来たぜ。仲良くしろよ。ホラっ!」

 ラットはそう言い放つと抱えていたアスモを地面に降ろした。

「何度も言ってるがこの部屋で泣こうが喚こうが外には一切聞こえない様に結界が張ってある。それに逃げようとしたら昨日のガキの様な目に逢うからな。良く覚えておけよ。―ん?何だまだその猫人族キャットピープルのガキを看病しているのか?そいつは無駄だぜ、助けられるなら俺たちが治療しているからな。そいつは神殿にでも行って高位神官ハイ・プリースト達に儀式を行って治療してもらうしか助ける方法が無いぜ。まあ、諦めるんだな。」

 そう言ってラットは部屋を出て行き外から鋼鉄の扉の鍵を閉めた。

 怯えていた人質の少女達はラットが部屋を出て行った後すぐにアスモの周りに集まって心配そうに様子を見ていた。

「この子も攫われたのね。」

「…眠ってるの?怪我してるの?」

「鎖と手枷‥可愛そうに。」

 少女達は手枷と鎖をを嵌められている自分達よりも酷い境遇のアスモを憐みの眼で見ていた。

 そんな中一人の少女が声を上げる。銀髪に銀の瞳のダークエルフの少女、アスモより先にパウロに騙されて攫われたクレアであった。

「…アーちゃん?っアーちゃんだ!」

 部屋の隅の方で何かをしていたクレアがアスモを見つけて必死に駆け寄ってきた。

「アーちゃん!嫌だ、嫌だ!死んじゃ嫌だよ!うぅ…うわぁーん!やーだー!!」

 クレアが泣きながら寝たふりをしているアスモの身体を大きく揺さぶる―


「―おい、起きとるから放さんか、クレアよ。妾は大丈―」

「―アーちゃん!良かったー!!うわぁん…」

 アスモの声に反応したクレアが即座に揺さぶるのを止めてアスモに抱きつき更に泣き出した。


 ▼

「…どうやらやっと泣き止んだようじゃな。ふぅ、疲れるのじゃ。」

 クレアが泣き止むまでの10分近くの間、アスモはクレアに抱き着かれその上耳元で泣き喚かれて内心うんざりしていた。

「ごめんなさい…アーちゃん。」

 クレアは反省しているようだ。

「反省か‥それは泣き喚いた事では無く勝手に出歩いて攫われた事を謝っているのであろうな?」


「それもあるけど違うの…クレアの所為でアーちゃんも悪い人達に誘拐されたんだよね?あの叔父さんクレアを人質にしてアーちゃんを捕まえるって言ってたから…だからアーちゃんここに来たんだよね?…クレアが悪いの。ホントにごめんなさい。」

 クレアはまた泣き出しそうな顔をしている。

「愚か者め…別に主の所為では無いのじゃ、妾は仕事でここに来たのじゃ。」


「仕事?」


「そうじゃ、今朝早速試験を受けて合格してやったのじゃ、まあ妾にとっては冒険者の試験なんぞ簡単であったからの。楽勝であったわ。ふふん、これを見よ!」

 アスモはそう言って首にぶら下げた冒険者証明であるF級のアイアンのプレートをクレアに見せびらかした。

「うわぁ、アーちゃん冒険者になれたの!スゴーイ!」

 クレアは尊敬の眼差しでアスモを見る。

「じゃから冒険者である妾はここへ潜入捜査に来たのじゃ。攫われたのでは無く囮としてわざと捕まったのじゃ。攫われた子爵家の令嬢でエレナとか言うガキを探しに来たのじゃ。お主が攫われたのはここに来る少し前に知ったから一緒に助ける予定であったがもう安心するが良い。妾がここに来た以上、事件は解決したも同然じゃ!ついでにここに居る他の者達助けてやろうではないか!ワハハハハ!!」

 アスモは自慢げにクレアや人質達にそう告げて大声で高らかに笑った。



「―ちょっと、クレア!あんたの友達どう見ても大丈夫そうじゃないの、早くこっちに来て治癒魔法をかけてよ!フィーが死んじゃうよ!」

 クレアが居た部屋の隅から声が聞こえてきた。少女達が数人集まって何かをしている様だ。

「誰じゃ?」


「アーちゃんが捜してたエレナお姉ちゃんだよ。」


「何、本当か?」

 クレアの言葉を聞き即座にアスモは声の主の方へ視線を移した。

 そこには依頼書に書かれていた通り年齢12歳位の、身長は150センチ、体型はスレンダー型、肌は白人種、金色の髪に青い瞳が特徴の可愛らしい女の子が心配そうに瀕死の猫人族キャットピープルの女の子の手を握って励ましの声をかけていた。


 あの容姿…間違いあるまい。良しっ!子爵家令嬢確保じゃ!!

 これで仕事は無事に終わったのじゃ。金貨20枚は妾の物じゃ、クフフ。

 ならばもう何も遠慮する事などあるまいて…

 さて、屑共を殺すとするか。確かもう全員揃ったとか言っていたな。

 では今から本当の恐怖と絶望を味わわせてやるとしよう…


闇の監獄ドゥンケル・ゲフィングニス!」

 アスモが手枷で繋がれた両手を天井ににかざし呪文を唱えた。

 すると魔力の波動がアスモを中心に広がって行き、倉庫の外まで吹き抜けて行った。


 倉庫内に居る者達は確認する事は出来ないが、倉庫の外にある結界の内側にアスモがさらに黒い檻の様な結界を張ったのだ。倉庫内の為、魔道具マジックアイテムの無い者には外からも見えないのだが…

 スティング達A級冒険者が、いや下手な竜種ドラゴンでも打ち破る事が出来ない闇属性の高位魔法「闇の監獄ドゥンケル・ゲフィングニス」で倉庫を囲ってしまったのだ。


「これで魔道具マジックアイテムがあっても逃げる事すら出来ぬ様に退路を絶ったのじゃ、もう誰も逃げられぬ。―さあ、狩りの始まりじゃ!」

 攫った筈の商品・・魔王・・へと変貌し狩りを始めようとしていた―


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