第27話 冒険者講習と初仕事
「ではアスモ様、私は登録の準備をしてきますのでこちらに掛けてお待ち下さい。」
セレナがギルド受付の応接室にアスモを案内して自身は準備の為、部屋を出ていく。
「わかったのじゃ。さてと、よっと。」
よしよし、予定通り簡単に冒険者になる事が出来たの。
まあ妾にとっては簡単すぎて話にならなかったがの。
しかし実技試験はもっと骨のある相手を用意出来んかったのか?あれでは消化不良ではないか。
まあ、早う登録を終えて怪物討伐の仕事でも受けるとするかの。
そんな事を考えながらアスモはソファーに腰掛け寛いでいた―
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「ソアラ先輩、ご苦労様です!もう少ししたらカレラ先輩が戻って来ると思いますのでもう少し待っていてもらえますか?私は新規冒険者の登録手続きがあるので今は手が離せないんですよ。」
「え!?それじゃ、あの子実技も合格したの?…本当に史上最年少の冒険者になったんだ。凄いじゃない!」
ソアラはセレナからアスモの合格を聞き、驚愕すると共に感心していた。
「はい!私も感動しました。あんな小さな女の子が合格するなんて奇跡ですよね!」
「ほー、あの嬢ちゃん合格したのかい?」
楽しそうに話をしている2人に割って入るように男が話しかけてきた。
この男の名はハンス・テックスと言うD級冒険者である。アスモがギルドを訪れた時にロビーで酒を飲んでいた3人組の1人であった。
「あ、すいません。受付ですか?では―」
「いいや、君達がさっきの嬢ちゃんが合格したとか言ってたから気になってね…で、あの子の実力はどんなものだったんだい?強かったのか?」
ハンスはアスモの強さについてセレナに質問した。
「アスモ様の強さですか?そうですね…泥人形相手にギリギリでしたが何とか魔法で倒しましたよ!」
「ふーん、ギリギリね…あと魔法はどうだったのかな?威力は結構あった?」
「魔法の威力ですか?カレラ先輩は多分使ったのは「風圧波」だと言ってましたけど、威力は通常よりも劣っているとか言ってましたね。-でも何でそんな事聞くんですか?」
セレナはハンスの質問を正直にスラスラと答えてしまった。だがしつこいまでの詮索に少し疑問に思ったようだ。
「いや、最年少冒険者だっていうから相当凄いお嬢ちゃんなのかと思ってさ、俺は15年もやってるがいまだにD級だからな。もしかしたら俺なんかすぐに抜かれちまうかもしれないだろ?まあ、危機感を感じたって訳さ。」
ハンスは嫌みたらしく笑いそれとなく理由をつけてセレナ達に返答したが、本当の理由は違っていた。
アスモの実力が泥人形を倒すのがやっとで魔法に関しても大した実力が無いと言う事がセレナの説明を聞き理解出来たので嬉しくなり笑っていたのだ。この獲物は警戒などする必要がないと。
しかし、ハンスはこの後に後悔する事になる。この時話を聞くのがセレナではなくカレラからであったなら少しは警戒、いや自分だけでもこの仕事を回避する事が出来たかもしれないと。
しかし、カレラもアスモの実力を完全に見抜いてはいなかったので意味は無かったかも知れないが…
「ヘヘヘ、情報ありがとうなセレナちゃん。」
そう言ってハンスはロビーで酒を飲んでいる2人の連れのもとに戻っていった。
「本当に何だったんでしょうね?あの人…」
「さあ?あの3人はいつもロビーで酒ばかり飲んでるからね。ここ最近は特に仕事も受けないくせにほぼ毎日ここに入り浸ってるからね。いい加減、規定内の仕事をしないと資格を剥奪されるんじゃないかな?」
ソアラはセレナの質問にそう答えた。どうやらあの3人に関して良い印象を持っていないようだ。
「そうですね。確かにここ最近ギルドにいますね。たまに出入りはしているようですが…あっ、いけない!早く登録手続きをしないといけなかった。えーと、申請用紙と記録の石板は…あった。じゃあソアラ先輩、後はお願いします!」
そう言ってセレナはアスモが待つ応接室まで急いで向かった-
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「すいません、お待たせしました。では今からアスモ様の冒険者登録手続きを行います。まずはこの申請用紙の太枠の所のみご記入下さい。」
セレナはそう言って用紙をアスモに渡した。
「ふむ、やっとか。では記入をするか――――のう、この職能やレベルの欄は書かなくてもよいのか?」
「はい、そちらは後程、こちらの鑑定士が確認してから記入いたしますので書かないようにして下さい。」
「鑑定士が確認じゃと?では妾は午後までここで待たねばいかんのか?それは嫌じゃぞ、妾は早う仕事がしたいのじゃ!」
アスモはセレナに不満をぶつける。
「いいえ、大丈夫です。登録手続きさえ済めば、その直後から依頼を受ける事が出来ますよ。職能やレベルに関しては今日より1週間以内にもう一度ギルドを訪れてもらいアスモ様の能力をこちらの鑑定士が鑑定眼で確認させて頂きます。」
「そうか、ならば良い。では記入は終わったから早う手続きをしてくれんか。」
アスモはその言葉に安堵し申請用紙をセレナに渡した。
「では確認します。――――――はい、問題ありません。では次はこの記録の石板に右手を載せて下さい。」
セレナは申請用紙と同じぐらいの大きさの記録の石板をアスモの前に置いた。
「これは魔道具の様じゃな、何か細工でもあるのか?ふむ、これに手をか…」
そう呟いてアスモは記録の石板の上に右手を載せると右手が記録の石板に沈み込み、記録の石板が輝き出した。
「何じゃ!これは!?」
多分何か仕掛けがあるとは思っていたが、流石のアスモもこれには少し驚いた。
この記録の石板については院長室で調べた魔道具に関する書物にも載っていなかった物であったのだ。
「動いてはいけません。登録が終わるまでそのまま手を置いておいて下さい。」
セレナはそう言ってアスモに注意をする。アスモは注意に応じ右手を石板に置いたままにした。
すると記録の石板はアスモの手形を模り、更に記録の石板の中央にあるプレートの様な物に魔術刻印を刻んでいく。
数十秒が経過し、記録の石板から光が消えた。どうやら登録は完了したようだ。
「はい、登録は完了しました。この記録の石板に記録されたアスモ様に関する個人情報はギルドにて厳重に保管いたしますのでご安心下さい。ではこちらのプレートをお持ち下さい。これが冒険者証明になりますので紛失しないようにお願いします。」
セレナは記録の石板から魔術刻印の刻まれた鋼のプレートを外しアスモに手渡した。
「これが冒険者の証明証か。」
アスモはプレートを手に取り観察している。確かにプレートの中央に「アスモ・Fランク」と刻まれていた。
「このプレートは冒険者の身分証明の代わりでもあり、登録された本人以外の使用及び複製や偽造が出来ない様になっております。」
「本人以外は使えないとは?」
「では試しにプレートを手に持って名前とランクを言って貰えますか?」
「承知した。冒険者アスモ、ランクはF級じゃ。―おっ!?」
アスモがプレートを手に持ち叫ぶとプレートが光りを放ち輝いた。
「このように登録された本人が手に取り名前を名乗ると光る仕様になっております。偽造品や盗品を使用した場合はこのような効果はありませんので一目瞭然となっております。」
「成程、なかなか面白い細工がしてあるの。やはり魔道具と言うのは便利な物じゃな。」
アスモは素直に感心している。
「これで登録は完了しましたが今から冒険者の業務内容や禁止事項等について説明の講習をさせて頂きます。」
「説明書みたいなものがあれば後で読んでおくからもう行ってもよいか?妾は早う仕事をしたいのじゃ!」
「それは出来ません。規則ですのでしっかりと講習を聞いていただきます。これが終わらない限りは冒険者として依頼を受ける事は出来ませんが宜しいでしょうか?」
セレナはきっぱりとアスモにそう言い放つ。
「むうっ…仕方あるまい。説明を受けるのじゃ。」
アスモは面倒くさそうにしながらも了承するしかなかった。
「ご了承いただきありがとうございます。では改めまして私はセレナ・プラウドと申します。今回アスモ様に冒険者についての業務内容と禁止事項についての講習を担当させて頂きますのでよろしくお願いします。」
「うむ、よろしくの。」
セレナはアスモに一礼した後に対面に座りアスモにマニュアルを渡して講習を始めた―
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「―以上が冒険者の業務内容等についての説明の講習です。」
セレナからの説明は30分程で終了した―
…ふむ、ある程度の事は事前にマルス達から聞いておった通りじゃったな。
まずは冒険者の格付けじゃが、ランクによりプレートが変わって行くと言う事じゃ。
S級は神の合金レベルは最低でも80~
A級は金剛鉄鉱レベルは大体40~
B級は銀魔鋼レベルは大体30~
C級は金レベルは大体25~
D級は銀レベルは大体20~
E級は銅レベルは大体15~
F級は鋼レベルは大体10~
となっておるそうじゃ。新人冒険者である妾はF級でプレートは鋼じゃな。
それからランクアップに関しては新人である妾は研修期間として3か月以内にF~E級のクエストを3回クリアすればE級に昇格するそうじゃな。これは楽勝じゃな。
E級からは同じクラスの依頼を10以上こなしてからギルドで昇格試験対象となる上位ランクの依頼を達成する事でランクアップしていくそうじゃ。
これを考えるとA級まで最低でも43の依頼をこなさんといかんと言うのは聊か面倒じゃが、特例として依頼による功績や実力さえ認められれば一気にランクアップも可能と言う事もあるそうじゃ。
前例としてE級からB級にクラスアップした奴もこのアルアス本部の冒険者におるらしい。そ奴は今はA級らしい。
ちなみにS級冒険者と言うのはレベルだけではなく偉業や伝説とも言える功績を立てるのが最低条件になるらしい。
それからS級資格取得の最低レベルが80以上と言うのは今までの最速記録がレベル84だったと言うだけで条件を満たさなければレベル100になってもなる事は出来ないらしいの。
まさに人外や英雄と呼ばれる次元の強さらしい。
この北のアルガルズ大陸には現在3人のみ居るそうじゃ。全員がレベル100以上で現在の妾よりも強者になるそうじゃ。その強さも単体で竜種を倒す事が出来る奴らばかりらしいし、いずれ戦ってみるのが楽しみで仕方が無いわ。
ちなみにロマリア公国には居ないそうじゃ。この国にはA級が7人おるらしいが、全員主殿以下のレベルらしいから大した事は無いのじゃろう。
妾はレベル68じゃ、確かにS級には届いてはおらん。まあ今は仕方あるまい、じゃがその内、A級どころか絶対にS級になってみせるのじゃ。
次は依頼についての説明じゃったのじゃが、これは妾の失態であったの。
…試験の前に買い食いをしてしもうたのが悔やまれるのじゃ。
依頼の基本が受注となっておって1つの依頼に対して大体3パーティーまで受け付ける様になっているそうじゃ。ちなみに受注と達成は早い者勝ちらしい。
これは1つの依頼に多数の希望者が集中しない様に受注可能件数が決まっておるらしい。
…そしてこれが問題なのじゃが、依頼の受注時に契約金として報酬の10%をギルドに入金する必要があるらしい。これはいたずらや嫌がらせなどを防止するために導入されているそうじゃ。
これは期間内に依頼を達成するか同じ依頼の受注者が先に依頼を達成した場合はこの契約金は返金されるらしいが、依頼の放棄や期間内を過ぎた場合はキャンセル料としてギルドに強制徴収される事になるそうじゃ。
主殿がギルドで「登録をする為に必要な金」だと言っておったのはこの事であったのじゃな。勘違いも甚だしい事をしてしもうたわ。
…はぁ、阿呆な事をしてしもうたの。情けなくて泣けてくるぞ。
ちなみに依頼に関しては先の通りF級~S級までのランクに分けられておる。
依頼に関してはランクに応じた依頼のみしか受注する事が出来ないそうじゃ。下位ランクの依頼は受注可能じゃが上位ランクに関しては昇格試験時かパーティー内に上位ランクの冒険者が居れば受注可能になるのみらしいの。
例外として緊急依頼と指名依頼に関してはランクや受注人数などは関係ないらしい。緊急は達成が早い者勝ち、指名は指名されたパーティーや個人が優先される。そして何よりも契約金が必要ないと言う事が良いのじゃ。
後はさっき貰ったマニュアルに記載されておる怪物図鑑に載っておる怪物を倒して小遣いを稼ぐ事も出来るらしいから一応金が無くても仕事は出来るそうじゃが、これは依頼とは違うのでランクアップの対象にはならんらしい。
あと規定依頼件数が年間最低5回と決まっており、これを達成しないと冒険者資格は剥奪されてしまうそうじゃ。
犯罪行為も禁止されており発覚した場合は資格剥奪対象になるようじゃな。
一応セレナに聞いたところ、昨日タイミングが良い事に緊急依頼が発令されたそうじゃ。後で掲示板で確認してみるとしよう。
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「―スモ様、アスモ様。どうかしましたか?」
セレナが俯いているアスモに心配そうに話しかけた。
「ん?おお、スマンな。少し考え事をしておってな。」
「そうですか。何か質問は御座いませんか?」
「いや、大丈夫じゃ。完璧に理解できたのじゃ。そなたの説明は分りやすくて中々良かったぞ。」
「それはありがとうございます。では今から依頼を受けて頂く事が可能になりますのでご希望される場合は掲示板から希望される依頼を探して頂き受付にて受注して下さい。」
「了解じゃ。早速、依頼を探してみるとするかの。」
「はい。ではこれにて講習を終了いたします。ご苦労様でした。」
セレナはアスモに一礼し応接室のドアを開けた。
「うむ、そなたもご苦労であったの。では妾は行くとするか。」
アスモはそう言って応接室を出た―
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「ここが掲示板じゃな。何せ金が無いから選択肢は無いのじゃ。さてと…緊急依頼はと――おっ、あったのじゃ!…これか?」
緊急依頼
ユーヘイム子爵家令嬢誘拐事件
昨日、霜の月15日にユーヘイム子爵家令嬢であるエレナ嬢が何者かに誘拐された。
エレナ嬢は護衛2名と従者の亜人種2名と同行中に襲撃され攫われたものと思われる。
護衛2名はアルアス中心街外れの路地にて死体で発見。エレナ嬢と従者2名は行方不明。
現在身代金の要求は無いが、最近王都にて多数発生している子供の誘拐事件と関係しているものと思われる。
エレナ嬢の特徴は年齢12歳、身長は150センチ、体型はスレンダー型、肌は白人種、金色の髪に青い瞳が特徴の可愛らしい女の子です。当日の服装は赤色のドレスを着用。
従者の亜人種は共に猫人族の女の子が2名。特徴は12歳のシャム系と10歳のアビィ系になります。
大規模な人身売買組織が誘拐に関与している恐れがある為、ギルドでは危険度はB級以上と判断します。よって自己責任で依頼を受注して下さい。
尚、報酬は有力情報に金貨2枚、令嬢の救出に無事成功すれば金貨20枚を支払うものとする。
「なんと!金貨20枚じゃと!!一体プリンがどれだけ食えるのか…よしっこれにするのじゃ♪」
フフフ…妾は犯人に心当たりがあるからの。それにこの場にもどうやら共犯者が居るようじゃし、楽な仕事になりそうじゃ。
アスモははしゃぎながら緊急依頼の書類を手に取り受付まで向かって行った―




