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第26話 冒険者試験

 アスモはロマリア公国冒険者ギルド本部の扉を開き中に入った―


 アスモはギルド内をを見渡す。ギルドは営業が始まったばかりの為、ロビーには4,5人しかいないようだ。そしてロビーの奥に目的の受付カウンターを見つけた。

「ふむ、室内も中々の広さじゃな。あそこが受付じゃな。では行くとするか― ん?」

 アスモが受付に向かおうとしているとロビーの方から視線を感じた。

 アスモは即座に視線を向ける。

「おい――あれって――じゃないか?」

「ああ、間違いない――言ってた淫魔サキュバスだ。」

「じゃあ―――に連絡を――」

 ロビーでくつろぎ朝っぱらから酒を飲んでいる3人組がひそひそと話をしている。会話は途切れ途切れでしか聞こえないが、どうやらアスモの事を知っているような会話であった。


 何じゃあ奴らは?妾の事を知っておるような口調じゃが、よく聞き取れなかったのう。

 それに今、妾を淫魔サキュバスと言わなんだか?無礼な奴らじゃな、ぶち殺してやろうかの。

 いや、ここで下手に暴れては冒険者になれなくなるかも知れんし、今回は我慢しておこう。

 取り敢えず受付に行って試験を受けるとするかの。


 アスモは取り敢えず3人組の事は無視する事にして受付に向かって行った―



「冒険者になるための試験を受けたいのじゃが、受付はここであっておるな?」


「はい、そうですが―えっ、?一体どこから…あっ!」

 新人受付嬢のセレナが辺りを見回すが誰も居ない。声が聞こえたほうをもう一度よく見るとカウンターから見切れている小さな赤い頭を見つけた。

「えーと、お嬢ちゃんが冒険者試験を受けるの?」

 セレナはカウンターから身を乗り出し訝しげにアスモを見つめて話しかける。周りにいる2人の受付嬢達も苦笑いをしている。

 どうやら彼女達はアスモがからかいに来たのではないかと思っているようだ。

「そうじゃ、先程も言ったように妾は試験を受けに来たのじゃ。午前中であれば受付出来ると聞いておるぞ。間違いあるまい?」


「…そうなんだけど、本当にお嬢ちゃんが試験を受けるの?本当に遊びじゃないのね?」

 セレナはいまだに信じられないようだ。

「無論、遊びではないぞ。それに年齢は関係ないのじゃろ?近年、戦争や怪物モンスター共が増えて、冒険者の数が足りない状況になり広く門戸を開いておると聞いておるぞ。」


「良く知っているわね。‥でも冒険者になるには最低条件があるのは知っているのかな?」


「そんなものは知っておる!じゃから試験を受けると言っておるじゃろ、早う試験を開始してくれんか?」

 アスモは少し機嫌の悪そうに頬を膨らませて返事をする。その様子を見てセレナは「はぁ」とため息を吐き奥から試験会場の鍵を取出し、カウンターを出てアスモに近づき話しかけた。

「…わかったわ。じゃあお嬢ちゃん、こっちにいらっしゃい。まずは筆記試験をしましょう。―ごめんなさい、ちょっと受付を離れますね。」

 そう言って他の受付嬢達に告げてセレナはアスモを奥の筆記試験会場にに案内し、筆記試験の問題用紙と筆記用具を手渡した。

「取り敢えずここに座ってこの問題用紙を解いてくれるかな?制限時間は1刻、合格点数は60点以上よ。じゃあ、始め!」

 セレナは1刻用の砂時計をセットし椅子に座った。


 子供がいたずらで冷やかしに来るのはこれでもう何度目かしら?大抵の子供は受付での質問が理解出来ずに気後れして帰ってしまうんだけど、この子はちょっと違うわね。

 まあ、確かに年齢制限は無いのは間違いないし、子供だからと言って私が勝手に門前払いする訳にもいかないとは言え、こんな事が何度もあるならもう少し厳しく制限しても良いのに…

 こんな時に支配人が居れば多分、いつものように上手く言いくるめてこの子に帰ってもらっているんだろうな。今日に限って午後から出勤とか勘弁して欲しいわ。

 でもこんな子供が筆記試験を受かる訳が無いし大丈夫よね。実技試験になったら怪我じゃ済まなくなる可能性もあるし…

 でもこの子、なんだか異様に自信に満ち溢れているのは気のせいかしら?

 確か中央大陸では史上最年少の7歳で冒険者になった伝説のS級冒険者が居るとか聞いた事があるけど、まさかね‥


 そんな事をセレナが考えていた時にアスモから驚愕の言葉が発せられた。

「おい、終わったぞ、採点を頼むのじゃ。」


「―そう、終わったの…え?え?まだ5分位しか経ってないわよ!…本当に終わったの?」

 あまりにも唐突な発言にセレナは動揺を隠せなかった。

「終わったと言うておるじゃろ、こんな簡単な問題を解くなど妾には容易い事なのじゃ、早う採点してくれんか?」


「-わかったわ。では採点するわね。-名前はアスモちゃんか…ちょっと待っててね。」

 セレナはアスモから用紙を預かり採点を開始した―


 ▼

「……嘘でしょ…こんな事ってあるの?」

 採点には数分しか時間がかからなかったが、セレナは現実が受け止められず何度も答案用紙を見直していたので20分ほどの時間がかかってしまった。

 その理由はアスモの採点結果が「満点」であったからである。

 冒険者というのは一応国家資格に該当するものである。

 人材不足と言う事もあり、今は合格基準を60点以上と引き下げてはいるものの、問題の内容は冒険者に必要な知識などであるのだが、中には国立大学の試験でも出題されるレベル以上の問題もある為、今まで満点を取った者はいなかったのだ。

 それを目の前のカウンターから見切れるほどの身長しかない7,8歳ぐらいの少女が満点を取ったのだ。しかも完璧な回答で。驚くのも仕方が無い事であった。

 だがアスモにとっては簡単な事であった。3万6千年以上生きてきて培ってきた膨大な知識と孤児院や院長の書斎で見た書物を熟読しその内容は全て記憶していたのだ。

 よって今回の冒険者試験における問題は自身の膨大な知識の一部や院長室にあった書籍や図鑑に記載してあった内容の問題だった為、満点を取ることは容易かった。


「おい、採点はまだか?どこも間違ってはおらんと思うぞ。」

 アスモがセレナを催促する。自身は待つのが面倒なのか椅子にもたれて退屈そうにしていた。

「あ、はい。えーと…筆記試験は満点でした。合格です。」


「うむ、そうじゃろ。簡単じゃったからな。では次は実技か?今度はどこへ行けば良いのじゃ?まあ妾は実技試験も余裕で受かるじゃろうし、冒険者になるのは確定したようなものじゃがな。」

 アスモは当然と言ったように堂々と胸を張って頷いている。

「すぐに準備をするのでちょっと待って… いえ、お待ち下さい。」

 そう言ってセレナは急いで部屋を飛び出し、受付まで走って行った―


 ▼

「カレラ先輩、どうしましょう!」

 セレナはあわてた様子でカウンターにいる先輩受付嬢のカレラに話しかけた。

「どうしたの?そんなに慌てて、まさかあの子に何かあったの?…もしかして試験に受かったとか言わないわよね?」


「その、もしかです。しかも満点なんです!あの子、筆記試験がなんと満点だったんですよ!どうしましょう?実技受けたいって言ってるんですが、私の判断ではどうしたらいいか…」

 カレラはセレナの慌てぶりから何かあったのであろうことは予測出来たが、セレナの口から発せられたもしもの出来事を遥かに凌ぐ答えに驚愕してしまった。

「えぇ!?-貴女、今満点って言わなかった?…まさか嘘よね?」

 カレラは訝しげにセレナを見る。

「本当ですよ!ほら!」

 セレナはアスモの答案用紙をカレラに渡した。カレラは即座に答案用紙の確認を行った。



「本当だ…答えも完璧じゃないの。これはカンニングとかっていうレベルじゃなく、こちらの用意した模範回答よりわかりやすく書いているわね。いったい何者なのかしらあの子は?」

 カレラはアスモの解答用紙を見て感心していた。

「感心している場合じゃないですよ先輩!実技試験はどうしますか?いくら筆記試験が完璧でも実技は最低レベル10は必要なんですよ。もしも子供に大怪我させるような事があれば責任問題になるかも知れないじゃないですか!鑑定士アプレイザー職能スキルを持っている支配人は午後から出勤だからあの子のレベルは今確認できませんし、かと言ってあの子をこのまま放っておくと怒られそうだし…それにあの子凄い威圧感があるんですよ!怒らせたらいけないような気がしてるのであまり放置するわけにもいかないと思います。先輩、何とかなりませんか?」

 セレナは困った顔でカレラを見つめる。

「-仕方ないわね。ソアラちゃん、受付一人で大丈夫かしら?」


「うん、まだ暇だから大丈夫だよ。確かにカレラちゃんが実技試験を立ち会えば問題ないわね。…でもその子が実技もパスしちゃったらロマリア公国と言うかアルガルズ大陸で史上最年少の冒険者になるんじゃないの?」


「はは、もうソアラ先輩ったら冗談が上手い…まさかそんな事…ね?」

 セレナはもう一人の先輩であるソアラの言葉を冗談と受け止めようとしたが、もしかしたらあの子ならばとそのまさかが現実になるかもしれないと考えてしまっていた。

「じゃあ、セレナちゃん、私が一緒に立ち会うからあの子を実技試験場まで案内してくれるかしら。私は先に行って準備しておくわね。」

 カレラはそう言って先に実技試験場まで向かっていった。

「わかりました!すぐに私たちも向います。」

 セレナは急いでアスモの待つ部屋まで走って行った―


 ▼

「遅い!まだ来んのか?」

 アスモは筆記試験会場で椅子にもたれてイライラしていた。

「お待たせしました。只今より実技試験を行います。こちらへどうぞ、アスモ様。」

 セレナはアスモを先導し実技試験場に案内した。



「-ここが実技試験場です。」

 セレナはアスモをギルドの隣の建物にある円形の小型闘技場に案内した。

「ここが試験会場か。で、妾は何と戦うのじゃ?さっきから待たされて退屈しておったのじゃ、早うしてくれ!」

 アスモはセレナを催促する。久々の戦闘行為に少し張り切っているようだ。

「規則で説明が先になりますので少しお待ちください。-先ずは実技試験において必要最低レベルは10以上になります。これは問題ありませんか?」


「レベルに問題など無いのじゃ、お主らのところには鑑定士アプレイザーはおらんのか?」


「申し訳ありません。鑑定士アプレイザー職能スキルがある者が1人は休みでもう1人が午後からの出勤となっております。尚、先程のレベルに関してのこちらの質問ですが、問題が無いと言う事で了解致しました。では今からアスモ様にはこの闘技場でこちらの用意する「泥人形マッド・ゴーレム」と戦ってもらうことになります。泥人形マッド・ゴーレムのレベルは大体8~9ぐらいと思っておいて下さい。闘技場内には結界がありますので存分に魔法や武器を使ってもらっても大丈夫です。武器はあちらにありますのでお好きな物をお使い下さい。尚、あちらにある全ての武器は鋼鉄製となっております。」

 セレナが丁寧にアスモに試験について説明した。先程の筆記試験の後からアスモへの対応が明らかに変わっている。どうやら彼女はアスモを冷やかしの子供ではなく正式な受験者であると認めたようだ。

「武器は必要ない。妾は素手で戦う。-はぁ、存分に戦えか…あと魔法も使って良いと言ってもな…まあ、良い。早う始めてくれ。」

 アスモは少し不満げな顔で返答し何かを考えている。


 結界があるから存分に戦って良いじゃと?

 阿呆か!こんな張りぼての様な結界なんぞ妾が少しでも本気を出せば結界どころかこの闘技場も吹き飛んでしまうぞ!

 しかも戦う相手がたったレベル9の泥人形マッド・ゴーレムとは…悲しくて泣けてくるのじゃ。

 こ奴らは鑑定士アプレイザー職能スキルが無い故、妾の能力ステータスがわからんようじゃし、主殿ぬしどのにはあまり目立たぬ様にと釘を刺されておるしのう、それに妾が自ら己のレベルを申告する必要もないじゃろ。後で調べればわかる事じゃしな。

 今こ奴らに妾のレベルを言ったところで信じることはあるまい。ならばギルドの鑑定士アプレイザーがおる時に妾の能力ステータスを確認させるまで黙っておくとしよう。その時に驚いたこ奴らがどのような顔をするかを見る方楽しいじゃろうて。

 今回は少し手を抜いて危なげなく合格するとしてみるか…


「では、こちらの誓約書にサインをお願いします。」

 セレナはアスモに誓約書を手渡した。アスモは内容を即座に確認する。

「まあ、怪我や最悪死亡するような事があっても自己責任と言う事じゃな。別に問題など無い――これで良いか?」

 アスモはサインを記入しセレナに誓約書を渡した。

「はい。確認しました。一応、万が一の事故防止の為に結界内にこちらの者を待機させて頂きます。こちらが危険と判断すれば即座に試験を中止させて頂きます。その際は大変申し訳ありませんが不合格になりますのでご了承下さい。」

 セレナはそう言って闘技場内に待機しているカレラを紹介した。カレラは受付嬢の制服から着替えて軽鎧ライトアーマーを装備し剣を携えていた。

「別に中止せんでも何も問題ないがの…まあ、良い。承知したからさっさと始めてくれ。」


 あの女は受付嬢ではなかったかの?ふむ、レベルは25か。確かC級~D級レベルじゃったかな?

 しかし闘技場内にあ奴がおっては余計邪魔ではないか。これでは確実に魔法は使えんな。


「では実技試験開始します。結界発生装置及び召喚装置起動!」

 セレナは2つの起動スイッチを押して闘技場内にある結界装置と召喚装置を作動させた。すると闘技場を結界が包み込み、更に闘技場中央の魔法陣が光りだした。

 そしてその中心から2メートルほどの大きさの泥人形マッド・ゴーレムが召喚されたのだ。

 アスモはすかさず泥人形マッド・ゴーレム能力ステータスの確認をした。


 種族 自動人形オートマトン

 階級クラス 泥人形マッド・ゴーレム

 レベル 8


「ふぅ、ゴミじゃな…」

 アスモはそう呟き泥人形マッド・ゴーレムに向かって歩を進める。

 泥人形マッド・ゴーレムは近づいてくるアスモを敵と認識し襲い掛かってきた。

 泥人形マッド・ゴーレムはアスモに向かって突進し、右腕を振りかぶり殴りつけてきた。アスモはそれを軽く躱す。

 泥人形マッド・ゴーレムは体勢を崩し倒れるかと思いきやグニャリと音を立てて変形し体勢を180度入れ替えた。

 そして今度はアスモに向かって「泥の息吹マッド・ブレス」を吐きかける。

「―っ危ない!」

 このままではアスモにあたってしまうと思いセレナはつい声を上げてしまった。


 この意表を突いた泥人形マッド・ゴーレムの攻撃を躱すのは至難の業だったであろう。

 しかし通常の人間相手ならいざ知らず、アスモにとっては泥人形マッド・ゴーレムの攻撃など緩慢で欠伸が出るレベルでしかなかった。

 アスモは先の攻撃を躱した体勢から地を蹴り、飛び上がって「泥の息吹マッド・ブレス」を難なく躱した。


「ふぅ、良かった。」

 セレナはアスモが攻撃を躱したの見て安堵した。そしてカレラの方を見る。

 カレラは闘技場の端から微動だにせずにアスモと泥人形マッド・ゴーレムの戦いを見守っていた。


 さっきのは危なかったのに何故カレラ先輩は動かなかったのかな?

 カレラ先輩の強さはC級並みのレベル25だし、動けなかったと言う事は無いと思うけど何でだろう…

 あ、また泥人形マッド・ゴーレムがあの子を―


 セレナは今の攻撃でカレラが動かなかった理由が理解出来ずにいたが、泥人形マッド・ゴーレムによる連撃がアスモに襲い掛かっている姿に目が行ってしまいそれどころではなくなってしまった。

「ああ、また―危ない!」

 確かにアスモからはその可愛らしい容姿とは思えぬほどの何か異様な雰囲気を感じていたが、やはりセレナにとってはこの戦闘が小さな少女が巨大な泥人形マッド・ゴーレムに襲われている様にしか見えずハラハラしてしまうのだ。


 アスモは泥人形マッド・ゴーレムの連撃を寸でで躱し続ける。

 傍から見ればギリギリで躱して危険なようにしか見えないがある程度の実力者であるカレラはその様子をハラハラと見ているセレナとは違い、安心。そして感心して見ていた。


 凄いなあの子は‥セレナにはギリギリで避けているように見えるだろうがそれは違う。

 必要最低限の動きで泥人形マッド・ゴーレムの連撃を躱しているんだ。

 どう見ても10には満たない年齢の少女が熟練の如き動きをするとは…

 間違いなくあの子はD級以上の力があるだろうな。私が助けに入る必要など全くなさそうだ。

 確かに悪魔系の亜人だから基本能力の高さもあるだろうが、それにしても洗礼された動きをしている。一体何処で修業したのかな。

 本当に感心の一言しかないな。間違いなくあの子は試験は合格するだろう。ハハ、史上最年少の冒険者誕生か…


 カレラはアスモの実力を見抜き?試験の合格を確信していた。



「ふむ…」

 泥人形マッド・ゴーレムの攻撃を楽に躱しながらアスモは考えていた。


 さて、このゴミの攻撃を避けるのにも飽きて来たしそろそろ攻撃するか。

 衝撃波であそこにいる女を怪我させて冒険者になれなくなっては元も子もないのじゃ。故に魔法は使えんし、素手でアレ・・を殴るのは流石に嫌じゃぞ。

 どうするかの…あっ、そうじゃ!


 アスモは泥人形マッド・ゴーレムの大振りな攻撃を躱した瞬間に泥人形マッド・ゴーレムに向かってシュッっと右手を軽くスナップさせた―


 バチュン!


 と大きな音を立てて泥人形マッド・ゴーレムの頭部が弾け飛び泥人形マッド・ゴーレムはその場に崩れ落ちた。

「……あ…ご、合格です!これにて試験は終了です。アスモ様おめでとうございます。」

 セレナは一瞬の出来事に少しばかり唖然としていたが、すぐに気を取り直し合格通知をアスモに告げた。

「よしっ!上手く行ったの。これで合格じゃ!妾は今日から冒険者なのじゃ!!」

 アスモはガッツポーズを決める。


「あれは‥魔法かしら?」

 セレナはカレラの近くに走り寄り説明を求めた。

「多分、「風圧波エアクラッシュ」だと思うが‥威力の割に効果範囲が狭かったな。通常ならば泥人形マッド・ゴーレムを身体ごと吹き飛ばせるとは思うが、魔法は得意では無かったのかな?」

 カレラはアスモの攻撃が下位の風属性魔法「風圧波エアクラッシュ」だと勘違いしていた。

 確かにアスモは泥人形マッド・ゴーレムに攻撃する前に何かを呟きながら考えていたのでセレナやカレラには魔法の詠唱を唱えていたように見えたのかもしれない。

 しかしアスモにとって彼女たちが魔法だと勘違いしたそれは只のスナップを効かせた軽いジャブによって発生した拳圧にしか過ぎなかったのだ。

 だが、それにもかかわらず一撃で泥人形マッド・ゴーレムの頭部を消し飛ばしてしまった。アスモの本気の攻撃は一体どんな威力をしているのだろうか…


「それにしても本当にアルガルズ大陸史上最年少の冒険者が誕生するとはね‥正直驚いているよ。」

 カレラは感心している。

「本当ですね先輩!私たち歴史的快挙の瞬間に立ち会えたんですよね!私、正直感動しました!やっぱり予感してた様にあの子は本当に凄い子だったのね。」

 セレナはこの快挙を興奮すると共に感動していた。


「おーい!試験は終わったのじゃろ?妾は早う冒険者の資格証明が欲しいのじゃがの。」

 アスモは自分より興奮して話しこんでいる二人に催促の声をかけた。

「あ、すいません。―ではアスモ様、受付までご一緒にいらしてください。受付で登録書類に記入をして頂き、その後に冒険者の資格証明であるプレートと冒険者の業務内容についてのご説明をさせて頂きます。」

 セレナがアスモを受付まで案内する。

「では私も着替えてから受付に戻るよ。―それからアスモ様、冒険者試験合格おめでとうございます。お見事な腕前でしたよ。では後程受付にて。」

 カレラはアスモに称賛の言葉をかけて一礼し、闘技場を出て行った。

「うむ、では行くかの。」

 アスモはそう言って機嫌良さそうにセレナと共に受付へと向かって行った―


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