第23話 説得
グレイヴ孤児院のアスモの私室にてアスモとゼフォンの2人は今後の事についての話をしていた―
「取り敢えずこの1か月間のお前の事は院長先生やマヘリア達に聞いている。特に問題も無かったと言うか色々世話になったようだな。マルス達が危険な目にあった時に助けてもらった話も聞いている。本当に感謝している、ありがとう。」
ゼフォンはアスモにお礼の言葉を伝え頭を下げた。
「まあ、我が主である主殿の頼みじゃからな。正直言えば退屈であったが、まあ仕方あるまい。で、主殿の近況じゃが…」
「ああ、この1ヶ月での俺の報告は―」
ゼフォンが近況報告を話そうとしたがアスモは手をかざしその話を止める。
「いや、一々報告はせんでも良いぞ「記憶閲覧」で記憶を覗くからこっちに来てそこに座ってくれんか。」
アスモはベッドを叩きゼフォンにそこへ座る様に指示を出した。
「そういえばそういう便利な魔法があったな。わかった、そっちに行こう。」
ゼフォンはアスモの傍に移動しベッドに腰掛けた。
「では、主殿の近況を見せてもらうとするか「記憶閲覧」」
アスモはゼフォンの頭に手を乗せ魔法を発動し、ゼフォンの記憶を確認している。
そして3分ほど経過しゼフォンの頭から手を放した。どうやら必要な情報を確認できたようだ。
「ふむ、成程な。良かったのは王子と知己になって多少出世した位のものか。しかし王子が居なければ処分されていたかもしれんとは…主殿の所の王や上官は碌な奴がおらんな。どうしようも無いうつけ者ばかりじゃ、これで良く国が成り立っているものじゃな。こんな事ならプランBを実行しておいた方が良かったのではないか?いや、今からでも可能じゃぞ!どうする?やるか?」
アスモが目を輝かせてゼフォンに詰め寄る。
「‥お前まだ世界征服なんて考えているのか?前にも言った通り俺にその気はないぞ。」
「何じゃ、つまらん。主殿は相変わらず向上心が無いのう。」
まあ、仕方あるまい主殿の記憶を見る限り自分に都合が良い選択肢がある今の状況である程度は満足しておる様じゃし、強引に事を進めたところで本人にやる気がなければ意味など無いからの。
今は我慢しておくとするか、そう今はの…
「で、お前の話というのは何だ?」
「うむ、実は妾は冒険者になろうと思ってな、それで主殿に相談なのじゃ。」
「…却下!」
「返事早っ!…って却下じゃと?何でじゃ!!」
アスモは信じられないと言った表情でゼフォンを見上げた。
何でだと、そんなの無理に決まってるだろ。お前が冒険者になったら目立ち過ぎるからに決まってるからだろ。
大体、子供の身体になって力が落ちたとは言えレベル68というのは異常なんだ。それどころか公国で最強の存在と言うのがばれてしまう。
只でさえ目立たないように俺が面倒を見れない間は孤児院に預けていたのに、この願いを聞き入れては今までの努力が無駄になる。
確かに子供達が色々と世話になったしそれに関しては感謝している。
しかし、さっきも世界征服の事を仄めかしてやがったし、正直、コイツはまだ完全に信用できないところがある。
確かにコイツから悪意は感じられない。だが悪意を感じないのはコイツにとって世界征服は遊びの様な感覚だからなのか?
やはり危険な存在だと少しでも認識出来る以上、好き勝手に動き回らせる訳には行かない。
姿は子供とは言え本性は魔王なんだ、もう少し様子を見る必要がある。
さて、どうやって言いくるめるか?
「…お前の希望を聞いてやりたいが、今は戦後の処理で国中が忙しいんだ。冒険者になるのもギルドに登録とか色々手間がかかるし手続きも時間がかかると思うぞ。それにお前の為に今、怪物討伐の依頼も俺が個人で捜しているからもう少しだけ待ってくれないか?」
「ほう、そうか…では妾が先程「記憶閲覧」で確認した主殿の記憶とは全然違うようじゃが、どういう事かの?」
アスモが冷ややかな視線をゼフォンに送る。
「いや、そ、それは‥」
先程アスモに記憶を見られていたと言う単純な事に気付かなかったゼフォンはしまったと言う顔をしてしまう。
そしてゼフォンは言葉に詰まってしまう。そこへアスモが畳み掛ける。
「白々しく何をぬかしておるのじゃ!戦後の処理じゃと?それが落ち着いたから主殿は帰って来たのじゃろうが!大体、妾は街に買い物に行くのも手伝っておるのじゃぞ、ある程度の情報など把握しておるわ!それに怪物討伐の依頼を探しているじゃと?記憶を見たが無かったぞ、最初から忘れておったじゃろ!言い訳は聞きとうも無いわ!どうせ妾を自由にさせるのは危険だとか思うておるんじゃろ?考えてもみよ、妾が本気なら今頃国中パニックになっておるぞ!1ヶ月も大人しく子守をしたのじゃ、これ以上は我慢が出来んのじゃ!冒険者になると言ったらなるのじゃ!!!」
ゼフォンは嘘と己のアスモに対する不安要素を見透かされ絶句している。
更にアスモの言葉による追撃は続く。
「考えてもみよ、妾は公国でも最強クラスの力を持っているのじゃぞ、その妾が1ヶ月も子守をした、いや護衛任務を行ったならいくらかかると思っておるのじゃ?妾の給金はどうなる?孤児院で貰った小遣いは子供達と同じ銅貨5枚じゃぞ!銅貨5枚!クレアに聞いたらプリンは銅貨20枚はするそうじゃな、では妾の給金ではプリンを買うのに4か月もかかると言う事になるぞ。妾の価値はその程度だとでもいうのか?本来なら魔王である妾が子守や人助けなどする事など無いのじゃぞ、主殿よ妾の言っておる事は間違っておるか?」
「いや、あの、お前の話は分かるんだが俺にも考えが…それにお前の給金の話はまだしてないだろ、それに関しては俺にも考えがあるから。な?」
アスモの機関銃のようにまくしたてる言葉に圧倒されてしまいゼフォンはしどろもどろになってしまう。
アスモは追撃の手を休めない。
「ほう?ならば主殿が妾の給金を支払ってくれると言うのじゃな。良かろう。そうじゃな給金は最低でも月金貨2枚は貰おう。それならば妾は冒険者になるのを諦めよう。」
「月に金貨2枚だと!そんな馬鹿な話があるか!!」
先程まで黙っていたゼフォンも流石にその条件に驚き声を上げた。
昇進する前の自分の給料の5倍、そして今の自分の給料の倍以上はある金額を提示されたのだ。支払える訳が無い。
正に無理難題を叩きつけられたのだ。
「馬鹿な話ではないぞ。相場は既にこの2週間である程度調べてあるのじゃ。妾のレベルなら確実にA級の実力があるそうじゃ。マルスに聞いたが大体レベル40以上あればA級になれるらしいと言うのは聞いておる。A級の冒険者の報酬は最低でも金貨2枚以上の仕事が主になって来る事も聞いた。あ奴は冒険者を目指しておるらしいから詳しく教えてくれたぞ。じゃから妾の給金は金貨2枚で良いと言っておる。妾が冒険者ならその気になれば金貨2枚以上は稼げるのじゃ、これでも破格じゃと思うが?」
「しかし、俺の給料ではそんな大金…それに孤児院の生活費も…」
ゼフォンはアスモの「正論」に反撃する言葉が見つからなく焦っている。
くくく、焦っておる、焦っておる。これだけ正論を言われれば言い返そうにも言葉が見つからんじゃろうて。
まだまだ甘いの主殿は。駆け引きの仕方がまるで素人じゃ。
まあ今後の事を考えれば駆け引きのイロハも教えておく必要はありそうじゃが、今は妾の将来を決める大切な話の最中じゃ、後にしよう。
さてと、そろそろ詰めとするかの。困っておる主殿に妾が救いの手を差し伸べてやるか、くくく…
「さて、主殿よ妾から「提案」なんじゃが、良いか?」
「提案?」
「そうじゃ、主殿では妾の給金を支払う事が出来ないのは最初から理解しておる。それにこの1ヶ月で孤児院の状況も把握しているしのう。皆慎ましく生活しているようじゃ。今回の主殿の報奨金は確かに大きい。しかしこれでは一時の贅沢は出来ても永遠に続く訳ではあるまい。皆を楽にさせる為には金が必要なのは明らかである。しかし主殿は今すぐに冒険者になる訳には行くまい、何せ王子との密約が上手くいけば公国の将軍になれる可能性があるかもしれないからのう。そこで妾の出番なのじゃ!妾が冒険者になればA級までなるのに時間はかからないじゃろう。そうなれば給金は最低金貨2枚以上は稼げるようになる。妾は主殿とは一蓮托生なのじゃぞ、誰も給金を独り占めする気などないのじゃ。給金の半分は孤児院に寄付する事は最初から決めておったのじゃ。そうなれば孤児院の皆に贅沢な暮らしをさせてやれるではないのか?もう子供達が嗜好品のデザートを誕生日にしか食べられぬひもじい思いをする事は無くなるのじゃぞ?これが妾の提案じゃ、何か不都合でもあるか?-…それにしても最初からこの話をしておれば長々と話をする事も無かったな、これはすまなかったと反省しておる。」
「お前、そんな事を考えていたのか?孤児院の為に…」
ゼフォンはアスモの提案に驚いている。アスモが孤児院の為を思って提案していると信じてしまったようだ。
ふむ、この様子では主殿は妾の話を信じているようじゃな。見る限りかなり揺らいでおる様じゃ。
さてと、これが考えておった最終手段じゃがどうかな?乗って来るだろうか?
まあ主殿の性格上、自分の事より孤児院の家族の為ならば何でもする奴じゃからな。必ず乗って来ると確信はしておるが。
それに妾も冒険者になって取り敢えず試しておきたい事もあるし何よりもプリンをお腹一杯食ってみたいのじゃ!その為には金が必要なのじゃ!
主殿よ、答えは決まっておるじゃろ?早う返事をせい!
「―わかった。そういう話ならお前が冒険者になる事に反対は出来ないな。但し、条件がある。」
「おお、許可してくれるのじゃな!条件か?妾が出来る事ならば何でも構わぬぞ、言ってみよ!」
その言葉を聞いてアスモは心の中でガッツポーズを決めた。
「冒険者は誰でもなれる訳ではない。最低必要条件の職能以外にも実技と筆記試験がある。実技に関してはお前の実力なら余裕だろう。あと筆記試験の勉強も俺がある程度は教えてやれる。時間は少しかかるだろうがお前の頭の良さなら問題あるまい。条件と言うのは冒険者になってからの話になる。最初に言っておくがお前の事は信頼している。だが基本冒険者はパーティーを組んで仕事をする事が主流だ。例え「能力隠蔽」で能力を隠していたとしても気心の知れた仲間がいた場合、もしかしたら話してしまう可能性が無いとも言えない。お前の秘密が他人にばれる訳には行かないんだ。済まないが冒険者になった場合は1人で行動をして欲しい。これが条件だ。構わないか?」
「何じゃ、そんな事か。無論、問題など無い。寧ろ妾にとっては好都合じゃ。足手纏いなど必要無い。それから筆記試験じゃが主殿にわざわざ教えてもらわんでも何も問題は無いぞ。この1ヶ月で子供達の勉強に使っている教科書や院長室の書籍は全て読んで必要な人間界の知識や情報は完全に頭に入っておる。何せマルス達の訓練の指導以外は本を読むぐらいしか暇潰しが無かったのでな。それに冒険者試験の内容もある程度マルス達から聞いておるし何も問題は無いじゃろう。妾としては明日からでも問題は無いぞ。」
「マジか‥流石は魔王だな。伊達に歳はとって無い様だな。」
「こら主殿!淑女に向かって年齢の話は禁句じゃ、それでは女にはもてぬぞ。」
「大きなお世話だ!――さて、お前が冒険者になる話はこれで終わったが、俺もお前に頼みがあるんだ。良いか?」
「主殿の頼みか…多分魔法の事ではないのか?」
「良くわかったな。実はこの1ヶ月で時間を見計らってお前の教え通り練習して「火炎弾」は会得できたんだが、攻撃魔法よりも補助魔法を教えてほしいんだ。出来れば「身体強化魔法」を最初に教えてほしい。頼む。」
「補助魔法か…ふふん、無理じゃ!補助魔法なんぞ妾は使えんぞ!」
アスモが何故だか自慢げに話す。
「はあ!?補助魔法が使えないだと?だって1番必要で基本的な魔法じゃないか、何で使えないんだ?魔人でも使える筈だろ!」
アスモの言葉にゼフォンは驚愕を隠せなかった。ゼフォンの言う様にこの世界において補助魔法は絶対必要な魔法なのだ。だが、それはあくまで人間にとってである。
「ふむ、言い方が悪かったようじゃな。はっきり言えば補助魔法なんてものは魔界には存在しない。そして妾には補助魔法など必要が無いのじゃ。それにしても主殿はもう忘れたのか?「能力隠蔽」で種族を魔人に変えておるが妾は下位になったとは言え一応、魔神じゃぞ。補助魔法が無くても最初から人間や亜人とは基本性能が違うのじゃ。例え竜種を含めたとしても魔神の身体能力は全ての種族で最も高いであろうな。故に単純に言えば最初から強化されておる状態じゃから「身体強化魔法」や「魔力強化魔法」じゃったか?そういうものは必要ないのじゃ。まあ補助魔法や魔道具は元々人間が編み出したのであろうな。身体能力で遥かに劣る人間が強化をして怪物達に対抗するために必要になる故開発したのであろう。その努力には正直感心するぞ。それに主殿よ、妾と共有している魔法に補助魔法は無かったであろう?」
「共有している魔法か?ちょっと待てよ、―――本当に補助魔法が無いな。‥そういえば確かに補助魔法は人間や一部の亜人しか使った事があるのを見たことが無かったな。成程、そういう事だったのか…それにしても魔神ってのは反則だな。でも補助魔法が使えないと困るな…どうしたら良いんだ?」
ゼフォンは真剣に悩んでいる。魔法の指導をしてもらっているアスモが使えない以上どうする事も出来ない。
だが人間であるゼフォンにとっては1番必要な魔法なのだ。しかしそれを習う術が思いつかないのだ。
一体、何故主殿は悩んでいるのじゃ?妾には分からんぞ。
補助魔法など頼めば教えてくれる者が孤児院に居るではないか。
先程の話と言い単純な事に気付かない様じゃが、ひょっとして少し抜けておるのか?
いや、己で新薬を開発したり成績は良かったはずじゃから、いわゆる天然と言うやつかの。
まあ、仕方あるまい助け舟を出しておくか‥
「何を困っておるのじゃ?簡単じゃろ、院長かマヘリアに習えばよいではないか?マルスも今教えて貰っておるぞ。主殿になら2人共喜んで教えてくれるじゃろう。」
「そうか、その手があったな!何で思いつかなかったのかな。後で院長先生に頼んでみるか‥」
ゼフォンはアスモのアドバイスの通り院長に師事を受ける事を決めたようだ。
「あっ!そう言えば忘れていたがアスモ。これをお前に持って来たんだった。この1ヶ月のお礼としては言葉だけでは足りないからな。プリンなんだが実は3個余っていたんだ。合計30個入っていてな、子供達の前でお前だけに渡す訳には行かなかったからな、但しこのことは内緒だぞ。ここで静かに食べるようにな。」
そう言ってゼフォンがアスモの前にプリンを3個差し出した。
「おおー!主殿よ愛しておるぞ!!良かろう、今から妾を抱いてもよいぞ!」
そう言ってアスモはベットに寝転がりゼフォンを挑発する。
「…わかった、プリンは要らないんだな?」
ゼフォンは冷ややかな目でアスモを見下ろしプリンを下げようとした。
「嘘、嘘、嘘なのじゃ、いいや嘘です。本当にすいません!!調子に乗っておりましたのじゃ!!」
アスモは泣きそうな顔でゼフォンにしがみついた。
「―はあ、俺は冗談は嫌いだからな。次は無いぞ。」
ゼフォンはそう言って仕方なく再びアスモにプリンを差し出した。
「了解なのじゃ!」
アスモは満面の笑みでプリンを見ている。
「早く食って寝ろよ、明日にはここを出るんだからな。」
そう言ってゼフォンはドアを開けて出て行こうとした。するとドアの外にはクレアが立っていた。
「…アーちゃん、明日ここを出ていくの?」
クレアは今にも泣きだしそうな顔でアスモを見つめている。
「…クレア。あのな、俺の仕事が落ち着いたらアスモと一緒にここを出る事は前から決まっていたんだ。明日にでも皆に話そうと思っていたんだけど…」
ゼフォンがクレアをなだめようとしているがアスモがそれを制止する。
「主殿、クレアとは妾が直接話をするからもう行ってもよいぞ。2人の方が話もしやすいからの。」
「そうか…じゃあ任せるぞ。お休みクレア、アスモ。」
そう言ってゼフォンは部屋を退出して行った。
▼
「さてクレアよ、お主の聞いた通り妾は明日にはここを出ていくつもりじゃ。」
「いやだ!アーちゃん出て行かないで!これからもクレアと一緒にいて!」
クレアが泣きながらアスモに駆け寄ってきた。
「それは出来んな、妾にはやることがあるからの。それにお主は勘違いをしておるぞ、妾はこの孤児院を出て行くが、ここには週に何度かは顔を出すつもりじゃ。お主らの修業を見る約束もあるしマヘリアのご飯も食べたいからな。」
「…だったらここにいたら良い事じゃないの?じゃあ何で出て行くの?」
「良く聞けよクレア、妾はすることがあると言った筈じゃ。前からお主らに話していたように冒険者になるのじゃ。だが冒険者になれば依頼を受けて仕事をせねばならない。ここから通うより街に住む主殿の家からの方がギルドにも近く街の情報も手に入りやすい利点があるのじゃ、わかったか?」
「クレア難しい事は分んないよ…でもアーちゃんが冒険者になるためにはゼフォンお兄ちゃんの家に居たほうが良いの?ここに居るのが嫌になったとかクレアが嫌いになったとかじゃないの?」
「うむ、そういう事じゃ。それにお前やこの孤児院が嫌いなわけではないぞ。嫌いならお主に魔法を教える事も一緒に手を繋いだりする事も無いじゃろ?それに仕事が無い時はお主らの修業を見に来ると言った筈じゃ。」
「うん、わかった。我慢する。‥アーちゃんはクレアの事嫌いじゃないのね。良かった!」
クレアは涙をぬぐいながら少し微笑んだ。
「よし!聞き分けの良い子は妾は好きじゃぞ、褒美にプリンを1個分けてやろう。皆には内緒じゃぞ?」
アスモはクレアにプリンを差し出した。
「わあプリンだ!ホントに貰っても良いの?」
「構わぬ、妾にはあと2つあるし冒険者になって金を稼げばプリンなんぞいつでも食えるようになる筈じゃ!遠慮は要らんぞ食うが良い!」
「ありがとうアーちゃん!皆には内緒にするね!」
クレアは嬉しそうに差し出されたプリンを受け取った。
「うま、うま」
「美味しいね、アーちゃん!」
2人はプリンを美味しそうに味わっていた。
▼
「ふう、もう無くなってしもうたか…出来ればお腹いっぱい味わいたいものじゃな。」
「アーちゃんごちそう様。」
「うむ、さっきも言った通り皆には内緒にしておけよ。さてそろそろ休むからお主も部屋に戻ると良い。」
「…あのね、アーちゃん。」
クレアは何か言いたそうにモジモジしている。
「何じゃ、言いたい事があるなら言うてみよ。」
「あのね、クレア、アーちゃんと一緒に寝たらダメ?」
―はあ、クレアを見ているとあ奴を思い出す。あ奴も子供の頃からずっと妾にベッタリじゃったからな。
しかし、変なところまで似てもらっては困るぞ。妾は百合には興味が無いのじゃ。
かと言って突き放すと泣くじゃろうし、仕方あるまい。今日だけの我慢じゃ。
「わかった。一緒に寝るとするか。明かりを消すから早うこっちへ来い。」
「うん!やった!アーちゃんと一緒!」
クレアははしゃぎながらアスモのベットに駆け込んできた。
「さて寝るか。」
「うん、お休みアーちゃん。‥寝るまで手を繋いでても良い?」
「…もう好きにせい」
そう言って明かりを消し、クレアと手を繋いで横になった。
数分後にはクレアは安らかに寝息を立てて眠っていた。
もう寝たのか?子供の手を繋いで一緒に寝るとは…本来の妾ならこんな事は絶対にしない筈じゃ。
それに如何に主の命とは言え、無関係の人間の護衛などする事はありえない。
これは多分「能力同調」により主殿と力の共有を行っているから主殿の家族に対する愛情が妾にも影響したのじゃろう。
それにこの体になってから性格や仕草が子供っぽくなってしまっているのも問題じゃな。
多分これはこの体になってしまった事による影響かもしれんな。
まあ、今の所不便は無いのじゃ。取り敢えず冒険者になって試したい事があるから、それが出来るかどうか確認してから今後の事は考えるとしよう。
そんな事を考えながらアスモは眠りについた―




