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男爵家長男のクラフト革命  作者: シキ


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第1話:能力の確認

 あれから一週間が経ち、俺の体は日常生活を送る上で問題ないレベルまで回復した。

 瀕死だった俺がこの速度で回復したのは、母さんの回復魔法による影響が大きい。


 そう。この世界には、ゲームとかでよくみる属性系の魔法、身体強化、回復、飛行などの魔法がある。

 魔法が存在すると知った俺は、「俺にも使える!?」と子供のような笑顔で両親に聞いた。

 が、現実は残酷にも――


「アルトは魔力がないから無理なのよ……」


 異世界に来たのに魔法を使えないという絶望が俺を襲った。

 あまりのショックで、一日中ため息しか出なかった。


 それはそうと、アーキテクトについて色々わかった。

 この世界に来た翌日に、神様からの伝言でスキルの詳細を教えてもらった。

 それがこれだ。


『あなたのスキル《アーキテクト》のことだけど、さすがに説明無しは可哀想だから、少し解説してあげるわ。

 大まかな流れはあなたが試していた通りよ。設計図を描き、その材料を入れてクラフトする能力。

 設計図や完成品にはそれぞれランクがあり、高いほうが性能がいい。

 完成品は、設計図のランク×素材の品質×《アーキテクト》の習熟度で決まるわ。

 説明は、こんな感じよ。精々頑張りなさい』


 起きたら急にこの画面が出ていた時は驚いたが、ほぼ手探り状態だった能力について知れたのは、ありがたかった。

 この画面はどうやら俺にしか見えていないらしい。

 他の人がいるときに使うと、「何やってるんだ、こいつ」と思われかねないから気を付けよう。


 他にも以下のようなことが分かった。


 ・設計図のランクはただ描くだけじゃなく、寸法を入れたりするなど、配慮すれば上がる。

 ・マニュアルモードで承認された図面は、自動でオートモードにも追加される。

 ・習熟度は図面承認で5、作成で1溜まる。一週間試したが、本当に増えてる?ってぐらい目に見える変化はない。


 こんな感じだ。なかなかに癖のある能力だが、俺には合っている。そう感じた。


「坊ちゃま。夕食の支度が整いました」

「……もうそんな時間か。すぐに行くよ、セバス」


 呼んできてくれたのは、このヴァイス家につかえる執事のセバスだった。

 セバスは、昔からヴァイス家に仕えてくれている執事で、俺もよくお世話になっている。


 案内された部屋で、俺は家族と対面する。


「アルト。もう怪我は大丈夫なのか?」

「もう平気だよ」


 白銀の髪に蒼の目を持つこのイケメンは、俺の父――レオン・フォン・ヴァイスだ。


「そうよ。無理はしなくていいからね」

「大丈夫だよ。母さん」


 俺はそう言い、リリアの隣の席に座る。


 今日の夕食のメニューは、黒パン、牛肉のスープ、サラダ。まさかのこれだけだ。

 この世界の領主がこんなに節制した夕食をとるものなのかと言われれば、もちろん違う。


 このヴァイス領は言わば開拓領で、魔物の森を開拓して生活している。ただ、近年魔物が活性化しているせいで、生活がままならないとか。

 領主である父は備蓄を開放し、領民に食料を配っているが、まだ全然足りないらしい。


 あと黒パン。見た目はフランスパンみたいなパンだけど、硬さが尋常じゃない。

 そのまま食べると、歯が折れそうなほど硬い。

 スープでふやかしてギリギリ食べれるといったところ。


「「「「創造神アステリアの恵みに感謝を」」」」


 そう言って、俺たちは夕食を食べ始める。

 俺が黒パンと格闘していると――


「お兄様……」

「ん?どうした」


 リリアが少し赤い顔で俺の服をつかむ。


「あ、あーん……」


 リリアが俺のスープをスプーンですくい、俺の口に近づけてくる。

 あーんだとっ!?

 前世でもされたことないのに!

 一瞬頭がフリーズしたが、毎秒顔が赤くなっていくリリアに耐え切れなくなり、観念して俺はいただくことにした。


「うん。美味しいよ。ありがとう、リリア」

「はい!お兄様」


 頭を撫でてあげると、リリアは嬉しそうに目を細める。

 だめだな……喜んでいるリリアが可愛くて、つい頭をなでてしまう。


 そんなこんなで、夕食を食べ終わると、父の執務室に呼ばれた。


「すまないな。まだ治ったばかりだというのに」

「そんなに気にしなくていいよ、もう動けるくらいには回復したから。それで、何かあったの?」

「ああ……アルト。ミルズ村については知ってるか?」

「うん」


 ミルズ村というのは、ヴァイス男爵領の近くにある村だ。

 小麦や芋などが特産だが、近年魔物の被害や不作が続いているせいで、生産量は減少傾向らしい。


「それでアルトには、私の代わりにミルズ村へ視察に行ってほしいんだ」

「視察?」


 予想外の頼みに、俺は父さんの顔を見つめる。

 そういうのって、ふつうは領主の仕事じゃないのか?

 俺が疑問に思っていると、父さんは困った顔を浮かべる。


「私は年に一回ある、王都に領地の現状を報告しにいかないないといけなくて、一ヶ月は帰ってこれなくてな……。アルトは、まだ幼いが、頭もいいし、何よりヴァイス家の次期領主でもある。次期領主として、この勤めを果たしてくれるか?」


 一ヶ月は帰ってこれないのか……。父さんだって最近は忙しいから、少しでも休んでほしいんだけど。

 まだ怪我も治りたてで、父さんがこんなことを言ってくるのは、相当困ってないとこんな頼みはしてこない。

 それに、家族が困ってるんだ。なるべく協力はしてあげたい。


「……わかったよ、父さん。父さんがそこまで困ってるなら、俺が行くよ。まだまだ勉強中だけど、精一杯やってみる」

「おおっ、助かる!……このことは一足先に、エレナとリリアに言ってたんだが、猛反対されてな……。何とか、護衛の騎士たちを付けるという条件付きで許してもらったんだ」


 父さんは、ほっと一安心といった顔を浮かべる。

 母さんもリリアも、俺のことを心配してくれるのはうれしいが、これもせっかくの機会だ。

 視察もかねて、村の困りごとなどを俺のの能力で解決したい。

 家族を、領民をできるだけ助ける。それが俺がこの世界で掲げた目標だからだ。


「出発は急だが、明日の午前中からだ。しっかり休息をとって明日以降に備えてくれ」

「うん、わかった。今日はしっかり休むことにするよ」


 そう言って、俺は執務室から出てていった。


 ◇ ◇ ◇


 そのあと、風呂に入り自室に戻ってきた俺は、アーキテクトで何かできることがないかをいろいろ試していた。


 村での生活で必要なものか……。

 手押しポンプとかあればいいけど、作れるか?


 俺はマニュアルモードで、ある程度把握してある内部構造を描いていく。

 特に苦戦することもなく描き終えると――


『図面が承認されました。【製品名】手押しポンプ 【ランク】E 習熟度が5上昇しました』


「できちゃった……」


 試しに書いてみたが、承認されるとは思ってなかった俺は、少しの間呆けていたが、気を取り直して必要材料を確認する。


『必要材料:木材、石材、革』


 この能力に文句を一つつけたい。

 せめてどの素材がどれぐらい必要かとか分かるようになってくれよっ!

 まあ寸法も書いているから、大体これぐらいといった予想はできるけど……。


 まあ、文句はこれぐらいにして。それより革か……。どうやって集めるかは現地に行ってから考えるか。


「今日はもうこのぐらいにして寝るか」


 明日も早いことだし、俺はベッドに入り休息をとった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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