表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっとこのままで  作者: キョウ
38/40

小話2 傍観者からの約束

 おじさんとの約束が、挨拶だけではない、と姫乃に気づかれた。

「他になにを約束したの?」

 と、無邪気に聞いてくる姫乃に、言うべきか、言わざるべきか悩む。


 *****


「恭太君、五年生ならもう分かってると思うけど…。」

 そう、姫乃のお父さんに切り出された。

 二人して落ちて、意識が戻って、学校の先生が来たり、警察の人が来たり、なんだかんだとバタバタしてたのが一段落して、そろそろ退院……という時に、姫乃のお父さんが1人でお見舞いに来た。

 それまでもおばさんや姫乃と一緒に来たりしてたけど、1人で来たのは初めてだったから違和感はあった。


「君は姫乃とずっと一緒にいてくれるつもりかい?」

 柔和な姫乃のお父さんは、普段出張が多いのであまり家にいない。そんな忙しいおじさんがわざわざ時間をさいて来た……ということを分かっていた。

「はい。ずっと一緒にいたいと思ってます」

 ハッキリ答えた。

 俺の中ではもうそれは覆らない決定事項だったから、何の躊躇もなかった。

 その、迷いのなさが効を成したのか、おじさんはにこやかに笑ったままこう言った。

「じゃあ、おじさんと約束してくれるかい?結婚するまで姫乃に手を出したらダメだよ。もし、破ったら姫乃はあげられない」

 今にして思うと小学生相手に言うか?とも思うが、逆に変に俺を遠ざけようとしたり、説教したりしないおじさんをこの時から一目置いた。


 *****


 しかし、その約束を破ったらどうなるか、想像に難くない。

 そうなったら、俺にとっては最悪だ。地獄に突き落とされる、と言っても過言ではない。俺にとって姫乃と会えないのはそーゆーことだ。

 だから、たとえいっくら姫乃がかわいくても無防備でも色っぽくても、俺は理性を総動員してなんとか自分を抑える。


 とはいえ、最近はちょっとずつフライングしてる……。

 初めは高校生の時…。

 それまで他愛ない会話をしていた時、ふいに二人とも黙ってしまった瞬間に、魔が差した。

 言い訳がましく言わせてもらうと、この時は姫乃も悪い。

 黙ったままじっと見ていたら、姫乃がふいに目線を下げて顔が近寄ってきたのだ。そりゃキスするだろ。お互い初めてだったし、あの時は嬉しすぎて手が震えた。


 次はいただけなかった…。俺が悪い。

 嫉妬にまかせて強引に奪ってしまった。でも、あれも姫乃も悪い……悪いと思う。

 三度目は暴走した。あまりに姫乃がかわいくて、もう自分を押さえきれなかった。人前とかたいして気にしてなかったけど、あの後姫乃にめちゃくちゃ怒られた。


で、今。うちに遊びに来た姫乃は、無邪気に無防備に俺の隣に座っているが、そこんところを分かっているのだろうか?

「姫乃、キスしていい?」

「えっ、ダメ」

ストレートに聞いたら、速攻ブロックされた…。

「婚約してるのに、なんでー!」

拗ねて投げやりに訪ねると

「お父さんに言われてるから」

「な、何を……?」

「結婚するまで油断したらダメだよ、って」

ぐっ……。

おじさんは油断ならない…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ