小話1 イメチェンの協力者
「ねぇ、恭太。髪はどこで切ったの?今まで美容院なんて行ったことなかったよね?」
大学帰りに寄ったカフェで、姫乃から唐突に聞かれた。
「大学そばの商店街の入り口のとこ……」
「ああ!」
そこまで言ったら場所がわかったようだ。
「最初はさ、カットモデル?っていうの?無料で切ってくれる、っていうから行ってみたんだけど」
「うん?それって、新人さんが練習がてらやるやつだよね?その割にはキレイに切れてると思うけど……」
駅前で、カットモデルを探している、と声をかけられた。ボサボサの髪が丁度良かったのだろう。渡りに船、とついていって、カットが始まった。
「それがさ、前髪切って目が出てきたあたりで、カットしてくれてた人が震え出して…」
「ふ、震え!?」
姫乃はあやうくアイスカフェオレを吹きそうになった。
「そこから店長さんと交代した。お代はいらないから、切らせてくれ、って……」
更には知り合いだという、古着屋の店長を呼び寄せ、二人にあーでもない、こーでもない、と服を取っ替え引っ替え着せられ、これまたお代はいらないから、と数枚もらってしまった。
「二人とも、やたらと感極まったように興奮しててさー、ありがたいっちゃ、ありがたかったんだけど」
姫乃を見たら、半目になってる。
「あ、心配しないで。やってくれたのは全員男だよ?」
「より、引きました。」
俺だって、素の自分を本気で盛ったのは初めてだったので、周りからどれだけ浮いてるのか、彼らの反応でわかったくらいだった。
「でも、かっこよくなったでしょ?」
ニヤリと笑って言ってやった。
「恭太は元からカッコいい……よ……?」
だんだん小声になっていくのと同時に、頬がほんのり赤い。
まあ、姫乃にカッコいいと思われるならどんな格好でも致しますけどね。
その後、その古着屋さんに行くと店長自らが勝手にコーディネートしてくれるのを、そのまま着ていることはしばらく黙っておこう。




