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ずっとこのままで  作者: キョウ


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 次の日、大学に行ったら大騒ぎだった。

 結局、昨晩のうちに中山が自首したからだ。

 事件としては少額かもしれないが、現役女子大学生の横領事件だ。そりゃ大騒ぎにもなる。

 いつもより騒がしいキャンパスには警察関係者だけでなく、報道機関もチラホラいるようだ。

 テニスサークルの部室は警察に押さえられてて今は入室禁止になってる。

 俺と姫乃、暖人も警察に呼ばれた。が、俺が中山を追い詰めるべく得た情報は、ほぼテニスサークルの会計の子とその友人が調査したものだったことを告げたら、案外あっさり解放された。多分、彼女達からはみっちり話を聞くのだろう。

 生徒はみんな学校に来たものの、あまりの騒ぎに大学側が全ての科を休講にした。


 そんな中、暖人に連れられて俺と姫乃は薬学棟の非常階段の最上階にいた。

 放置されてた壊れた椅子や机といった粗大ゴミは、キレイさっぱりなくなっていた。

 俺のせい……というか、俺のおかげというか。

 暖人は俺らを改めて見るなり、わざとらしく深いため息をついた。

「なに?」

「僕がちょっとずつちょっとずつ詰め寄った距離を、恭太君はあっさり飛び越してくんだもんな…。ズルい」

「知るか」

 俺らのやりとりを見ていた姫乃が、不思議そうに聞いてきた。

「なんか……仲良くなってる?いつのまに?」

「「なってない」」

 不本意にもハモってしまった。

「それより、何?中山関連?」

 呼びたされた理由をなんとなく把握しながら聞いてみると、暖人は頷いた。


 俺らが遠藤さんと話をしてる間、暖人は大学側が中山に事実確認……という名の尋問をしてる場に、うまいこと言って同席させてもらっていたらしい。

 俺と姫乃の疑問は、中山の行動は遠藤理圭の指示だったのか?ということ。

「僕が聞いてたのは主にサークルでの件だけど…。」

 と、前置きして暖人から聞いたのは、理圭はかなり狡猾に理穂を動かしていた、ということ。

 直接的に行動を指示していたのではなく、「本で読んだ話」として上前をはねる方法や、人を自分の思うように動かす方法、男心をくすぐる方法、はてはファッションやメイクの指導まで、「指示」ではなく「会話」の中にちりばめられたそれを、実行するかしないかは理穂の判断、だったらしい。

 理穂からこれを聞き出した時ですら、本人は理圭からの話は参考にしただけで、やったのは自分だと言っていたという。そこにいた暖人も大学の職員も、影で理圭がコントロールしていたことに気付いたくらいだったのに。

 その中でも一番、理圭の気持ちとシンクロしていたのが、姫乃を恨んでいること…。

 サークルの件とは関係ない話だから、大学の職員はあまりその辺は深く聞くつもりはなかったのに、姫乃に対する話になったら途端に力が入り、饒舌にまくし立てたという。

「お姉ちゃんをあんなに追い込んだあの女が許せない!」

 直接被害を被ってないのに、理穂は自分のことのように憤っていたらしい。不自然なほどに。


 もしかしたら精神鑑定が入るかも……と暖人は言う。更に理圭まで捜査の手が伸びるかはわからない、とも。

 遠藤さんの話によると、理圭達の母親はかなり小さい頃から理圭の気性の激しさや狡猾さに気付いていたようだった。それに怯えて理穂を連れて離婚したのは正しかったとは言えない。結局、引き離したはずの理穂は理圭に囚われてしまったし…。


 全てを聞いて、俺と姫乃はお互いなんとも言えない表情になった。でも、姫乃が

「恭太のせいじゃないからね!」

 と力強く言ってくれて、ちょっと気持ちが浮上した。


「で?二人は元に戻っちゃったわけ?」

 暖人が残念そうに聞いてきた。

「元に戻ってない」

 ハッキリ告げた後、続けて

「正式にお付き合いすることになりました」

 ニヤリと笑って、言ってやった。

 隣で姫乃が真っ赤になっている。

「あー……、そうか……。入り込む隙間があるかと思ったけど、予想より早く閉じられちゃったなー」

 本当に残念そうに力なく呟くのを見て、暖人は結構本気で姫乃のことを好きだったんだと思った。

 まあ、だからと言って譲る気はさらさらないが。

 暖人はクルッと姫乃に向きなおり、両肩を掴んで言った。

「ひめちゃん、恭太君の愛がウザくなったらいつでも僕のところに来ていいからね?」

 ウザっ……!?

 失礼な物言いにカチンと来てると、姫乃は頭を左右に振り

「ウザいのはデフォルトなので、大丈夫」

 とニッコリ笑った。おい、その返しもどうなんだ。

 暖人は「また遊びに行くって、香代乃さんに言っておいて~」と言いながら、非常階段を下りて行った。

 また行く、ってことは暖人はまだ姫乃の周りにチョロチョロ現れる、ということか。そっちこそウザいな!


「暖人と一緒にいて、どうだった?」

 何気なく出た一言だったが、姫乃はきょとんとして意味がわからない、という目で見つめ返してきた。

 別に嫉妬とか嫌みとか、そういうつもりで聞いたわけじゃなく、単純に今まで俺以外と一緒にいたことがなかった姫乃は、他の人とだとどうなのかと思ってつい聞いてしまった…。

「うん、恭太じゃなかった……」

「?そりゃ、そうだろ」

 今度はこっちが、言ってる意味がわからない。

「私の中では、恭太か、恭太じゃないか、の二択しかないって、わかった」

 俺の目を見てニッコリ告げた言葉の意味を、じわりじわりと理解してきたら、赤面してしまった。

「こっの……!あんまりかわいいこと言うと、襲うぞ!」

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