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ずっとこのままで  作者: キョウ


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 ドアの向こうから現れたのは、ストーカー相談をした時に対応してくれた、保健センターの女性担当者、更に誰だかわからないけど、大学のIDカードを首から下げた大学関係者らしい男の人、その後ろには50代くらいの優しげなぽっちゃりしたスーツを着たおじさんがいた。

 おじさんの丸い顔は困惑で固まってる。


「貫地谷の見解で決めようと思ってたんだけど、さすがにここまで来ると学生だけの話では済まされない。悪いけど、大学側にも連絡したよ」

 どうやらハル兄が手を回して、先程出て行った貫地谷さんが呼んだらしい。

 確かに、サークル側が被害届を出したりしたら、私達だけの問題ではない。

 スーツのおじさんが、部屋に入ってきながら言った。

「あ、あの……大学から連絡があって…来たのですが……理穂は……」

 ここまで言って、恭太の顔を見て止まる。

「……もしかして……上村…恭太君……?」

「はい。あの時以来ですね。遠藤さん」

「……ははっ……、すぐ、わかったよ……。相変わらず……君は……」

 力なく乾いた笑いをしたその人は、中山さんを見て、恭太に頭を下げた。

「姉妹二人がご迷惑をおかけしまして…」

「俺だけじゃないんですが」

 ハッと顔をあげて、私を見る。

「桃井さん……でしたか」

「……はい」

 深く頭を下げながら

「中山理穂と遠藤理圭の父です……」

 と言った。

 恭太は五年生の時に会ったらしいが、私は会ってない。多分、私が錯乱してるうちにお父さんとお母さんは会ってるんだろう。

「あの……今、話していたのですが……理圭さんは、理圭さんはどうしてらっしゃるんでしょうか?」

 一瞬、躊躇した後ポツリと教えてくれた。

「病室に……、入院してまして……」

 ずっと黙っていた中山さんからすすり泣きの声が聞こえる。

 中山さんのお父さんを連れてきた大学の職員は、詳細を聞きたいから、と中山さんを連れて行ってしまった。お父さんも一緒に行こうとするのを、恭太が止めた。

「待って下さい、遠藤さん!今回の件はともかく、僕らは彼女達がどうなってるのか聞く権利があると思います。」

 ゆっくり振り返ったお父さんは、観念したように頷いた。


 今度は中山さんのお父さん、恭太、私の三人になった。ハル兄は、後で聞くから、と席を外した。中山さんのお父さんに気をつかったのだろう。

「今、理圭は入院してる、と言ったよね。……。精神科病棟で隔離してるんだ……」

 引きこもった、とは聞いたけどそこまで精神を病んでしまったのかと、驚愕した。

「ああ、いや、君達だけのせいではないんだ。あの後も色々あってね…。」

 中山さんのお父さんは、ポツポツと話し始めた。


 離婚することになった理由に、奥さんが双子のうち姉の理圭に対して冷たかったことが主な原因だった。二卵性だから似てない二人。どちらかというと母親似の理穂をかわいがり、理圭はあまりかまってもらえなかったらしい。

 結局、理穂は母親に引き取られ、母の姓の中山を名乗り引っ越し、理圭は遠藤のまま父親と暮らした。

 仕事が忙しくかまってやれないぶんだけ甘やかしてしまった、とお父さんは言った。

 思い出の中のリカちゃんは、常に周りに友人がいて、人に高圧的に接する女王様のような女の子だった。


「引っ越した後も……その……恭太君のことを引きずっていてね…。キレイ目な男の子と付き合っては、別れる…を繰り返して……」

 そのうち、周りの友達に「私はもっとカッコいい子と付き合ってたことがある」と吹聴しだした。でも友人達は、そんなにキレイでカッコいい男の子がいるわけない、と理圭を嘘つきと罵った。

 付き合ってた事実は嘘だけど、確かに恭太を見てしまったら、キレイ目男子のハードルは上がるだろう。そういや中山さんも、イケメン食いとか言われてた…。

 そっと恭太の顔を見ると、キレイな顔は冷たく固まったままだ。ただ、繋がれた手だけが暖かい。


 中学では友人も出来ず、高校生や果ては大学生等と付き合っては別れるを繰り返すうちに、躁鬱になってきた。

 気分が上がっていれば、街に出て深夜まで遊び補導され、ふさいでいれば家に引きこもり学校にも行かない…。

 そうこうするうち、何やら街で出会った怪しい男性と親密になり、彼に振り回されるようになる。益々、躁鬱は深くなり、とうとう自傷行為をし出したので、病院に隔離した。


 自傷行為…。

 この言葉を聞いて胸がずくんと冷えた。

 私がやったことと同じことをリカちゃんもした…。


「私も……どう扱ったらいいのか……戸惑っていまして、対応が遅くなったことは否めません…。」

 入院してる間に、離婚した母親と理穂が見舞いに来た。

 理圭の状況を聞いて、深く関わるつもりはなかった母親だが、親戚に言われて仕方なく来た……のだが、それが理穂を巻き込むことになるとは思わなかった、とお父さんは苦悶の顔で言った。

 元々、双子。離れている時間は長かったけど、すぐ打ち解けて、理穂だけよく見舞いに来るようになった。

 普通、隔離されていたらそうそう面会は出来ないけれど、理穂と会うことで躁鬱が和らいできたことにより、病院側も許してくれていたそうだ。

 その裏で、理圭は理穂に過去の話を自分の都合のいいように話して聞かせていた。


 すごくキレイでカッコいい彼氏がいたのに、彼の幼なじみに卑怯な手段で奪われた。私は悪くないのに犯人扱いで、引っ越した…。そこから私の運命は変わってしまった…等…。

 最初は理穂も半信半疑だったのだが、何回も聞くうちに理圭の自己陶酔に一緒に酔わされていく…。


 そして、運悪く私達と出会ってしまった。

 お姉ちゃんを貶めた私と、お姉ちゃんが愛して止まない元彼と……。



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