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あの時、恭太を止めたのは正解だった。
あんな大勢いる前で、このことを暴露するつもりだった恭太が怖い。
でも、まさか中山さんがリカちゃんと姉妹だったとか、まさかまさかサークル資金を不正に使い込んでたとかの話になるとか思ってなかった。
でっ……でも……今、1番気になるのは……コレ、コレですよ!!
テーブルの下で繋いでる恭太の手。
学食では各自授業が始まるから、と別れるまでずっと腰を抱かれたままだった。
放課後、この部屋で待ち合わせて隣に座ると、すぐにテーブルの下で手を繋がれた。最初は私の手を自分の膝に引き寄せて握ってるだけだったのが、そのうち指と指をからませてきて、今はガッチリ繋がれてる。
恭太が中山さんを追いつめてる間、ずーっとこのままなのだ。気になって恭太の話に集中できないいいい!
「よく……調べて見ないとなんとも言えませんが、事件として取り扱えるレベルかと思います」
この言葉でハル兄の隣に座る、メガネをかけたカッチリした印象の男性を見た。服装は黒いシャツにコットンパンツと、いたって普通なのだが、どこかに折り目正しさが漂う。
「今日、私は非番でしてね。参考までに意見を聞きたい、と桃井に言われてここにいるのですが…。本来なら、被害届を出してもらって、交番や近隣の警察署でお話をお聞きしたりするところです。」
「こう見えて……コイツまだ交番勤務だから」
「うるさい」
も、ものすごいカッチリした感じで、スーツとか着たら捜査しててもおかしくないくらいの貫禄なんだけど…。
「あの……わざわざ休みの日にすいません……」
昼休みの騒ぎから今ここに来てくれてる、ってことは相当急に呼び出されたに違いない。私が申し訳なくなって謝ると、男性はニッコリ笑って私を見た。
「暖人の友人で、貫地谷と言います。あなたが、姫乃さん?暖人から聞いていてお会いしたいと思っていたのですよ」
ハル兄がほんわか柔らか笑顔のメガネだとしたら、貫地谷さんはニッコリもカッチリした優等生メガネって感じだな、と思って見ていたら、恭太に繋がれた手がぎゅうと締めつけられた。
チラと横を見たら、じとっとした目で見られた。
「……あっ……あんたばっかり…、なんなのよっ!!」
絞り出した声が段々怒号に変わる。中山さんの目線はガッチリ私に向けられていた。
「お姉ちゃんがあのあとどうなったか知ってるの!?」
あの事件の後の私は、かなり錯乱していたらしく、自分でも記憶が曖昧で、リカちゃんが転校してったことは覚えてるけど、詳細は知らない。無言になってしまった私を睨み付ける。
「犯人扱いされて、精神的にやられて、学校に行けなくなって、転校したのよ。でも転校先でもうまくいかなくて………」
だんだん小声になる。
「自業自得だろ」
中山さんが傷ついたような顔で恭太を見たが、恭太は冷たい目線を返しながら低い声で言った。
「アンタこそ、知らないだろ。あの後、あの女が何をしたのか」
「あの後!?」
つい、私が聞いてしまった。
「俺が意識を取り戻した後、病院に来た。で、なんて言ったと思う?」
そんな話聞いてない。中山さんを見ると、彼女も知らなかったようで、不安そうな顔になった。
「さっきのアンタと同じだよ。ここぞとばかりに姫乃の悪口言って、自分から落ちるなんて信じられない、そんな女とは離れた方がいい……って」
私はここまで聞いて分かってしまった。
多分…いや絶対、それを言われた恭太はキレた。
もちろん女子に手を上げたりはしなかっただろう。でも、その分精神的に圧をかけるような何かをしたのだ。その結果、学校に来なくなって、転校して……に繋がるのだろう。
「それに……あの時正常じゃなかった姫乃には知らされてなかっただろうけど、ちゃんと刑事が来て捜査してったんだよ。そして、姫乃が自分から落ちたって結論になった。でも詳細は当事者にしか知らされてなかったんだ。」
当事者は知っていた?
恭太は落ちてきた私を見て、わかったって言っていた。
でも中山さんは?リカちゃんから聞いてなかった、ということ?
それを証明するかのように、中山さんはあっけにとられた顔になって、恭太を見ている。
「じゃ……じゃあ、お姉ちゃんは、やってないって認められてたのね……?」
「そう」
「じゃあ……なんで?……なんで、私にここまでやらせるのっ!?」
泣き叫んだ一言で皆が止まった。
やらせる?
「どういう……こと?」
今までの行動はリカちゃんの指示だったってこと?
「そもそも、君達双子は別家庭なんだよね?もう片方のリカさんは今どこにいるの?」
恭太から大まかな説明を聞いたのだろう。ハル兄が言った。気づけばいつの間にか貫地谷さんはいなくなってる。込み入った話になってきたので退席した、とハル兄が教えてくれた。
そこに、コンコン、と控えめなノックの音がした。




