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ずっとこのままで  作者: キョウ


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 思い出せない。

 以前どこかで会ったことがあっただろうか?

 でも、あそこまで言われるくらい恨まれてたら、ちょっと会ったくらいの知り合いじゃないよね?

 ずっと側にいた恭太だって、最初は別に中山さんに反応してなかった。

 恭太がらみで知らないうちに恨まれてる……ことは考えられるけど、どうもそういう感じでもない気がする…。

 中山さんに会った日から、ずっと考えていたけど、どうにもわからない。


 わからないことがあと1つ。

 大学の保険管理センターの人に呼び出されて聞かされたのだか、畑中さんが自主退学していたのだ。

 最近、ストーキングされることもなかったのはそういうことだったらしい。

 ハル兄にも伝えたけど、

「ああ、センターから連絡が行ったんだね」

 と、既に知っている口ぶりだった。

 安堵したのと同時に、一体何があったのか気になる。けれど、センターに聞いても退学理由など教えてもらえるわけもなく、向こうもこれでストーカー問題は解決した、という認識だった。


 最初はストーカー対策のため、と言って一緒にいてくれてたハル兄に、もうストーカーの心配はなくなったから送り迎えやランチ等、一緒にいなくても大丈夫だよ、と言ったら即行却下された。

「ひめちゃん。ストーカーがいなくなったからって、僕がひめちゃんとお付き合いしたい気持ちはそのままだよ。だから、ひめちゃんにアピール出来る機会(チャンス)をなくさないでもらえるかな?それでなくても恭太くんより不利なんだから」

 最後の方は小声で言ってたけど、しっかり聞こえてしまいましたよ。

「えーと、じゃあハル兄の予定があったりしても、無理矢理スケジュール変更とかしない程度でお願いします。ランチも友達と食べたりもしたいし…。」

 と提案したら納得してくれた。恭太なら全く聞く耳も持ってくれないだろう。って、また比べてる。

「じゃあ、早速だけど、明日のランチは江奈と食べるから」

「もう?早いな」

 クスクス笑いながら、いつもの柔らかい笑顔で許してくれた。


 で、本日久しぶりに江奈とランチなのだが、これまた久しぶりに学食を利用してるので、恭太に会わないかとヒヤヒヤしている。

 ハル兄とのランチはストーカー対策もあり、なるべく人が多く集まる所は避けて、大学内のベンチや休憩所で、買ってきたパンやコンビニ弁当だったり、大学の外に食べに出たりしていた。

「大丈夫だよー!最近の上村は、昼になると女子に群がられる前に、サッとどこかに消えて、授業ギリにいつのまにか戻って来るんだよね。あんまり学食(ココ)でも見ないよ」

 江奈はこともなげに言いながらナポリタンを食べてる。

「そう……」

 私は最近食欲がぐっと落ちてしまったので、サラダとミネストローネだけをチビチビ食べていた。


 あれから恭太と10日くらい会ってない。

 一度見かけたけど、その後はこちらが避けてた、というのもある。

 恭太は案の定実家に来たりしてたらしいが、私が綾乃お姉ちゃんのとこに逃げている、とお母さんから聞いてからは、来てないらしい。

 最初は頻繁にかかってきた電話もメールも、今はない。電話は着信拒否にする勇気もなくて、ずっと音消しにしてある。メールは見るのが怖くて開封すらしてない。メッセージアプリも既読はつけてない。

 あんなに泣いてた涙も最近では枯れ果てたのか、あまり出ない。その代わり無表情でボーっとしてるらしく、そんな状態を見てはハル兄や江奈に心配されてた。

 これで良かったんだ…。

 自分を無理矢理納得させようとしてる。

 けど、大学や街で恭太と似たような体格の人を見かけると、目で追ってる自分がいて、無意識に恭太を求めてることに気付く。

 自分で手放して自分で求めてる。

 バカじゃないの?

 ああ、ホラまたこんなこと考えてると、顔が無表情になってボーっとしてるんだ……と思った時、

 ダンッ!

 と、サラダの真横にペットボトルのコーヒーが、勢いよく置かれた。

 置かれた、っていうか叩きつけられた?

 横を見ると、こちらも無表情な中山さんがいた。


 どうしてこうも遭遇するのか、と思っていたが、今回は違うようだ。わざわざ私を探して来たらしい。この人の多い学食を、私を断罪するための舞台にするべく……。

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