表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ずっとこのままで  作者: キョウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/40

21

 とうとう言ってしまった。

 恭太を拒絶する言葉を。

 ひどく傷ついた顔をさせてしまった。

 あんな顔をさせたかったわけじゃないけど、離れるとなったらどうやったって結局恭太を傷つけるのだ。

 そして私にも傷がついてる…。

 でも、これはいいの。

 半身を引き裂かれたんじゃないか、というくらい心が痛いけど、私がそれだけ恭太を好きだった、ということだから…。


 自ら落ちたことに対して、小さい頃にはただ漠然とした不安だけだったのが、自分の身を盾にして脅迫したようなものだと気づいた時には、自己嫌悪におちいった。

 恭太の罪の意識を利用して側にいてもらっているとわかってても、彼の側にいたかった。


 でも、もうそれもおしまい。

 幸いにも彼には知られていないだろう。私の醜い心根を。それだけは絶対に知られたくない。

 たとえもう会えなくても、恭太に軽蔑された私でいたくない。


「ひめちゃん?大丈夫?」

 多分、何度か声をかけられてたんだろう。心配そうなハル兄の顔が除きこむ。

「う、うん…。ゴメン。ハル兄帰るとこだったよね……」

 気づいたらリビングのソファーでハル兄に肩を抱かれていた。

 あわてて離れようと腕をつっぱったら、その手を逆にひっぱられ抱きしめられてしまう。

 知らない男の香りに、恭太以外の男の人に触れられたことがないことに、改めて気付いた。

「僕のことはいいから、ひめちゃん、本当にいいの?」

 リビングに繋がるキッチンにはお母さんがいるんだけど、ハル兄は全然気にしてない。

「恭太くんと離れて、いいの?僕、入る隙間はあるの?」

 重ねて問われる。入る隙間?どういうこと?

 返答に困ってるとキッチンからマグカップを3つ持ったお母さんが向かいのソファーに座った。

 さすがにハル兄は私を離して座り直した。

「姫乃、恭ちゃんと何があったのかは聞かないけど、本当に別れていいの?」

 今までのことをずっと見てきただけに、お母さんの言葉は刺さる。

「でもって、ハル君は姫乃を狙ってるの?」

 臆面もなく超直球なお母さんに、私があわあわしてしまった。

「ひめちゃんが、恭太くんと別れるなら次の相手に立候補したいな」

 ハル兄は真っ直ぐ私の目を見て、柔らかく微笑んで言った。

「そうねぇ、いとこ同士は結婚できるしねぇ」

 お母さんがとんでもないことを言い出した。

「お母さん!私、しばらくお姉ちゃんとこ泊まる」

 話を変えようとしてあわてて言った。ハル兄はきょとんとして聞いてきた。

「どうして?綾乃ちゃんの所からじゃあ大学遠いでしょう。恭太くんを避けるため?あんな状態でも?」

「「甘い!」」

 お母さんとハモってしまった。

 多分、明日は私が逃げられないように早朝から来るだろう。平日なら授業中は避けられるが、明日は日曜日だし捕まったら最後だ。

「恭ちゃんなら朝から来るわよ。さっきそんなメール来たし」

 こともなげにお母さんは言う。もうメール来てるのか。早いよ。やることが。

「お母さんは、恭ちゃん推しなんだけどなー」

「推し、とか言わないで」

「でも、お母さんは恭ちゃんでもハル君でも実はどっちでもいいの。」

 ふざけてたと思ったら急に真剣な顔で、私に向かう。

「姫乃が幸せになれる人だったら、どっちでも、誰でもいいの」

 急に親心を持ち出されて、ぐっと詰まる。かつて心配かけまくっているので、そういうのに弱い。

 とりあえず、簡単に支度して綾乃お姉ちゃんの所に向かった。

 ハル兄が当たり前のように送ってくれたが、ずっと手を繋がれてるのが違和感で最後まで慣れなかった。それだけ、恭太と手をつないでたんだ、と思ったら胃の奥がきゅんと疼いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ