第三十一章:アリシアとケイティの契約
むかつく水の精霊は消滅しましたが、呪いの解除方法はわからずじまいです。
アリシアはケイティを百年以上苦しみ続けていた地獄から解放できるのか…….
それとも……
最低な水の精霊を消し飛ばした三人は、
温泉街へと戻ってきた。
アスタロテは再び溶岩浴へ行くことにする。
「それでは……」
「アリシア」
「何かあれば話しかけてくれ!」
「ケイティを頼んだぞ」
アスタロテはウインクしながら、
飛び立ち火山に戻っていた。
「もちろん!」
アリシアは笑顔で、
妻を見送っていく。
「アリシア……」
「電報どうする?」
ケイティは内容をどうするか、
迷っているようだ。
「うーん……」
「シアンはあなたのことを言っても……」
「来ない可能性が高いわ」
「ここは作戦が重要よ!」
「でも嘘つくのは良くないわ……」
「仕方ないのよ!」
「あなたがこれから何千年も、」
「苦しみ続けるのと……」
「小さい嘘をつくのどっちがいいの?」
「解放されるかもしれないのよ?」
「地獄から!」
二人は温泉街の外れで話し出す。
ちなみにトルマリンは、
側にいて待機している。
恐ろしく無関心な馬だ。
「わかった……」
「もう嫌だし……」
「解決するなら……」
「そうよ!」
「今から言う内容で送りましょう!」
「メモするわね」
ケイティはメモ帳とペンを取り出す。
「んん……」
アリシアは咳払いして、
とんでもない内容を話し出す。
「シアン」
「この前は謝れずに……」
「勝手に立ち去ってごめんなさい」
「あなたのこと大好きよ」
「ずっと側にいてくれた優しい家族で、」
「私の姉のような存在」
「いつも守ってくれてありがとう」
「でも私は……」
「ある街を救うために……」
「呪いにかかってしまったの……」
「水の精霊との契約で……」
「体がスライムみたいになって……」
「永遠に生き続け……」
「水の精霊の跡継ぎにされてしまうの……」
「怖いわ」
「早く辺境の温泉街のギルドにきて……」
「あなたに会いたい……」
「アリシア」
「どうかな?」
アリシアはなぜか自信満々に聞く。
「ちょっとやり過ぎじゃないかな?」
ケイティは少しだけ引いている。
「ええー!?」
アリシアは不満げな顔になってしまう。
「別れた元カノに手紙を、」
「送ってる感じがするし……」
「あとおびき出そうとしてるよね?」
「よくわかったわね!」
「どう!悪役令嬢ぽかったでしょ?」
アリシアは誇らしげな顔で、
ケイティを見つめるが……
「うーん……」
「暗殺しようと企んでる諜報員かな……」
「もういいわ!」
「早く行きましょう!」
「着いたら早く送ってよ!」
「なんであなたが怒ってるの……」
ケイティは困惑する。
二人は勇敢なトルマリンに乗り、
温泉街まで戻った。
「ギルドに入りましょう!」
アリシアはケイティの手を、
引っ張って中に入る。
「もう溶けちゃう……」
ケイティが突然告げてきた。
「ごめん!」
「大丈夫?」
アリシアは慌てまくるが……
「冗談だよ~!」
ケイティは明るい笑顔で、
アリシアを茶化し……
電報の前に立って、
メモの内容を入力する。
「住所は王国の辺境、」
「アリシアの屋敷宛てに送ってね」
「わかったわ」
「送信完了」
ケイティは一分ほどで内容を入力し、
送信を終えた。
「ありがとう!」
アリシアがお礼を言った瞬間……
空間が歪み始める。
「アリシア様!!!」
シアンが心配して、
転移魔法で駆けつけてきた。
いくらなんでも早すぎる。
まだ一分も経過していないぞ……
「良かった……」
シアンはアリシアを、
抱きしめて離さない。
「シアン」
「久しぶりね」
「来てくれてありがとう」
「当たり前でしょう」
「それで何があったのですか?」
「実は……」
「呪いの解除方法が、」
「わからないの……」
「呪いをかけた水の精霊はどこに?」
「私が電撃で千年いたぶり続けますか?」
転移魔法を準備し始める。
「私とアスタロテが倒しちゃったし……」
「水の精霊が言うには……」
「スライムになっても……」
「愛してくれる人がいれば……」
「呪いは解けるって話なのよ」
アリシアは事情を説明していく。
「なるほど」
「私はアリシア様が……」
「ドロドロのスライムになっても……」
「問題なく愛せます!!!」
シアンは平然と言い放つ。
「そうじゃなくて!」
「他に方法はないの?」
「難しいですね」
「呪いならババアを連れてきます……」
「あと魔法省から本も、」
「パクってきますので……」
「しばしお待ちを……」
シアンは転移魔法で、
屋敷に戻っていく。
「何!?」
「急に飛ばさないでよ!」
「シアン!?」
ベアトリスが寝間着のまま転移魔法で、
飛ばされてきた。
本当に不憫な人である。
「ベア……」
アリシアはベアトリスに抱きつく。
「アリシア!」
「無事だったのね」
「嬉しいわ」
「あの女は急に転移させたの!」
「邪悪だわ」
「ここ数日落ち込みがちで……」
「クララが付きっきりで……」
「慰めてたのに……」
「全く人使いが荒い執事だわ……」
ベアトリスは不満をぶちまける。
「ベア……」
「卵は大丈夫?」
「ええ」
「様子を見てるけど、」
「特に変化はないわ」
「むしろガランドのじいさんが、」
「毎日嬉しそうに話しかけてるわ」
ベアトリスはベビーベッドに卵をのせて、
夜はそのそばで、
寝ていることは黙っておいた……
「ありがとう!」
「アスタロテにも伝えておくね!」
(ベアトリスに感謝せねばな!)
深刻な話をする前に、
一番気になっていた卵の件を、
聞いたのであった。
「ところでさ……」
「話が変わるけど……」
「呪いについて詳しくないかな?」
「え?」
「何があったの?」
「話してみて」
「実はね……」
アリシアは経緯を、
全てベアトリスに正直に話した。
「あなたが呪いにかかったのね」
「ケイティさん」
「はい……」
ケイティは気まずそうに話す。
「それにしても、」
「理不尽極まりないわ」
「呪いをかけた本人が消滅しても……」
「解除されてないと?」
「その通りです……」
「ベアここじゃあれだから……」
「部屋に来てくれる?」
「わかったわ」
二階の部屋に入る三人。
「じゃあ大丈夫だから……」
「見せてちょうだい?」
「わかりました……」
「お見苦しいですが……」
そう言ってケイティは、
黒いスライム形態になる……
「アリシアさんのおかげで……」
「どうにかなってるんです」
「これは……」
ベアトリスはため息をつく。
「ご、ごめんなさい」
「怪物ですよね」
ケイティはまた泣きそうになる。
「そんなことないわよ」
「むしろ呪いをかけた怪物が憎いわ」
ベアトリスは珍しく怒り狂っている。
「正直言って……」
「呪いの解除方法が、」
「本当かも分からないわ」
「でまかせの可能性もあるし……」
「考えつく方法は……」
「二つよ」
「一つ目は言ってた通りの方法ね」
「二つ目は呪いを他者に分け与える方法よ」
「え?」
「そんなことして、」
「大丈夫なんですか?」
ケイティは何とか元の姿に戻る。
「本人には強く作用する呪いでも……」
「他人に移すと弱くなる可能性もあるわ」
「現状よりはマシになるわね」
「ただ問題はそんな人間が……」
「いるかどうかってこと……」
「私が呪いを半分貰うわ!」
アリシアはケイティの肩に手を置いて、
平然と言うが……
「ダメよ……」
ケイティは当然のように止める。
「何言ってるの?」
「紳士淑女たるもの……」
「困っている人がいれば、」
「助けるのは当然でしょう?」
「別に地獄で永遠に拷問されるとか……」
「三百メートルの巨人に、」
「なるわけでもないし!」
(それだけ大きくなったら……)
(余と戦えるな!)
アスタロテは話を聞いて、
なぜかテンションが高くなる。
「そうだけど……」
ケイティはまたスライムになりそうだ……
「それにスライム化の能力を、」
「コントロールできたら強くない?」
「世界最高の諜報員か……」
「色々な姿になれるまで、」
「修行するのも楽しいかも!」
アリシアはなぜかワクワクしている。
「それでどうすればいいの?」
「契約をかわすのよ」
「まあ呪いの譲渡は私も手伝うわ……」
ベアトリスは姪っ子に呆れつつも……
手伝ってくれるようだ。
「あとね……」
「左手の手の甲に刻印ができるの」
「二人は永遠に離れられなくなるわ」
「決断しなさい」
ベアトリスは選択肢を与えてくれた。
「問題ないわ!」
アリシアは解決方法が、
わかって大喜びしている。
(さすが余の妻じゃ!)
アスタロテも同じように喜んでいた。
火山の麓が少し揺れたのは気のせいだ……
「私は……」
「あなたを巻き込めないわ……」
「重すぎるもの」
ケイティは結局スライムに、
戻ってしまった……
「ダメよ!」
「もう一人で抱え込まないで」
「永遠に苦しむのはおしまい」
「こんなチャンス二度とないわよ?」
アリシアはケイティが、
一番逃れなれない卑怯なやり方で、
選択を強要する。
「わかった……」
「お願いしても良いかしら?」
「大変なことになるかも知れないけど……」
「刻印だって……」
「刻印なんて問題ないわ!」
「永遠の証って思えば安い物よ」
「えへへ!」
アリシアは言ってることが、
めちゃくちゃだ……
「本当に馬鹿ね……」
「でもありがとう」
「アリシア」
ケイティはスライム状態で涙を流す。
「じゃあベアお願いできる?」
「お願いしますベアトリスさん」
二人は手をつないで、
ベアトリスに託す。
「わかったわ……」
「始めましょうか」
「まあすぐに終わるけど……」
そう言ってベアトリスは、
呪いの譲渡を始める。
「すごいパワーが体を、」
「包み込んでる感じがするわ!」
アリシアは急に上腕二頭筋を揺らし始める……
「アリシアまだ終わってないわよ……」
ベアトリスは冷静に、
ツッコミを入れていく。
「もう笑わせないでよ……」
ケイティは小刻みに揺れている。
「終わったわ」
ベアトリスは無事に役割を果たした。
「早いわね!」
「うっ……」
「体が……」
アリシアは急に膝をついて、
苦しみ始める……
絶対にわざとだろう……
「だ、大丈夫!?」
「まさか……」
ベアトリスは慌て始める。
「アリシア!」
ケイティは何と素早く人間形態に戻れた。
「健康になった気がするわ!」
「これで物理攻撃にも強くなったわね」
アリシアは自称悪役令嬢なので、
おふざけも次元が違う……
「アリシア様!」
「遅くなりました!」
シアンが転移魔法で戻ってきたが……
「あ!シアン!」
嬉しさのあまりアリシアは、
背中から黒い触手が生えてしまう……
「手遅れでしたか……」
「大丈夫です!」
「何があっても私は……」
「アリシア様を愛し続けます」
シアンはさすがに愛する人の変貌に、
ショックを受けたが……
アリシアは触手を上手くコントロールして、
シアンを引き寄せる。
「これ便利ね!」
「史上最高の触手持ち悪役令嬢になれたわ!」
「そうですね!!!」
「さすがアリシア様です!!!」
シアンもテンションがおかしくなっている。
アリシアは一人で大爆笑していた。
(シアンは本当に頭がおかしいの……)
アスタロテはツッコミを入れるのであった。
調子に乗って背中から触手を四本出して、
ベアトリスとケイティを、
引き寄せて抱きしめる。
「もう……」
「でも前よりも……」
「コントロール出来てる気がする……」
ケイティは頬が緩んでしまう。
「いや出来てたわよ」
凄まじい状況を無視して、
ベアトリスがケイティを褒める。
「無事に成功したのね」
「愛の力じゃない?」
ベアトリスは優しく話しかけ続ける。
「そうかもしれません」
ケイティはアリシアを愛おしそうに見つめる。
ようやく彼女は自由になれた。
人生が再び動き出した。
最愛の人と一緒に。
ベアトリスのおかげで二人は呪いを分割して、一生離れられなくなりました。
アリシアは強力な触手持ちの悪役令嬢となったので、戦闘力が飛躍的に向上。
ケイティはようやく救われました。
次回はアリシアが最強の鎧を手に入れる話になっていきます。




