第二十九章:ケイティの過去
ケイティの呪いが明らかになります。
アリシアはケイティを救えるのか……
気が気でないアリシアは、
風呂にすぐ入って出てきた。
令嬢らしくないが、
そんなことは言ってられない事態だ。
「お風呂出たよ!」
「ケイティ!」
「ちょっと……」
「大丈夫!?」
アリシアは驚愕し、
ケイティに駆け寄るが……
衝撃の場面を目撃してしまう。
なんとケイティは、
黒いスライムになっていた……
「見ないで!」
ケイティは見られた恥ずかしさと、
絶望から叫んでしまう。
「ご、ごめんなさい!」
アリシアは急いで顔を、
両手で覆い後ろを向く。
「酷いことを言って、」
「ごめんなさい……」
「そのまま話を、」
「聞いてくださりますか?」
ケイティは泣きはらした表情で伝える。
「わかったわ!」
「後ろ向きでいいなら……」
「出て行かないよね?」
アリシアは念のために確認する。
「その……」
「上手く動けないし……」
「平気なの?」
「たまになってしまうの……」
「……そうなんだ」
「大変だね……」
「気づかなくてごめんなさい」
「……慰めないで」
「私は……」
「あなたを……」
「利用しようとしてたのよ」
「どういうこと?」
「私ね」
「子供の頃……」
「村を救うために……」
「水の精霊と契約したの……」
「うん」
「続けて」
「それで……」
「村は救われて発展し、」
「街になったわ」
「でも私はある日……」
「自分が老いないことに気づいたの」
「怪我も病気にもならない」
「決定的だったのは……」
「古い友人を庇った時よ……」
「助けるためゴーレムに殴られて……」
「山から落ちても、」
「なぜか無傷だった」
ケイティは思い出して、
辛くなってしまう。
「不死身なの?」
アリシアは傷つけないように、
慎重に言葉を選んで話す。
「たぶんね」
「ほぼ不死身かな……」
「いったいどうして……」
「そうなったの?」
「そのあとね」
「水の精霊に会いに行ったの……」
「何て言われたと思う?」
ケイティは震えながら、
話し始める。
「契約した内容を聞かずに……」
「村を救うために飛びつくからだ」
「お前は我の後継者になるのだ」
「永遠の命を与えたが……」
「最終的には……」
「ドロドロの醜いスライムとなるのだ」
「お前は我以外に頼れる者はいない」
「そして解除する方法は……」
「ただ一つ……」
「醜いスライムの姿になっても……」
「お前を愛してくれる人が現れることだ」
水の精霊は醜悪な見た目のスライムに変化した。
「私は……」
「怖くて逃げたの」
「パパとママを看取った後に……」
「街から出てセカイを旅したわ」
「それでこの温泉街に、」
「たどり着いたの?」
「ええ……」
「ここの人達は……」
「皆優しくて……」
「何よりも人間と非人間族が……」
「奇跡的に上手く生活できてたの」
「皆、はみ出し者だったから……」
「そういうことだったのね」
アリシアは納得がいった。
ドワーフの職人ハイゼン。
変なアイテムショップの店主ジョン。
そしてローラと獣人キャロル。
「最初に私はスライムですと……」
「言っても皆温かく受け入れてくれたわ」
「本当に嬉しかった……」
震えて涙を流し始める。
だがスライムになっているので、
涙はわかりづらい。
「ねえ」
「そっちに行っても大丈夫?」
「ダメ!」
「来ないで!」
「醜い怪物なんだから……」
「見てみないと判断できないわ!」
「気持ち悪かったら……」
「聖剣で……」
「消し飛ばしてくれる?」
「スライムだし……」
ケイティは投げやりに告げるが……
「嫌よ!」
「さあ見るわね!」
アリシアが振り向くと……
黒いスライムと化したケイティがいた。
大きさは二メートルほどで、
奇妙な形の口がついている。
複数の黒いドロドロとした触手を、
上手く使って、
ドアから逃げようとする。
「逃げないで!」
「見てよ」
「この怪物を……」
「醜悪な化け物よ」
ケイティは全てに、
嫌気がさしてしまった。
「いい加減にしなさい!」
「じゃあなんで私と……」
「一緒にいたいと願ったの?」
「もしかしたら人間に戻れると、」
「思ったんじゃないの?」
「答えてよ!」
アリシアはドアの前に立ち塞がり、
叫び散らす。
「私……」
「人間に戻りたい……」
「こんな地獄が永遠に続くのは……」
「嫌なのよ……」
「もうこんな生活をずっと続けるのは……」
「無理……」
「助けてほしいの……」
「やっと本音が聞けたわ!」
優しく触手に触れる。
「触らないで!」
「酸で溶けるわよ!」
ケイティはわざとらしい嘘をつく。
「嘘つき」
「だったら触れた瞬間……」
「溶けてるはずよね?」
「初対面で触れてきたときに!」
「あう……」
「その通りです……」
ケイティは力なく床に、
潰れて広がってしまう。
「いい人間として大事なのは!」
「外見じゃなくて!」
「中身よ!」
「あなた言ってたじゃない!」
「王太子はゴミクズだって!」
「打算的で浮気性のどうしようもない……」
「人間ならまだしも……」
「あなたは他人を気遣える……」
「心優しい人よ」
「一緒に解決しましょう」
「うん……」
ケイティはもうボロボロだ。
だがようやく助けてくれる人に会えた。
「まずはもう一度……」
「水の精霊に会って……」
「話を聞きましょう!」
「……答えてくれるかな」
ケイティは力なく話すが……
「大丈夫よ」
「私の妻も連れて行くから」
「ダメなら……」
「聖剣と……」
「粒子ビームで消し飛ばすわ!」
アリシアは力強く宣言する。
「さっそくアスタロテを、」
「明日呼びましょう!」
「今日はもう休まない?」
「ありがとう」
「アリシア……」
震え始めて黒い液体を、
飛ばしまくる。
「もう泣かないの!」
「元に戻れそう?」
「落ち着けばできるかも……」
「頑張って!」
「あなたならできるわ!」
「一晩集中すれば……」
「なんとかなりそう……」
「わかったわ!」
「私は邪魔しないように……」
「寝るわね!」
「おやすみなさい!」
アリシアは疲れ果てて、
ベッドに飛び込む。
「おやすみ」
「アリシア……」
「ありがとう」
本当の意味でようやく救われたケイティ。
明日は水の精霊を問い詰めに行く。
果たして彼女は人間に戻れるのか?
次回は胸くそ悪い水の精霊を問い詰めに行きます。
果たしてどうなるのか。
次回もお楽しみに!




