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第6話 恋の病?

 朝練も終わってみんなで休憩していたころ。グラウンドから離れ、日陰で休んでいる俺は大きくため息をついた。


 「はぁぁ…………」

 (薫とどうやって話を広げられるか…………)


 「あらモテ男くん。恋の病か?」

 タオルで汗を拭きながら旭がやってきて、隣に座る。


 「その呼び方やめろ。別にそんなんじゃねぇよ。」


 「ふーん。そういうことにしといてやるよ。」


 ニヤニヤする旭をにらみつけていると、マネージャーの一ノ瀬玲奈がボトルを2本もってきて現れた。


 「二人ともお疲れ~!まだ春なのに今日熱いねぇ~。ほら、水分補給!」


 「おっ!さすが玲奈!気が利くぅ~!」

 旭はパァッと明るい笑顔になり、ボトルを2本受け取る。2つ一気に飲む気だコイツ。


 「ちょっと旭くん?それ、あんただけじゃないんだけど。蒼太くんにも渡しなさいよ。」


 「あはは!わりぃわりぃ。冗談だってば!ほれ蒼太。」


 ボトルを1本投げて渡してくる。それを受け取り、一口飲む。

 「一ノ瀬。サンキューな。」


 「ううん、気にしないで。マネージャーだからね。さっきは二人で何の話してたの?」


 「おぉ!聞いてくれ!玲奈!蒼太が恋のやまぃ………ばふっ!!!」


 余計なことを言う旭の口をアイアンクロウで顔面ごと塞ぐ。


 「お前、変なこと言うな!!!ったく……。」


 「わるかったってぇ~。焦りすぎだぞ~?蒼太くんよぉ~?なぁ?玲奈?」


 「へ…へぇ~…蒼太くん、恋の病かぁ~…」

 一ノ瀬は手を後ろに組んでどこか歯切れの悪い表情で苦笑する。


 「おい、だからそんなんじゃないっつーの。そんなマジになるな。」


 「え!でもさ!この前女子に挨拶シカトされてがっかりしてたじゃ…………ぐへぇ!」


 隣に座る旭に肘打ちを喰らわす。


 「お前マジで殴るぞ………」

 鬼の形相で旭をにらむ


 「い、いや…今殴った…………」


 「ふふふ。蒼太くん楽しそう。」


 「一ノ瀬。お前もそっち側か?」


 「見つかるといいね!素敵な恋!じゃあ私は片付けあるから!ばいばい!」

 一ノ瀬は足早に去っていった。


 「罪な男よ。蒼太よ。」

 去っていく一ノ瀬の背中を見ながら、旭は仏のような顔をしていた。


 「何言ってるんだお前?あとその顔きもいぞ。」


 「あ!今はお前が悪いからな!!!!このぉ……」

 旭は肘で俺の脇腹を軽くぐりぐりしてきた。


 「なんだよ…………もう…………」





 キーンコーンカーンコーン





 始業5分前の予鈴。着替えを済ませ、教室に入る。薫は俺の左斜め前の席。そのため自分の席に教室の前から向かう際、薫の席の横を通ることになる。ここしかない。


 「薫、おはよう!」

 横を通り過ぎるついでに本を読む薫に挨拶。


 「…………。」

 (ぺこり。)


 (うん。今日も会釈だけ。)


 少し落胆し、自席へ座る。

 

 机でボーっとしていると俺の前に一ノ瀬がきた。


 「…………。蒼太くん!ちょっといいかな!明日の朝練、先輩居ないから1年生好きにコート使っていいって!」

 

 「お、まじ!ラッキー!」


 「うん!それだけ!!じゃあ授業頑張ろうね!!」

 一ノ瀬はそれだけ伝えて、自席へと戻っていった。


 (明日の朝練楽しみだな。)


 



 キーンコーンカーンコーン





 4限が終わり、いつものように旭は俺の席に来て伸びをしながら昼飯を誘う。

 「んぁぁぁぁ……疲れた…………やっと昼休みだよ…………蒼太…?渡り廊下で昼飯食わね?」


 「あぁ…ちょっと………」


 俺の目線の先には、一人弁当箱をもって席を立ち、教室から出ようとする薫の姿。


 「わり、俺ほかの奴と食うわ。中庭サッカー部集まって飯食ってるっぽいぜ、そこ行って来いよ。」

自分の弁当箱を持ち、薫の後を追いかけるように教室を出る。


 薫の後を追いかけると、校舎の端っこ、校舎の外についている非常階段のような場所だ。フロアの一番端から入ることができる場所だが、わざわざここを利用する人はいないだろう。


 階段に繋がる扉の前で、俺は薫に声をかける。


 「か、薫!」


 薫は背中をビクっと震わせ、こちらを見る。驚いた表情をしている。


 「あの…一緒にご飯食べないか…………?」


 薫の目はどこかさみしそうな感じがする。


 「私となんか食べてもおいしくないですよ…。蒼太くんと食べたい人ほかにたくさんいますから。」


 薫はそういって振り向き、階段へ向かっていった。

階段で座って食べようとする薫。俺は薫の少し一段下に座り、弁当を開ける。


 「えっと…だから…………私とは…………」

 薫は困惑しているようだ。箸入れを両手で握り、どこか心配そうな目で見てくる。


 「これは、たまたま食べる場所が被っただけだ薫。俺だってそういう気分の日あるんだよ。な?これで文句ないな?」


 「…………はい…。」


 薫は下を向いてうなずいた。重い前髪と、眼鏡で、表情はわからなかった。


 「まぁ、たまたま被ったわけだし、委員会も一緒だから、何か話そう。」

俺は薫を見上げ、ニヤつきながら語り掛ける。


 「薫、じゃあ…あれだ。好きな本とかの話をしよう。」


 「蒼太くんって…本読むんですか……?」


 「読まない。」


 「え?」


 「薫の好きな本の話してくれよ。俺、聞きたい。」


 「私の好きな本とか…知っても意味………」


 「意味あるとかないとかじゃない。とにかく、聞きたいから聞くんだ。」

 

 「この前読んだ……ミステリー小説は面白かったです…。」


 「薫ミステリーとか読むんだな!おすすめ教えてよ!」

 ぼそっとだけど、自分のことを話してくれたことに俺は嬉しくて少し声がうわずってしまった。


 「図書室の一番大きな棚に目玉としておいてあります。」


 「ほぉ~今度読んでみようかな。」


 一通り会話が済み、二人弁当を食べる。

 「薫の弁当、お母さんが作ってくれてんのか?」


 「はい……」


 「やっぱりか!薫のお母さん結構凝った弁当作るよなぁ~運動会の日とかえぐかったよあれマジおせちかよって。」


 「そうだね………。」


 なんとなく表情が柔らかくなってホッとする。


 「うし、飯も食ったし、教室戻るか!」

 弁当箱を風呂敷で締め、階段から立ち上がる。


 「はい…でも…………。」

 薫は何かを気にしているようなそぶりで弁当箱を握りしめる。

 

 「ん?どこか用事あるのか?」


 「すこしだけ…図書室に用事があるので…先、戻っててください。じゃあ私はこれで。」

 薫は足早に去っていった。


 


 俺は教室に戻った。教室に入ると、旭が俺になんだなんだといった感じで詰めてくる。


 「ようよう、蒼太さんよぅ。いったい誰とご飯食べたんだい?」


 「別に…誰だっていいだろ。」


 「ああそうかい!なんかサッカー部ではお前は女と飯食いに行ったって噂になってるけど!」


 「勝手な噂流すなっての!ほら、もう五限始まるから、帰った帰った。」


 旭はむすっとした顔で自席へ戻る。しばらくすると薫も教室に戻り、自分の席で本を読み始めた。


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「蒼太くん……。誰と…ご飯食べたんだろ…………。」



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