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第5話 優しい人。

薫視点。

 春の訪れを知らせる桜。新しい環境。私は高校生になる。クラスの名簿を確認し、教室に入る。教室の中は様々な人でいっぱい。


 もうクラスのグループ的なものを作ってる人。今までの友達としゃべってる人。本当にいろんな人。


 極力、私は人との接触を避ける。でも……出会ってしまった。

 

 「あ…あの、小鳥遊薫…さんだよね?人違いだったらいいんだけど…俺…瀬戸口蒼太なんだけど…しってる?」


 本に目線を向けていたのに、思わず彼の顔を見た。そして震えた小さな声でつぶやいた。


 「…え?そうちゃ……蒼太…君…?」

 

 言いかけてしまった、昔の呼び名。ダメ。私は彼といっしょにいるような人じゃない。

中学で離れたはずなのに。再会するなんて。


 蒼太くんはやっぱりすごい人だ。中学でもクラスで人気者。今だって、自然と彼の周りには人が集まる。私なんかが関わるような人じゃない。


 

 「図書委員会は小鳥遊と瀬戸口で決まりだな。」



 それでも彼は私を気にかけてくれている。委員会が被ったのは偶然かもしれない。でも、必死に私に話しかけてくれる。ごめんなさい。きっと…思ってる薫じゃないんだ、私。それでもこれは…………仕方ないことだから。



 「昔は…薫結構無邪気だったよな。今はなんか凛としてる感じ。でも、そういう落ち着いてる薫もいいと思うよ!俺!」



 明るい表情で励ましてくれる。やっぱり………優しい人。優しくしないでほしい…。私も普通になれたらって…期待してしまうから。




 その日の夜。私は自室で本を読んでいた。ふと…………窓の外を見る。彼の部屋の電気がついている。


 (今頃…何をしているんだろう。今日の委員会で、めんどくさいって思ったかな。)

 (幼馴染だから仕方なく接しようとか……どっちでもいい。どっちも正しい。)


 カーテンを握りしめる。


 (でももし、あの頃みたいに、『そうちゃん!!』って呼んだら、明るく笑ってくれるのかな…。)

 (ばかみたい…………。)


 勢いよく私はカーテンを閉めた。自分だけの世界を作るように。

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