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第4話 久しぶり。

 5限の授業が終わり、クラスのみんなは教室移動の準備をしている。6限は、今日決まった委員会の顔合わせがある。


 (なんだか緊張するな…)

 図書委員会の集合場所の教室に行き、クラスごとに座る。薫はすでに座っており、本を読んでいた。俺はその隣の席に座った。


 「…………。」

 「…………。」


 二人とも沈黙。


 「あ、あの!二人委員会が一緒なんて…偶然だな!」

 (嘘。偶然なんかじゃない。確実に狙った。)


 「そうですね。」

 俺が話しかけると、薫は視線は本を見ているまま一言だけつぶやいて会話は終わった。


 しばらくすると図書委員担当の先生が来て、委員会の業務について説明する。週に一回、クラスごとに図書室の貸し出しや整理を放課後に行う。ほかにも様々な仕事があった。


 「早速今日から委員会の仕事にあたってもらう。1年1組からやろう。えーっと…小鳥遊と瀬戸口だな。よろしく頼むぞ。図書室の貸し出しとかはまだできんから、簡単な書類整理だ。それじゃあ解散!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺たち二人は空き教室で図書室の貸し出し記録や、リクエスト本一覧などの書類整理の作業をすることになった。貸し出し記録をチェックし、未返却がないか確かめる。リクエストの本を一つの紙に一覧としてまとめる。


 教室で二人きり。どうにか話せないかと俺は悩んでいた。薫は淡々とリクエスト本をリスト化している。


 「な、なぁ…薫。こうやって二人で話すの…久しぶりだな。」


 「そうですね…。」

 薫は手を止めずに返答。


 (う……また一言で終わったぞ…………。)

 「いや、中学で転校しちゃってさ、何にも聞けなくて、元気してたか?」


 「普通にしてました。」


 (普通かぁ…なんもわかんねぇよぉ…………。)

 「そ、そっか!よかった…………。」

 

 時計の針の音が良く聞こえる。会話が弾むのはせいぜい2ラリー程度。ラリーというか俺がボール拾いというか…………。


 「新しいクラス……どう?結構いい感じじゃない?みんな優しいし!」


 「はい……皆さん優しいです。」


 (まずい……ほんとに会話が続かない!!)

 「薫はさ、えっと…俺のこと覚えてる?ごめんなんか変な聞き方だけど。」


 すると薫は作業の手を止めて、数秒沈黙した。


 「…………はい。蒼太くんですよね。近所の。」


 「そうそう!よかったぁ…いやなんかどうも薫が雰囲気違ってたから…俺の勘違いかなぁ?なんて。」


 薫はなんだか震えているように見える。


 ふと昔の光景が頭の中をよぎった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「そうちゃん!みてみて!私滑り台逆から登れるようになったよ!!!」

 無邪気に笑う彼女の顔。


 「ちょっと薫!あぶないって!おちたらどうするの!」


 「へへ~、そしたらそうちゃんが受け止めてくれるもん!だいじょうぶ~…わぁ!!」

 足を滑らせ、頭から滑り台を滑る薫。


 「あぶない!」

 いそいで下で構え、薫を受け止める。


 「ははは!びっくりしたぁ…ほら!そうちゃんがいるから安心!!」


 「もう…」


 「あははは!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「昔は…薫結構無邪気だったよな。今はなんか凛としてる感じ。でも、そういう落ち着いてる薫もいいと思うよ!俺!」

 

 薫の震えは止まり、動かないでいた。


 (やば…俺なんてこと言ってんの!?めっちゃ好きみたいじゃん!はず!まずい!顔熱い収まれ………)


 「蒼太くんは……やさしいんですね……。」


 「え?」

 

 「無理に私なんかを励まそうとしてくれて…。でも大丈夫です。気を使わなくても。」


 (ちがう。俺は薫に笑ってほしいんだ。『私なんか』ってなんだよ。)

 「…………。」

 俺は何も答えられなかった。


 「私、リスト終わりました。蒼太くんは?」


 「あ、もう終わってる…………。」


 「じゃあ私はこれで。お疲れ様でした。書類、職員室に私が持っていきますから大丈夫です。」


 書類をまとめてそそくさと帰る薫を俺は眺めることしかできなかった。


 「薫!!!また明日な!!」

 

 最後に振り絞って声をかけた。ほんの一瞬、薫の背中がピクッと動いた気がした。

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