表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第7話 そうちゃん

 図書室の静寂。今日は図書委員の当番の日。俺と薫は図書室の裏、本が整理されている倉庫で作業していた。


 もう図書室に置かない本たちなどを箱に詰め、新しい本を箱から出す作業。


 山積みになっている本を綺麗に箱に詰めながら、横で同じ作業をする薫に話しかけた。


 「な、なぁ薫。この前言ってた、ミステリーの本、面白かったよ!」


 薫は一瞬動きを止めたが、すぐに作業にもどる。


 「ほ、本当に読んだんですね…。」


 「読んだよ!いやぁ〜最後の展開には圧巻だったねぇ。この、分かるかなっ、ミステリーならではの最後の怒涛の伏線回収!」


 俺は薫の横顔を見つめながら、作業なんかそっちのけで身振り手振りしながら語る。


 「そう…ですね。最近読んだ中で、結構面白い部類でした。」


 「あ、やっぱり?初めて読んだ俺でも分かりやすくてめっちゃ面白かった。」

 (よし…ちゃんと会話できてるぞ…)


 「蒼太くんがミステリー読むの…意外です…。もっと…スポーツものとか、バトル系とかかと…」


 薫は作業の手をとめないまま、淡々と喋る。


 「んーまぁそうか…本とかはあんまり読まないからな…」

 (ま、まずい…!会話のながらが終わりそうだ…なにかネタ無いか…?)


 俺は喋りながら必死に目だけで周りの情報を見回し、話題を探す。

たまたま目に入った小説を手に取り、薫に話しかける。


 「あーえっとー…こ、こういうの!こういうエモそうなやつとか結構俺は気になるかもな!」


 手に取った本の題名は『リョウオモイ。』表紙は、男女の高校生が並び、夕焼けの空を眺めている、王道な恋愛小説の様なものだった。


 薫はじっとその表紙を眺めた後、作業に戻る。


 「恋愛小説…読むんですね。」


 「いや、読んだりはしないけど…ほら、年頃的に?こういうの興味は多少あるさ…はは。薫は読まないのか?」


 「そうですね…あまり恋愛に興味が無いので…読んだりしないです。」


 「そ、そうか…恋愛興味無いのか…。」

(なんかちょっと寂しいな…。)


 「蒼太くんは…恋愛…してるんですか…?」



ドサドサ!バタバタ!



 急な問いかけに俺は慌てて、積んであった本を倒してしまった。


 「え…、!いや、あ、本が…」


 震える手で本を集め、机の下に落ちた本に手を伸ばす。


 ゴチンっ!!


 「痛って!!!」


 起き上がる際に頭をぶつける。まずい、完全に動揺している。どんどん赤面していくのが自分でもわかる。



 「ふふ……はは…そうちゃんは…変わらないね…」



 俺はその言葉と光景に耳と目を疑う。

『そうちゃん。』薫からかつて呼ばれていたあだ名。そして、こちらを見て笑っている。あの頃と変わらない笑顔。


 

 「あっ…。」


 薫は自分の言った言葉に戸惑い、思わず自分の手で自分の口を塞ぐ。

そしてそのまま何も言わず、恥ずかしそうに作業へ戻った。


 しばらくの間沈黙が続いた。2人ともすっかり黙々と作業をしている。気まづい空気が流れる中、俺は口を開いた。


 「あだ名で久しぶりに呼ばれたな。」


 「気にしないでください…蒼太くん。」


 「え、いや、前みたいにあだ名で呼んでくれよ。そっちの方が、薫はしっくりくる。」


 「……。」


 薫は俯いたままだった。




 しばらくして、2人とも作業が終わった頃。


 「よし…!今日はこれで終わりだな。薫、良かったら一緒に帰ら………」


 「私は…もう少し、図書室いますので…お先帰って大丈夫ですよ。」


 いつも通り断られる。でも今日は薫に近づけた気がする。


 「そうか、夜道気を付けろよ。じゃあ、また明日!」


 嬉しさとこれからの期待を込めて、元気よく別れの挨拶をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ