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episode18【寝床】

華美な装飾があるわけでもない、

広い部屋


手作り感の溢れる模様の絨毯

木製の棚や、皮のソファに、木のテーブル


何の変哲もない

ただの応接間


そのソファに


「・・・・・」


レーガンはちょこんと座りこんでいた。


「・・・・・・」


そんな彼女が取りやすいテーブルの一に

アダムはコップを置いた。


紅茶が注がれていた

そのコップは、市販品には見られない、歪さと温かみを持っている。


「・・・い、良いコップですね!」


「・・どうも、ありがとう」


それ以上、何かが発されることはない。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


沈黙が二人を覆う。


落ち着かない様子の二人の気まずい時間


それを破ってくれたのは、


「すいませ~ん!遅れました~!」


エマだった。


「・・よく部屋分かったな」


「そりゃ、空いてる部屋なんてここぐらいしかないでしょ」


ソファーにコートをかけ、

レーガンの隣に座るエマ


流石に園長は、まるで気まずさなどなく、

思いがまま、当然のようにソファへ腰かける。


「校舎はいっぱいあったように見えただろうけど

 全部使ってるわけじゃないんだ。

 大体が皆の秘密基地になってる。

 ちゃんと空いてるのは、ほんとここぐらいなんだ。悪いな」


「い、いえ、全然、むしろ、私みたいなのを泊めてくれるなんて

 っていうか、理由も説明してないような・・・・」


確かに、エマは

ここに泊まりたい理由といったものは

何一つ、説明していなかった。


そして、それをアダムも聞く素振りすら見せなかった。


「・・・ウチに、ウチの園長がいつ帰ってこようと自由だ。

 そんで、どんな客人連れてきたって自由だ。」


「す、すごい信頼されてますね・・・」



「いやあ・・何か照れるなあ」


そうやって、エマは照れくさそうに笑う。


アダムの真っすぐな視線を、物言いを

受け止めるには、まだ歳月が足りないようだ。


「・・・じゃあ、まあ、布団とかの場所をレーガンさんに

 案内しようか?」


「いいよ、僕がしとく

 アダムはあんまり気を使わないで?」


「・・ああ、わかった。

 じゃあ、後はごゆっくり」


アダムがそうやって席を立とうとする。


それと同じぐらいに扉の向こうから、

床板を軋ませる規則的な音が響き、


扉を開けた。


扉の向こうにいたのは、

長いピンクの髪を腰のあたりまで垂らした

女性だった。


「ええと...」


目を閉じたままの女性は入って、

少し止まった後、


「おかえりなさーい」


エマの方へ体を向け、

暖かく、優しく、包み込むような声色でそう言った。


「うん、ただいまー」


エマは、

彼女と顔と顔が向き合い、言葉を発するまで、

じっと待ち、言葉を発する。


続いて、その女性は


「ええと、そちらの方はどちら様でしょうか

 私はイブと申します。

 どうぞよろしくお願いします」


レーガンの方にも体の向きを合わせ、

顔に顔を向け、頭を下げ、そう言った。


あまり見たことのない振る舞いに

面食らったレーガンだったが


「ご丁寧にどうも、

 私はハンナ・レーガンと申します。

 どうぞよろしくお願いします。」


ある程度、どう言う人なのか、

その振る舞いと、閉じっぱなしの目から察し、

きちんと礼を返す。


「急に帰ってきたと思ったら

 お客様を連れてきたんですね

 エマちゃん」


イブと名乗った女性は可愛らしい装飾も、

ふんわりとしているわけでもない

真っ白なワンピースに身を包んでいた。


「うん、ごめん。

 ちょっと、泊めて欲しいんだ。

 ニコとアリソンも後から来るんだけど」


あの人形たちと

似たような体型をしている気もするが

彼女らほど、常軌を逸したくびれや凹凸を

持つわけではいい。


凸の部分は大きいが

凹は控えめ、というか、

人がなり得る範囲だ。


「あら、そうなの!

 ふふふ、みんな喜びますよー

 でも、お部屋、これで足りるかしらー」


和かに、朗らかに、

笑うイブ


「教室開けてもらうか?」


「んん〜、多分、2人とも

 みんなに連れられて、誰かのお部屋で一緒に

 寝るでしょうから、問題ないんじゃないかしら」


上機嫌なのが

その花畑を跳ね回る少女のような語気から

伝わってくる。


「まあ、それもそうか」


「悪いけど、4人ここで

 寝かしてもらうよ。

 あんまり場所借りても悪いし、

 今、僕らに関わると、危ないしね」


しかし、

エマがそう言った瞬間、

イブに広がっていた花畑が散る。


「・・・・わかりました。」


一転して、

彼女が待とう雰囲気が一気に冷たくなり、

緩んでいた顔が引き締まっていく。


「私も近くにいますから、

 あの子たちの面倒はアダムたちにまかせますね?」


ずっと閉じられていた目が薄っすらと開き、

エマの方を見る。


見ている、

ようには見えたが、


瞳孔すら

白に近い灰色で染まった彼女の目には

光など、差し込みはしない。


それでも、

彼女の目は

アダムの方を向いていた。


「はい、わかった」


「・・・・いいの?」


「ええ、もちろんです。」


エマの方を向いていた。


「子供達の為にも、

 エマちゃんを苦しませるわけには

 いきませんから」


力強い言葉で

彼女はそう言う。


「・・・・」


思わずレーガンが押し黙ってしまうほどの

その威圧感は、


のほほんとアダムと話していた盲目の女性と、

同じ人物から放たれたとは

とても思えなかった。


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