↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

episode19【昔話】

しばらく経ち、


部屋の外でまた

大きな歓声が上がった。


「・・・・元気ですね、皆さん」


「子供は元気が一番ですから」


ティーポットからカップに茶を注ぐエマ、



2人分を淹れ終わると、

彼女は持ち手をつまんで、カップを口へと運び、

ちびちびと飲み始めた。


「・・・」


なぜか、

失礼ではあるのだが、


意外にも

その所作が様になる。


なぜか

品の良さを感じる。


「・・・・今、変なこと考えませんでした?」


「い、いえいえ、そんなこと!」


見た目で勘違いしそうになるが、

エマはもう六十を超えている。


それを考えれば、

別に茶を飲む機会なんて、

山ほどあるだろうから


不思議なことではないはずだが、


(ここだけ見ると、育ちのいい令嬢みたいだな、オリエ社長・・・)


どうも不可解に映った。


「・・・・んん?

 ・・まあ、でも、よかったです。

 いきなり襲撃されて、大変なのに

 まだ元気があるみたいで」


少し不思議そうな顔をしながらも、

彼女はそう言う。


「い、いやまあ・・襲われたの

 私と言うか、皆さんですし・・・・

 というか、そうです!

 襲撃!あれは一体・・・お心当たりは・・・」


「あああ・・・・・心当たり・・・」


エマは少し悩んで

こう答えた。


「・・・・ないと言えばないですし、

 被害妄想を含めるなら、あり過ぎて・・・」


笑って、照れくさそうに頭の後ろをかきながら


「・・それは心当たりあるということです?」


「そうなるんでしょうか・・・・でも、ここまでやるかなー

 そこが少しわからないというか・・・・」


「心当たりは誰なんです?」


「児童買春してた官僚とか、

 賄賂受け取ってた役所職員とか、

 良い格好見せるために、不正しまくってた警察署署長・・・とか?

 その周り?」


何やらおっかない文字列が

つらつらと彼女の口から並べ立てられる。


「・・・・」


その一人一人の特徴をあげられるたびに、

レーガンの顔が歪み、彼女の頭の中に


ああアイツかなぁ・・・


と思い当たる人物が現れては、消えていく。


何だか、全部噂や新聞で見た気がするが、

どうも発信源は全て彼女だったらしい。


「狙われそうですけど、

 あんなことまでするかとか、

 する気力も力も今あるのかっていうところがちょっと怪しいですし」


「い、色んな事されてるんですね」


「まあ、そういうタレコミの繋がりが有るって言うのと、

 そういう事を知った人は、なんでかウチにタレコミに来ちゃうので

 レーガンさんみたいに」



「それもそうですよね・・・」

「他の新聞社とか、ほんと酷いんですよ

 私たちが切り開いた道をどかどか進んできて・・・・・」


アリソンに言われた言葉で


しかもウチより購読数が多い


まで言いそうになるのをどうにか堪えたエマ



「あ、あの、白と赤の人ととかも心当たりは?」

「・・・・」


彼女は

あの人形たちの事を聞かれ、


少し顔をしかめ、上を見上げて、

考え出した。


「・・ない・・・わけじゃないんですけど・・・

 やっぱわからないです・・・かね・・・・・・」


思い当たる節はあるが、

確証ではない。


「その心当たりって言うのは・・」


「私のアレ、見ましたよね?」


「あれって言うのは・・・あの銀色ですか?」


思い当たるところと言うのは、

彼女がなったあの姿


「銀・・・ははは、確かに

 そんな綺麗な色にも見えるかな・・・・

 そう、それです。」


どこか嬉しそうに笑いながら彼女はそう答える。


管が全身に浮き上がるあの姿


「アレが出てる時、小人たちと似た感じが

 社長からしました。一体、何なんですか?」


「・・・・・・・・まあ、ざっくり言うと、

 五十年前に戦争あったのは、知ってますよね?」


「はい、もちろん・・」


今では、教科書や伝聞でしか

その事を知らないものも増えたが、


五十年前、


この国では内戦が起きていた。


当時の政府と、


現在の新政府、

その時は、革命軍であった総督側の勢力がぶつかり、


相争い合った。


その結果、

革命軍が勝ち、今の政府となったのだ。



結果としては、

総督側の革命軍が勝利したものの、


終戦時に起きた

ある事件により、


当時の政府における有力者どころか

革命軍の有力者すら


現総督、テオ・クラークを除いて


そのほとんどが

死亡してしまったのだ。


「そこで起きたいざこざと言うか、

 陰謀?みたいなのに、巻き込まれちゃって

 無理矢理、人体改造されちゃったんですよね・・・へへへ」


「ええええ!そうなんですか?!

 ・・・た、大変だったんですね・・・・・・」


「それでまあ、その改造された、僕みたいな人も割といて、

 その性質と少し似てるんですよ。例えば、傷が治るとか、体が変形するとか」


「・・・の、伸びるんですか?」


「・・・やったことはないし、やる気もないんですけど

 やろうと思えばできるかも?」


「そ、そうなんだ・・・・」


「まあ、それと関わりあるのかもしれないんですけど、

 正直、あんまりわかんなくて、はははは」


あははと

明るく振舞うエマだが

笑って済ませられるのは、


もうそれが、

遠い過去の事だからだろうか


「・・・そ、そう言えば、ちょうど」


ただ、そんな彼女も


「あの戦争って、確か終わり際に

 イーヴィルっていう魔獣が

 大暴れして、大勢死んだって

 大変だったんですよね、近代史で一番大きな魔獣災害って」


イーヴィルという単語が聞こえた瞬間、

身体が凍てつく。


(そうじゃない・・・)


顔が強張り、

明るかった顔が曇ってしまう。


「ま、まあ、そうだね、

 ・・・・そうだね・・・それがどうか・・・」


レーガンとしては

それもまた歴史の一つ


「噂だと、あれは旧政府が作ったものが原因とかなんとか聞いて

 もしかしたら関係・・・・」


大きな事件の一つ


知らない過去の一つ


(アイツはそんな名前じゃない・・・)


ただ、エマにとってはそうではない。


話しが遠くに聞こえる。

ぼやけて聞こえる。


そして、

やるせなさ

怒り、苛立ちがこみ上げてきて、


口元が震えて止まらなかった。


だけど、それは

彼女に向けるべきものではない。


何も知らない彼女には。


「・・・・・・・ご、ごめんなさい、えっと・・・」


この沈黙は、謝罪は恐怖によるものではない。


心配しているのだ。


イーヴィルというのは、

そんなに怖かったんだろうな

でも、かけるべき言葉が見つからないな


そんな優しさともどかしさ、悲しさに満ちた沈黙だった。


それが勘違いだなんて

レーガンがわかることは、決してないだろう。


(・・・・)


「すいません、すいません・・・気を遣わせてしまって」


いけない

こんな顔、こんな事、

彼女に見せる訳にはいかない。


「ま、まあ、アイツの話はともかく、

 僕の身体とあの子達は、ちょっと似てる感じがしますね」


改めて、顔を引き締め直して、

再びエマは話し出す。


(あ、アイツ?)


随分と親しみのこもった呼び方をした

それは一体誰の事なのか


わからないまま

レーガンは話を続けた。


「そ、その人体改造?って言うのをやれる人って

 今いるんですか?」


「発明した人は死んでます。

 その後の研究が誰に引き継がれたのか、みたいなことは、

 僕らは知らないです。」


「そうですか・・・でも、そう言う情報が手に入りそうなのって」


「まあ、政府ですね・・・」


「・・・・それでも、あの方の仕業ではないと?」


「ええ」


「・・・・信頼されているんですね」


「信頼・・・まあ、ある意味してるんでしょうか・・・

 嫌いなので、アイツの事は良く調べたんです。

 嫌いなので」


きらい

の三文字を際立たせ、

彼女はそう言う。



「でも、それなら、

 どうやって、襲撃犯を特定するんです?

 警察の方を頼りますか?」


「それも含めて」


そんな話をしていると、

部屋の外から、大きな歓声が響き、


ちょっとした騒ぎになっていた。


「丁度いい所に帰って来たね」


少しすると、


2人だけの部屋に、

ニコとアリソンが帰ってきた。


「只今戻しました~~~」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。