episode16【フリーフォール】
「はぁ・・・・」
力のないため息をつきながら
座り込むエマ、
そんな彼女の元へ
三人が来る。
「もう終わりましたか?」
「うん・・・なんとか、まあ、厳重注意ですんだっぽい・・・
ただ・・・・」
彼女が見た方向は、
あのならず者たちが居た所、
そこに今は
誰もいない。
「あの人たち、みんな連れていかれちゃったよ・・・」
皆、あの騎士たちが
連れて帰ったのだ。
「色々、聞きたいことあったんだけど、
まあ、起訴されなかっただけ
ありがたいってことにしとこ」
そうは言うものの、
エマの顔には疲れがにじみ出ていた。
さっきの戦いよりも
危機を感じていたのか、
騎士の尋問を潜り抜けた今の方が
より安堵しているようだ。
「これからどうします?」
「一旦、帰るよ」
帰る
その言葉を聞いて、
「帰るんですか!?やったー!!」
アリソンの顔がぱあっと明るくなり、
ニコの顔もどこか綻んだ。
「か、帰る?」
もちろんレーガンには
それがなんなのか、
全くもってわからないが、
「僕が持っていると言うか、運営してる広い場所があるので
一旦、そこへ行きます。
早めに寝床が欲しいですから」
「そ、そうですか」
とりあえず、
宿無しを避けられる手段であるのは間違いないらしい。
「その前に、二人には
ちょっとお遣いがあるから」
「ええ~」
「わかりました。」
わかりやすく
不満を示したのは
アリソンだけに見えたが、
心なしか、
ニコの顔にも
残念さが垣間見られた。
「お願い、あんまりジョンとも会ってないでしょ?
色々、聞いて来る次いでに、話してきて?」
「はーい」
「承知しました。何を聞けば?」
「ええとねえ・・・」
そうやって、
ニコに何かを書いて渡した後、
「それじゃあ、行きましょうか」
「は、はい・・・」
エマとレーガンは
ボロボロになった会社を出て、
歩き出す。
たまに振り返って
腕を振っているアリソンに
軽く腕を振り返しながら
二組は分かれて
進んでいった。
「・・・・」
早朝、日が昇り出し、
ちらほらと人の姿が見えてくる。
清々しい朝だと言うのに
ただ寝ていないと言うだけで
あのお日様が嫌に鬱陶しく、暑苦しい。
肌にこびりついた汚れが
いつになっても取れていない気がして
それを明るみに出され、照らされて、
身体がむず痒く、恥ずかしい思いをさせられている。
そんな気だるげな道中
駅に向かう道すがら、レーガンが質問した。
「えっと、具体的にはどこへ行くんです?」
「僕がやってる孤児院があるんです。
そこに一日か、ちょっと泊めてもらおうかなって」
「え、ええ?だ、大丈夫なんですか?
子供がいるところなんて
また狙われたら」
当然の心配ではあるが、
「まあ、ちょっと不安はあるけど
大丈夫だと思う。」
エマは特に
心配していないようだ。
「ウチの安全性は業界一なので」
変に畏まったような顔をしてみせて、
そんな冗談だって言うぐらいには余裕がある。
余程自信があるのだろうか
「へ、へえ・・・そ、そうなんですね・・・」
そこから
しばらく沈黙が続くが、
レーガンはもう一度、
エマに聞いた。
「あの、今回の件を受けても、
総督の指金ではないと思うんですか?」
「ええ」
迷い無く
エマはそう言う。
あまり考えも、悩みもせず、
彼女は即答した
「な、何でです?」
「理由は・・・二つですかね。」
指を二つ立て、
彼女は一つ目の理由から語り出す。
「一つは、騎士たちがちゃんと応対してくれたこと」
普通の話ではあったせいか、
レーガンは頭になかったが、
確かに、
総督が敵に回ったと考えてみれば
おかしな話ではある。
「アイツの指金なら
公務員たちに、何らかの指示があってもおかしくない。
そもそも、ならず者とかあんなヤバい連中を使わなくたって、
経済的に僕を絞め殺すことだって、アイツにはできるんです。
だけど、そんなことは起きて無くて、ちゃんと手続きが行われてます。」
どれだけ
反体制の記事を書こうが、
彼女が何かしらの処罰を受けることも
経済的な嫌がらせや
理不尽な権力に押しつぶされるようなことも
あまりなかった。
「ま、まあ確かに・・・」
「二つ目は、まず、消すなら、多分アイツが直接来ます。」
「な、なんでそう言い切れるんですか?」
「その方が早いからです。」
理由は至って単純
別の誰かに戦わせて、失敗されるくらいなら
あの総督が直々に戦った方が、多分、何倍も効率がいいということだ。
いくつもの
種族を滅ぼしてきたあの魔法にかかれば
戦いの余波だけで、廃墟と化した
この新聞社などすぐさま消えて無くなるだろう。
「で、でも、まさか直接、あの方がやるわけは・・・」
「この国はアイツが総督で、世代交代もない、独裁国家です。
アイツはこの国で何をしても許される立場にありますし、
アイツは開拓の最前線に出ていくぐらい
現場主義です。
必要なら面倒臭がったりしません。
人からの評判だって、気にする奴でもないでしょう?」
「ま、まあ・・・それはそうかも・・・」
何だか納得できるんだが、
できないんだか、
何かを見落としてないといいのだけどと
レーガンには少しの不安が頭に残るが
それを払拭できるほど、否定できるほど
判断材料がなかった。
「じゃあ、ちょっと、危ないですけど
頑張っていきましょう」
「へ?」
いつの間にか
ついていたのは
人気も建物も少ない空き地
駅か何かに向かっていたものだと思っていた
レーガンはただ戸惑いながら
エマに担がれるほかがなく、
「じゃあ、行きますよー」
「え!?ちょちょちょ」
そんな彼女の声と共に
一気に地面が遠のいていく。
「ひ、ひえ!」
何度か、地面が迫り、
かと思えば、直前で止まって、また離れていく。
「ああ、あばばばばば」
何度も死を覚悟するような
急降下と急上昇を繰り返し、
たどり着い先は、
『子供達の家』
なんて書かれた、
大きな大きな、学校のような場所であった。




