尋ね家
よく分かんないけど勢いのまま書いた結果
目の前に、磨りガラスが張った古めかしい横引きの玄関がある。
鍵は、記憶が正しければ子供の頃には壊れていて、廃墟の梁を支える一本の螺子以下の頼りなさだった。
玄関が開いた。突き当たりまで薄暗い木造の廊下から、外圧に向けて少し埃臭い風が吹いた。
台所は閑散としていて、最近改築したのか白いテーブルキャビネットがあり、何も乗っていない盆だけが鎮座していた。キッチンの隅には介護用のベッドが安置されていて、その上には誰も寝ていない。
住人がいなくなったのか、天命を知ったか。それは私にも分からない。
居間の向こうには、まるで子供の物置きのように、古ぼけたボードゲームや、湿気を吸って歪んだ教科書、今はもうないバラエティ番組を録画したCDなどが雑多に溜められていた。
ここの子供はこんなのが好きで、母親はそのためにどんなことをしていたか。私には、朧げながら分かってしまっていた。形容し難い懐かしさを感じたのは、恐らくその子供と世代が近かったからだろうか。
ぐるりと軽く家の中を一周して玄関から出ると、そこは古田舎の田畑があり、それを挟むように向こうに杉山が聳えていた。
背後にあった家は煙のように消えてしまい、虚無感に満ちた空き地になっていた。
私は、都会のアスファルトが少しだけ憎くなった。




