焼け野薔薇
Xで面白いバラの画像を見つけたら降ってきた。
ちなみにAI画像だったよチクショウ。
花弁に触れた指先が火傷した。
黒い輪郭と、燃えるように赤と橙のグラデーションになっている花弁は、文庫本に溢した珈琲のシミのように、一枚一枚の輪郭を曖昧にしている。
彼岸花と共に咲いていそうな、地獄の温度を秘めた花だが、それでもダマスクの香りは燃え尽きていなかったようだ。
夕方の、街を火の海に包んでいくような橙光の中だと、灰の中で燻る火薔薇も少し可憐に見えてしまう。
まるで、誰にも態度を変えない強気な女性のようだ。偏見じみた感想だが、そう思うしかなかった。
根本の土が少し雑だった。この薔薇は、奇妙でありながらも孤独に自然を生きる野薔薇だった。
なんと、自然は優しいのだろうか。排他的になることはない。ただ、受け入れるのみだと証明している。
もし、この薔薇を脅かす者がいるとすれば、それは害虫か人間以外にはあり得ないだろう。この薔薇に目を奪われたことは認めるが、採取して持ち帰ろうと思わなかった自分の人間性を褒めたい気分だった。
気が付けば、太陽は西のビルから身投げして、また十数時間後に東から飛び上がる準備をしていた。
東の空が青から黒へ、街は火から灰へ。
薔薇は、このまま夕焼けに燃やされてしまうのか、それとも夜の雑多な黒に焦がされてしまうのか。
どうなるか見届けたい気持ちもあったが、帰りたい気持ちの方が強かった。
お気に入りの番組が始まるからじゃない。明日も仕事があるからでもない。
火が灯る野薔薇に触れた指先を、氷枕で冷まさなければならなかったからだ。
帰り際に、珍しい燃える薔薇を一瞥する。相変わらずその芯には、蘭燈の灯火が宿っていた。
指先に触れた花弁は、また一段と黒に侵された気がした。
タイトルで「焼けの薔薇」か「焼け野薔薇」のどっちにしようかと悩んで、前者があまりにもダジャレ感があったので後者を選びました。




