表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディスマン短編集『語らずとも談る』  作者: ディスマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/43

旧世界へ、遺書、同じ過去より

特に何も考えず、久々の惰眠という虚脱の中で書いてみました。

この小説は、徹底的な虚無感と無駄と浪費が、母胎を痛めて産んだのです。

拝啓、ーーー様。


 生きていますでしょうか。

 私は、こうして筆を走らせ、少なくともこの瞬間まで生きてこれました。

 

 最近、私は思い立って故郷に帰ってきていますが、貴方はご存知でしょうか。

 今や少年の私が泥と友になった草陰には、人気のない雑居ビルが立っていて、私の夏に無機質を着せていました。

 しかし最近、そのビルも取り壊されると耳にしていますが、二度とあの土と草木は帰ってこないでしょう。

 高校の近くにある、あの川を覚えていますか。

 私もつい数日前に寄ってみましたが、あの頃に比べれば水は貧しくなり、カジカ達に捨てられているようでした。案外、人間より魚の方が自然には無情なのかもしれません。

 風の味は渋味が増して、肌から潤いを拭い去り目尻のシワを露わにさせようとしてきます。貴方はまだ大丈夫でしょうが、私は「あぁ、私も老いてしまったな」と感慨深くなってしまいました。

 相変わらず子供の声も、家族の姿も、腰が曲がっても不屈を保つ老人の足音も、瞬間の私を支えてはくれますが、それでも心に去来する虚無感に近い煙を吹いてはくれていません。未だ、薄く、霞がべったりと肺にまで張り付いているのです。

 ほぼ顔を合わせてもいないのに、貴方にこの手紙を送るのは不躾だったかもしれません。もしかしたら、貴方は既に引っ越していて、この言葉は見ず知らずの誰かに届いているとも考えられます。

 でしたら、私の遺言は失敗に終わった訳ですが、そうなっていないことを願います。


 予報によれば明日は、とても良い天気でございます。

 本当は曇りか雨が相応しかったのですが、皮肉なほどに、青は私の鼓動を祝ってくれています。

 こんなにも晴天なら中止しようかとも思いましたが、この程度で止めてしまえば、私はこの先に待ち構えているであろう、苦渋の決断もできないほど弱くなってしまう気がするのです。

 準備は済ませておきました。後は、この手紙が私の友人達に届いてさえいれば、心残りはありません。

 私は、喜劇的な終わりを望んでいるのです。私は笑いながら終わり、そんな私を見て周りが笑ってくれる。そんな、絶望的な大団円を夢見ていたのです。

 この手紙が貴方に届いているなら、どうか願ってください。クソだと吐き捨てるのなら、手紙を捨てて私に会いに来てください。

 鍵は開けておきますので、土足でも構いませんので、どうか、どうか、どうか。私が明日の晴れを祈るようぶら下がっていることを。或いは、いつも通り、何食わぬ顔で居間の窓辺に立って出迎える私がいふことを、願っていてください。

                敬具、◯◯。

ふざけてない前書きだったでしょ?

私も書き終わってから正気に戻ってびっくりしてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ