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最果ての魔法の読み取り方  作者: 星の入り江
第一章:灰色の導き
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1-8 瞳を借りて

道が交差し、三人と一匹が合流する。


「こっちは何にも収穫無しだよー。手がかりの一つも無し!」


 少女が退屈そうにそう言うと、白猫がまぁまぁと主人を慰める。


「奥まではもう少し進まないといけないな」

「はぐれないように、気をつけよう」


 ランプの灯りに従って道なりに進むと、道が右に左に曲がったり、他の坑道らしきところへとぶつかる。


 道に迷いそうになる前に必ず坑道の地図を確認するようにしていたおかげか、一行は道から大きく反れることなく例の行き止まりまで来ていた。


「鉱夫の荷物置き場にでもなっているのかな。ツルハシとか、バケツとかが箱に入れて置いてある」

「変わったところは特に何も無さそうに見えるけどな…」

「いや?その箱の裏に、穴が空いているよ」


 白猫が呟き、細身の身体で箱の裏に潜り込む。

 くぐもった声で白猫は続けた。


「ふむ、これなら皆頑張れば通り抜けられるんじゃないかな。少年にはちょっと難しいことかもしれないけど。向こうのほうに、明かりが見えるよ」

「箱をどけてみよう」


 ガイルが箱をずらすと、白猫の言うとおりに横穴が掘られていた。四つん這いになれば潜り込めそうな穴で、覗き込めばたしかに離れたところに光が見える。


 白猫を先頭に、ルティ、少女、ガイルの順番で進むことになった。


「暗いところはボクにはよく見えるからね。障害になるものが何も無いことは、ボクが証明しよう」


軽快な足取りで白猫が横穴を通っていく。ルティたちはそれよりゆっくりと、あとに続いた。


 体感十五メートルくらい進んだ頃、穴が終わり、広い空間に出た。ランプが一つだけ置かれた空間で、薄暗くなっている。前方のほうに、人一人が歩いていけそうな細い道が掘り進められていた。


「やっと出られたー!」

「おい、後ろがつかえてる。早く出てくれないか?」

「わわっ、ごめんごめん!」


 やがて、少女とガイルの二人も穴から出てきた。二人もまた、ルティのように、この空間を観察していた。


「へー、カゲナゴリって日の光とか明るいものは嫌うのに、ランプの光は持ち込むんだねー」

「これも盗まれた物かもしれないけどね」

「このランプ、持ち運びできそうだし、持っていくか」


 今度は、ランプを持ったルティが先頭に進む。


 道は二回曲がったあと、まっすぐになっていた。ランプがあるおかげで手元は照らされているが、奥の方はまったく何も見えない暗闇に包まれていた。


「猫さん、ちょっといいですか」

「んにゃ?どうしたのかな」

「ちょっとだけ、"目"を借りてもいいですか?」


 小首を傾げた白猫は、すぐ頷いた。


 ルティは白猫のそばにしゃがみ、ステッキを取り出す。


「闇を覗き込む、獣の光を、私達の目に」


 そっと呟いてから瞬きをすると、少しだけ暗闇が見通せるようになる。とはいっても、星明りが差し込む程度でしか無いため、やはりよく目を凝らさなければならない。


「ルティ、何をしたんだ?」

「猫の、夜行性の獣の瞳をちょっとだけ借りたの。少し遠くが見えるようになったでしょ?こうすれば、ランプの光の届かない場所に潜伏されても、見えるから」

「へー!頭良いねー!」


 まっすぐに続いていた道は、かなり広い空間へと続いていた。


 明かり一つ無い空間の中には、ガラクタが大量に転がっている。


 そして、奥の方に、こちらを怯えたように見る人影──カゲナゴリがいた。


 その姿は昼日中に見た鉱夫の姿とは異なっていた。


額からは青く染まった短い角が生えており、瞳は金色に輝いていた。指の先は四本になっており、長い棒状のものが握り込まれている。


 よく見れば、その棒状のものは、ガイルの刀だった。


「な、なんでお前らがここに…?ここは、バレないはずじゃ…いや、あいつが喋っちまったのか?」

「もう逃げ場所は無いだろ。さっさと降参したほうが良いぞ。盗まれた物は、元の持ち主のもとに返させてもらう。それも、な」


 ガイルが刀を指さすと、カゲナゴリがそれを抱え込み後ずさる。


「これは、渡さないぞ!取引先によこすんだ!」

「取引先?」

「は、話さないぞ!」


 カゲナゴリが逃げる姿勢を見せたため、ガイルが飛び出し、カゲナゴリを捕まえにかかった。


 暗い空間の中、カゲナゴリとガイルの追いかけっこが始まる。本来であれば何も見えないくらい真っ暗闇の中で、正確にあとを追いかけてくるガイルにカゲナゴリが驚き、不正だのなんだのと叫んでいた。


 ルティはステッキを構え、カゲナゴリが逃げそうな先に小さな火花を散らしていた。


「うわ、あっち!眩し!なんだよ、これ!」


 そのうちにガイルが追いつき、二人の距離が近づく。


 カゲナゴリが持っていた刀を鞘に入れたまま振り回し、ガイルを引き離そうとした。


「危な…!刀の使い方じゃないぞ、それは!」

「知らん、知らん!どっか行け!」


 そのうちに鞘が緩むか何かして、刀の本体がカゲナゴリの側に落ちた。


 カゲナゴリはそれを素手で拾い上げ、今度は抜身の刀を振り回し始める。


 しっちゃかめっちゃかに刃が振り回され、流石に危険だと判断したガイルが下がり始めた。


 ルティは、今こそカゲナゴリを止めるチャンスだと気づき、詠唱を行う。


「大地に眠る種よ──魔素に飲み込まれた者を、眠りの世界へと誘いたまえ──!」


 地面からふわりと黒い種のようなものが浮き上がり、ふわりふわりと二人の間を飛んでいく。


 やがてそれはカゲナゴリのほうへと集まり、穏やかに包みこんだ。


 しばらくするとカゲナゴリの身体がぐったりと折れ、いびきが聞こえてくる。


 それを確認してから、ルティは術を解除した。


「助かったよ、ルティ」


 ガイルは、カゲナゴリの持っていた刀と、遠くに飛んでいった鞘を拾い上げ、ベルトに差し戻した。


「残すは…盗まれた物を元の持ち主に返すこと、だな」


 ルティとガイルの二人が見回すと、すでに少女と白猫がガラクタ──盗品の塊の中で走り回っている。手には長いリストを持っているから、色々とチェックしているのだろう。


「私達も手伝おう、ガイル」

「今日は骨が折れそうだな…」


 二人も合流し、盗品の確認を進めてゆく。ルティはあとから、白猫の目を借りておいて本当に良かったと思うのだった。

 

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