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最果ての魔法の読み取り方  作者: 星の入り江
第一章:灰色の導き
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1-3-38 マソコウモリとフタフクロタヌキ

トルテが洞窟に踏み込む。


「やぁ、お昼寝中にすまないね。君達と話したいことがあるんだ」


『お、なんだ?』

『ねこか?やべー、にげろ!』

『ふわぁー、ねむいなぁ』


「…三者三様というか、皆自由だな…」

「ガイル、掴みはどうかい?」

「いや、あまり良くない。もう一歩踏み込めるか?」

「やってみよう。──君達、とても高らかな音のする、素晴らしく甘いベリーを知っているかい?」


『あいつ、まだいるのかよ』

『おなかすいたー』

『しってるよー!』


「知ってるやつがいるらしい」

「ガイル、どの個体かわかる?」

「いや…さすがに分からないな。話を続けてみてくれ」

「了解。──ボク達は、天上の如く甘くて白いベリーを探しているんだ。どこにあるか教えてくれるかな?」


『いいよー』

『いや、だめだろ!』

『なにかくれたりするの?』


「向こうも対価を求めてる。マソコウモリが求めるもので、かつシンジュベリーを除くとなると…果物が妥当か?」

「果物なら、ハルテアが持っているはずだ。あの子、おやつによく食べるし、ここに来る途中でいくつか収穫していたから」


『それちょーだい!』

『あのきのみは、こっちにあるよ!ついてきて!』

『おれはいかねーからな!』


 マソコウモリの集団が外に飛び出す。マソコウモリは暗闇を好むが、他のコウモリと違って昼日中でも活動することができるコウモリなのだ。


 トルテとガイルは集団の後に続いて走り出した。


 五分ほど走ったところに行くと、マソコウモリの集団が特定の木に群がっているのが見えた。木には、真っ白で透明感のある木の実がたわわに実っている。


「これがシンジュベリーか」

「ガイル、届くかい?手のひらいっぱいあれば、十分なはずだ」


 下に生えているシンジュベリーはマソコウモリが齧っているものが多かったため、ガイルは背伸びしたり近くの木に登ったりしてなんとかシンジュベリーを収穫する。


「あとは、ハルテアの持っている果物を彼らにあげよう」


 ハルテアの隠れていたところに戻り、彼女のおやつの果物を受け取る。彼女はおやつを未練がましくガイルに手渡し、「あとで落ち着いたら、また買ってよね!」と言い残してまた隠れた。


「助力感謝するよ。これを君達に」


 ガイルが、ハルテアから受け取った果物を地面に置くと、マソコウモリの数匹がやってきて果物を齧った。


『これ、うまい』

『きにいった』

『ごはん!!!』


 盛り上がるマソコウモリ達はその場に残し、トルテとガイルは洞窟を離れてハルテアのところに戻った。


「シンジュベリーは無事手に入れられたんだよね!あたしの果物渡したんだから、成功したんだよね!?」

「あ、ああ。ほら、ここに沢山あるぞ」


 ガイルは、ポケットに入れられるだけ入れたシンジュベリーを取り出した。


「ねぇ、ちょっとだけ食べても良いかな…?」

「生で食うのはやめとけ。シンジュベリーはめちゃくちゃ甘いけど、中毒症状を起こして、数日間昏倒したっていう例も聞いたことがある。ここでハルテアに倒れられたらこっちが困る」

「あとでジャムを作るから、そこで加熱処理したものをちょっとだけ食べようか」


 ガイル達は場所を移動し、川辺によく生息する鳥を狩ることにした。


「弓とか無いけど、どうやって狩るつもりなんだ?」

「そこはボクの本領発揮さ。ちょっと待っててよ」


 そう言ってトルテが草むらに隠れた。


 トルテが狙っているのは、トルテより一回り小さい野鳥だ。うずらに似ているが、それにしては色が異なるから、また別の種なのだろう。


 トルテが鳥に飛びかかり、捕まえる。


 同じことを場所を変えながら三回行い、三匹分の鶏肉を入手した。


 ガイルが鶏肉の処理をした後、夕暮れが迫る頃になって、トルテが鍋を出すように言う。


 言われたとおりに鍋を取り出してシンジュベリーのジャムを作り、それを生の鶏肉に刷り込んだ。


「さて、この残りのジャムはボク達で食べちゃおうか」

「やったー!いただきまーす!……、甘っ!」

「ん…残り、ハルテアにやるよ」

「えっ、いいの!じゃあもらうねー!」


 月が夜空に煌々と輝く頃、ガイル達はジャムを刷り込んだ鶏肉を片手に草むらを歩き、フクロタヌキが出そうな場所に向かった。


 夜目がきくトルテに続いて暗闇の森を歩き、ほどよいポイントを見つけて鶏肉を地面に置く。


「ここで待つだけだと、持ち去られて逃げられたりしない?」

「簡単なものだけど、罠を張っておくか」


 簡易的な罠を設置し、あとはフクロタヌキがかかるのを待つだけだ。


 月が夜空の頂点に昇る頃、罠を見に行くと、数匹のフクロタヌキがかかっていた。メスが三匹、オスが四匹だ。


「あんな小さい罠によくこんなに集まったな…」

「まぁ良いじゃん。一発で手に入ったんだから」


 オスのフクロタヌキは逃がし、メスのタヌキを見てみる。どれも普通のフクロタヌキで、フタフクロタヌキではない。


「…失敗したとか?」

「いや、大丈夫だよ。今夜は満月だからね」

「満月だと、何かあるの?」

「ふふ、ハルテアは聞いたことないかな?狐と狸は化けるものなのさ」

「いや、あれは物陰に隠れている姿が化けているように見えたからそういう逸話が生まれただけ、で……」


 みるみるうちに、フクロタヌキのフクロが二重になった。顔つきもどこか異なったものになり、暴れていたタヌキたちは大人しくなる。


「マジかよ……」

「ほら、見事に"化けた"だろう?」

「すごーい!これで依頼完了だね!」

「それじゃあ、宿に戻ろうか」


 化けて大人しくなった三匹のフタフクロタヌキを抱えて、宿に戻る。


 商人達は酒盛りの最中だったので、まだ起きていた。


「これが対価のフタフクロタヌキだ。きっかり三匹いるぞ」

「おやおや、本当に捕まえて来たんですか。しかもこんなに速く。いやぁ、本物ですかねぇー」

「確かめてみろよ。………本物だと思うぞ、多分」


 化けたものが本物として認定されるかは怪しいところだが、商人はフタフクロタヌキを本物として認めたようだった。


「ほらよ。約束の品だ」


 商人に衣服を手渡される。


 宿の主が部屋を用意してくれたので、一度部屋に荷物を置いてから着替えてみた。


「どう!?どうかな!似合ってる?トルテ、ガイル!」

「よく似合っているよ。ガイルもね」

「まぁ、サイズはぴったりだな」


 姿見が無かったのでお互いに見せ合って確認するしかなかったが、エルードの谷に潜入するなら上出来な衣装だった。


「夜が明けたら、エルードの谷に潜入だね!」


………………………………………………

一方その頃、オークルはルグテースに呼び出され、珍しくフロアを離れていた。


 前を歩くルグテースにただついていくばかりで、何の目的でどこに連れて行かれるのか全く分かっていなかった。


 かといって質問する気分にもならなかったため、二人の間には沈黙が流れる。


 やがて大きな扉の前でルグテースが立ち止まった。


「さて、オークルよ。君には、重大なおつかいを頼みたい」

「おつかい?何ですか?」

「ネズミを捕まえて来てほしいのだ」


 オークルの頭の中に浮かんだのは、文字通りのネズミだった。ねずみ色だったり、茶色だったり、真っ白だったりするげっ歯類の小動物だ。


 まさかルグテースが指しているのが、人間二人と猫一匹だとは思いつかなかった。


「ネズミは、センターの外でうろちょろするだろう。それを上手く全部、捕まえてきてくれ。三匹逃げているはずだ」

「分かりました……え、外?」

「ああ…君は初めてここの外に出るんだったね。外といっても、街に出るだけだ。それより外は魔物がいて危険だから、灰色の服を着た人が歩いていない場所だったり、灰色の建物が見えないところには行かないように注意してくれ」

「分かりました!お任せ下さい!」

「頼んだぞ。では、行ってきなさい」


 扉が開かれ、オークルは初めてセンターの外に踏み出した。


 絵本で見かけた満月が空高く輝く夜だった。


「ネズミ…ネズミさん…!初めて触れる…!」


 なお、オークルは本当に本物のネズミのことだと勘違いしたままだった。

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