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最果ての魔法の読み取り方  作者: 星の入り江
第一章:灰色の導き
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1-4 ある女の子の行方

鳥の鳴き声に目を覚ますと、午前の太陽の温かな光が小屋に差し込んでいた。


 寝袋からもそもそと外に這い出ると、ガチャリと扉が開き、外からガイルが戻ってきた。


「ルティってもしかして、朝に弱いのか?」

「これでも早起きだよ…」


 城にいた頃はいつも正午ごろに起きていたのだから、九時手前に目を覚ますのは相当早起きだろう。


 ガイルが汲んできたという桶の水から少々手のひらにすくい取り、ぱしゃぱしゃと顔にかける。


 すっきりと目覚めたあとは、ガイルと共に朝食の用意をする。


「暫くはムアを貯めるための寄り道の旅になるだろうけど…まず最初に向かう先はどうする?」

「あれ?南の方の村じゃないの?」

「そっちに向かう道はもうとっくに通り過ぎた。戻ってもいいけど、あいつらに出くわす可能性がある。別の道を選んだほうが良いだろうな」


 前日の、灰色の衣服の男たちのことを思い出す。東の大陸、フィルガレ大陸の国際戦士と呼ばれるくらいの彼らが、二人を囲んで刃を向けてくる──そこまで考えて、今取るべき得策ではないと判断した。


「港湾都市に向かうから、そっちに近い方向に向かえば良いんじゃない?」

「そうなると…カカ村かティレ村のどっちかになるな」

「どんな場所だったっけ…?」

「カカ村は鉄鋼業の栄えている村で、近くに鉱山がある。ただ、この鉱山は魔物が現れることが多いから、一般人が簡単に足を踏み入れられる場所じゃない。

 ティレ村はティレ山の麓にある村で、農業が優れている。特産品の高山大根はかなり美味いらしい」

「ムアを稼ぐなら、カカ村のほうが良いかもね」


 朝食を食べ終えて出発の準備をし、二人は小屋を離れた。


 寝ている合間に夜露が降りたのか、森の中は透明な雫によって照らされ、涼しげになっていた。


 鳥の声が辺りに満ち溢れ、昼の動物たちが遠くで動き回っている。


「賑やかな森だね」

「それだけ平和ってことだろ。…まぁたしかに、フィルガレ大陸では見ることのできない光景だけどな」

「魔物が多いの?」

「魔物も多いし、森を切り開こうとする人間も多い。動物たちも、狩り場所や寝場所、巣穴なんかを奪われるから、数もそんなにいないし」


 二人のすぐ手前を、赤い狐がさっと走り抜けた。

 ルティはそれを、狩りの途中だと思った。


「ん?おかしいな…」

「どうしたの?」

「狐は夜行性の生き物なんだ。…子育て中、にしては時期が早すぎるような」


 ガイルが感じた違和感は、二人の背後から音もなく現れた。


 ガイルに押し倒されたルティが見たのは、人の二倍ほどの大きさの、巨大な鳥が襲いかかってくる場面だった。


 ガイルが刀を構え、一太刀入れようとする。と、


「お、お待ち下さい!わたくしはあなた方を獲物とは思っておりませんゆえ!」

「鳥が、喋った?」

「随分舌が滑らかだな…」


 ガイルの刀の切っ先が、少し下へと向けられる。それに安心したのか、巨大な鳥はほっとひと息ついた。


「申し遅れました、わたくし、マソフクロウのマヒルと言います。夜中に眠り、昼間に活動することから、こう名付けられたのであります。わたくし、ある人物を探す傍ら、ちょうどよく狐を見かけたもので狩りをしていたのでありますが…お二方は、ハルテア、と名乗る人物を知りませんかな?」

「「ハルテア?」」

「ええ、自称探偵の卵の、まぁどちらかといえばペットの猫のほうが頭が良いのですが、女の子です。彼女、わたくしの家に泊まった際に荷物を全部忘れていってしまわれて」


 そういってマヒルは、背中にくくりつけられた革のカバンを見せる。


 ルティが中を見てみると、いかにも旅に必要そうなもの──コンパス、時計、中身の入った財布、小型ナイフに毛布などなど──がぎっしりと詰まっている。


「わたくし、夜中眠っていたので、なぜ荷物を全部忘れて外に出たのかは分からないのですがね、その女の子は、猫だけを連れてどこかへ向かってしまわれたのですよ。本人は、何かを探すために旅していると語っていたので、流石に荷物無しで旅を続けるのは些か苦労するだろうと思った次第でございます」

「そいつ、自称でも探偵なんだよな?とんだおっちょこちょいでなければ、何か理由があったんじゃないか?」

「例えば?」

「…分からない」


 二人と一羽で首を傾げるが、答えらしいものは出てこない。


「とにかく、そいつがマヒルの家を離れたのは、今朝のことだろ?せいぜい五、六時間くらいなら…行き先は、大体絞り込めそうだけどな」

「もしかして、カカ村?」

「もしくは、ティレ村のどちらか、だな」


 ガイル曰く、ここから数時間以内に移動できる場所にある村は、カカ村、ティレ村の二つしか無いという。


 北の方に向かったのであれば、何かしらの痕跡を二人が見つけていた可能性が高いため、南の方へ向かったと考えるのが妥当だった。


「私達はこれから、カカ村に向かおうとしていたの」

「ティレ村にそいつが向かった可能性もあるから、二手に別れて探せば確実に見つけられるが…」

「そうすると、私達がハルテアを見つけた場合、荷物はどうしよう?」


 そこで二人と一羽は額を突き合わせて話し合った。


 ひとまず、二つの村に向かう街道は途中まで一本しか無いため、分かれ道までは共に向かう。以降は、二人はカカ村へ、マヒルはティレ村へと向かうのだ。


 ハルテアがカカ村にいた場合は荷物が二人の手元に無いため、ティレ村のマヒルの下へと向かう。


 逆にティレ村にいた場合は、マヒルが彼女に荷物を渡したあとカカ村にいる二人に報告するため飛んでゆく。そう決まった。


「もちろん、まだどちらの村にも着いていない可能性がありますので、ようく目を凝らして歩かなければいけませんがね」

「とはいえ、今日中には到着するだろ。流石に、到着する頃には夜になっているだろうから、本格的に探すのは明日以降になりそうだな」

「それじゃ、出発だね!」


 こうして、二人と一羽は街道に向かって歩き出した。


……………………………………………………

一方その頃、森のある地点で。


「ねぇ、────。本当に戻らなくて良いの?」

「依頼を遂行するためなんだもん…夜寒いしお腹も空いてきたけど、ああすれば、あの優しいフクロウさんは後を追いかけてくるでしょ?その途中できっと、彼女たちに行き当たる。それを信じようよ」

「ふぅん。探偵としては、随分といきあたりばったりな捜査方法だね。まぁともかく、さっさと村に行こうよ」


 ある少女と白猫一匹もまた、村へ向かって歩き出していた。


 その行く先は、分からない。なぜならば、見事に道に迷っていたからである。


「せめて、地図くらいは持ってきておけば良かった…」

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