↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最果ての魔法の読み取り方  作者: 星の入り江
第一章:灰色の導き
10/65

1-10 ルティが書物を見つけたわけ

昨日まで野宿していたというハルテアとトルテが心配になったルティは、宿屋の女将さんに確認して、二人一緒の同じ部屋で一夜を過ごすことになった。


 眠るにはまだ少し早い時間だった。


 ルティは、今後の旅にハルテア達が加わる旨を聞いてから、旅に出た理由を話すべきだと胸の内で思っていたものの、口に出すのは少し躊躇っていた。


 ガイルには話すことができたけれど、あれはどちらかといえば、ガイルが自分自身のことを話してくれて

、かつその場で話さなければガイルが危ない目に合う可能性が高いと感じたから話せたことで、緊急ではない今の状態で話し出すのは少し勇気のいることだった。


「ルティ?どうしたの?」

「あ、えっと…その……」

「当ててみせようか?……何か話したいけど、話せない。どうしようって考えてるでしょ!」

「よくわかるね…」

「へへん、あたしは探偵の卵だからね!」


 もしここにトルテがいれば「ご主人サマのそれはただのあてずっぽうなんだけどね」と言っていただろうが、肝心の当猫はガイルの部屋でのんびりと丸まっていた。


「話しにくいことだったら、話さなくても良いと思うよ。探偵の卵だから、秘密はしっっかり守るけど」

「ハルテアは、依頼主から、私達の旅の始まりって聞いている?」

「んー、少しは?でも、ルティの旅の始まりはあんまり聞いてなかったかも」

「ハルテアにも、話しておかなきゃって思うんだけど…」

「話したくなったら、話してほしいな。もちろん、話したくなくなったら、そのまま、おやすみ、で良いから」


 ハルテアの聞く態度は、今のルティにとって話しやすい雰囲気を出していた。そして、ルティは語りだした。

………………………………

ルティの両親は、いや、その親族は、かつてこの大陸を旅して回る考古学者の集団だった。古文に通じ、古の芸術をこよなく愛し、生物種の発展や進化に注目していた。


 一行が旅の足を止めたのは、二つの出来事が起こったからだった。


 一つは、集団の意見の分裂。若者と年上の者で意見が真っ二つに分かれ、一行は小集団となった。


 二つ目は、ルティが母親の胎内に宿ったことだった。


 父親と母親は、一番近いところにあったディルナッケ街に向かい、そこに定住することにした。


 しかし父親は、ルティが生まれる一月前に亡くなった。謎の人物に襲撃された結果らしいが、殺害されたこと以外は何も分かっていなかった。


 母親は一人でルティを出産し、ルティが五歳になるまでを育てた。


 ディルナッケ街では、五歳の子供から特別な才能のある子どもを城に誘致するという伝統があった。曰く、幼い頃から城での生活に慣れた才能者は、成長した後より多くの力を、国の民に、土地に、文化に与えるという見方が強かったからだ。


 それにより、ルティには、古文の才能があることが見出された。古文の才能は即ち古い魔法にも通ずる。


 城に移り住むことになったルティは、先生から古文や魔法についてを教わった。月に一度、母親のいる家に帰って、幸せな日々を過ごしていた。


 けれど、ルティが十歳の誕生日を迎えた月、母親が行方不明となってしまった。


 どこに向かったのかも、なぜ出ていったのかも分からないまま月日は流れていった。


 唯一母親の家に残されていたメモには、書庫、黄色い棚、三列目の真ん中、とだけ書かれていた。


 十六歳になった日、ルティは城の禁書庫に忍び込んでメモの通りに本を探した。それまで一人で夜中に行動することが許されなかったため、ようやく掴んだ機会だった。


 その本は──書物は、全てメルリオ語で書かれた未解読の書だった。


 メルリオ語は、今の時代、話者は一人もいないとされ、解読するための文献もほとんど失われているとされていた。


 ルティの母親の残したファイルには、メルリオ語の解読表があり、ルティはそれを暗記していた。


 本を引き抜いたルティは、自室に戻り、解読するため日々を過ごした。


 二月がすぎるころ、ルティがいつまで経っても部屋から出てこないことから、城のものが専属の医者をルティのもとへと回したことで、ようやくルティはどれだけ長い期間解読に熱中していたかを認識した。


 まだ序章しか解読しきれていなかったものの、ルティには、書物に書かれている内容の概要を把握することはできていた。


 神エヌプスを清める術。


 そして同時に、神エヌプスを混乱に貶めた上で目覚めさせるという、恐ろしい術にもなりうる内容が書かれていたのだ。


 書物の解読を進めようとすれば、ルティの身も危険になる。最悪のケースを避けるには、ルティ自身が城を離れることが必要だった。


 城のものには多くは語らず、ただ一人ルティのことを信じてくれた医者の男のみがルティのことを知る状態で、城を離れた。


 全ては、神エヌプスを利用させないためだった。

………………………………

「ガイルにもこの話はしてあるんだ」

「そうなんだ。あたしにも話してくれて、ありがとう!」

「…どういたしまして」

「どっちにしても神様復活するのに、何で解読しようとするの?」

「お母さんが残した手がかりだから…どうしても気になっちゃうんだ」


 ルティが望むのは、書物の解読を通して行方不明の母の手がかりを見つけることであり、神エヌプスの復活は二の次であった。とはいえ、神が復活した時狂気を孕んでいれば母探しどころではなくなるため、そうならないように解読しているが。


「お母さん、見つかるといいね」

「うん。お母さんも見つけて、世界は続くようにする。大変だし、簡単じゃないってことはわかっているけど、やり遂げてみせる」

「ルティは強いんだね」

「そうかな…?」

「あたしは家族みんな無事だし元気だからさ。いなくなった家族のために戦えるのって、すごいことだと思うんだ。あたしだったらきっと、諦めちゃうから」

「諦めないよ。何もかも。ガイルとも約束したんだ」

「へぇ、やっぱり二人って、そういう関係〜?」

「そういう関係って?」


 結局二人は夜遅くなるまで談笑した。


 翌朝、やっぱり九時頃に二人とも起きてきたことに、ガイルとトルテがそっくり同じ様子で呆れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。