第10話 サラは考える
「お嬢様!いきなり護衛騎士の模擬戦で優勝したって本当ですか?」
「本当。でもさぁ、護衛騎士ってあんなに弱くていいの?もっと鍛錬が必要なんじゃないかと思うんだよねぇ」
それはお嬢様が規格外の強さだからそのように思うのです。
「2回戦はリキューって先輩でさぁ、どうやら東の方の出身みたいなんだ。それで普段使ってる武器は刀らしい。刀だったら俺も勝てるかどうかは分からない」
「『俺』じゃないですよ!今はお嬢様ですよ!」
「決勝戦がマークだったのは驚いたけど、不戦勝。マーク曰く「普段から勝ったことがないから」だって。なんかそういうのは嬉しいよね」
ああ、マーク様。お嬢様に貴方の気持ちを届けるのは難しいようです。
侯爵様と侯爵夫人は育て方を間違えてしまったのかもしれません。
全く異性にトキメカないお嬢様。私はどうしたらいいのでしょう?
吊り橋効果……を狙っても男装の状態でマーク様にドキドキすることは難しいかと。
あ、そうだ!お嬢様デビュタントをまだしてないんだった。まずはデビュタントをしてみてはどうだろう?エスコート役マーク様で。
お嬢様はダンスもできますから、問題はないでしょう。本来の姿でマーク様とダンスしてはどうでしょう?
一介の侍女ですが、陛下に奏上してみましょう。
私は、伝手の伝手の伝手くらいを使って、陛下に取り次いでいただきました。
「一介の侍女でありながらも、陛下へ奏上する機会を与えていただき光栄です。また、お忙し中、時間をお取りいただきありがとうございました」
「うーん、今後其方とは密に意見を交換できるように、宰相の方に伝えておこう。何か用がある時は宰相に一言「私と話がしたい」と伝えてくれれば、問題ない。ステフ嬢のことであろう?」
「まさにその通りでございます。有難くもマーク様に心を寄せていただいているようなのですが、ステフ様には全く気が付いていないようで。思えば、ステフ様にお仕えをしていますが、お嬢様と色恋の話をしたことが全くないんですよ。妙齢の女性が全く恋愛沙汰の話をしないのです。異常です。マーク様がアプローチをしているようなのですが、なんというか暖簾に腕押し、糠に釘のようで……。それも男の格好をしているのが原因では?と思い至ったのです。男が男に言い寄られても何も思わないでしょう?ですので、今度のパーティーでデビュタントを!と考えたのです!」
「そうだな…。確かに男の格好の時に男に言い寄られてもドキドキも何もないな。そのパーティーのエスコート役にマークを?」
「是非お願したく思います!女性の格好で、男性に言い寄られた時のお嬢様の反応も見たいですし、あとパーティーではパートナーとダンスを踊ったりもしますよね?チャンスです!その時こそマーク様に是非とも頑張ってお嬢様をドキドキさせてほしいものです。パーティーでは軽食も出るでしょう?パートナーがマーク様でありながらも、ガツガツと食い意地が張っていそうです。その辺もコントロールしていただきたいです」
「なるほど、サラの言いたいことはわかった。マークがダンスでステフ嬢をエスコートし、ドキドキさせることが出来れば、この作戦は成功だな?」
「そうです。今まで、異性にドキドキさせられたこともないでしょうから。剣術で負けそうでドキドキとかはあるでしょうけど、それとは違うトキメキタイプのドキドキです」
サラは考えるというか謀略?侍女も大変なんですね。




