↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/104

【第69話】迷子様のご案内




 しっかりと反省をした翌日の朝、オラシアさんに今日対処する本を聞きに行った。

 行ったのだが──。



「実はね、数日くらいお仕事無いかもなの……

 ルーナちゃんも別件で騎士隊の方に行ってるし、連休にしちゃう?

 普段頑張ってるし、少しくらい良いわ!

 願わくばわたしも……」


「駄目に決まってるでしょう?

 今日は特に大事な用があるんですから」


「ぐぬぬぅ……」



 横のメイレールさんにピシャッと否定される。

 この女神様、隙あらば休もうとするな……


 そんな訳で数日休みを言い渡されてしまった。

 連休か……何すればいいんだろう?

 ルーナも居ないし、先輩はセルビアに連れられて仕事してるしな。


 本を読んで過ごすのも魅力だけど、皆が仕事をしている場所で休むのは気が引ける。

 と言う訳で、街を散歩でもしよう。

 僕がここに来てから割と経つが、実の所まだ行ったことが無い場所の方が多い。



「相変わらず、いつでも天気いいな。

 ここで雨降ってるの見たことないや」



 さて、ゆっくりと神域を開拓していくか。

 大通りから外れたお店や民家、公園などを見て回る。

 なんと平和で素晴らしい時間だろう。

 異形がいないという精神的な安心感がすごい。



「へぇ、こんな所にクレープのお店があるのか……

 ルーナとか先輩が喜びそうだな」


「おっ! 君、ナツメ君じゃないかい!?

 決闘見てたよ〜! もし良かったらさ、食べていっておくれよ!」


「えっ、あ、ありがとうございます!」



 店のお兄さんから半ば強引に手渡された小包を受け取り、きちんとお礼を言ってから1口頬張る。

 柔く、ほんのり暖かい生地の中から、チョコレートや生クリームが溢れてくる。

 噛む度に瑞々しい果実の爽やかな酸味も相まって、とても美味しい。


「おいひぃれふ!」


「いや〜、嬉しいね!

 次は相棒のお嬢ちゃんとかも連れておいでよ!」


「はい! 次は皆で来ますね!」


「待ってるよ〜!」



 お兄さんに別れを告げた後、クレープ片手に散歩を再開した。

 しばらく散策を続けていると、水が張ってあるだけの噴水がある、静かな広場にたどり着いた。

 歩きながらだと食べ辛いし、座って食べるか。

 噴水の縁のホコリを少し払い、腰掛ける。



「改めて、いただきま〜「それ何!?」」


「うわぁっ! え、えーと誰?」


「ファーはね、ファーだよ!」



 随分と顔が整ったちびっ子が話しかけてきた。

 僕と一緒の真っ黒な髪に、男の子とも女の子とも言えない不思議な容姿と声。

 好奇心に満ち溢れた綺麗な色の瞳。

 生憎、この色を例える言葉を僕は持ち合わせていない。


 って言うか、直前まで気配すら感じなかったよ……

 ファーと名乗るこの子、もしかすると迷子かな?



「えっと、ファーちゃん……でいいのかな?

 あ〜、えっと、食べかけで良ければ食べるかい?」


「いいの!? 食べたい!」


「ほら、ここに座ってゆっくり食べな」



 隣をぽんぽんと叩いて場所を示すと、何の警戒も無く座り、受け取ったクレープを口にする。



「美味しい! これ美味しいよ!」


「ははっ、それは良かった! 遠慮せずに全部お食べ」


「ありがとう! 君、良い人だね!

 ねぇお兄さん、ファーを案内してよ!」


「案内? やっぱり君はこの辺の子じゃないんだね?」


「ううん、違うよ?」



 迷子確定か……よし、幸いな事に僕は暇である。

 この子のお家まで連れて行ってあげようじゃないか。

 取り敢えず、この子が食べ終わるまでは休憩だ。


 穏やかで平和な風が吹く。

 こういう休日の楽しみ方もいいな。

 特別に何かをする訳でもなく、こうして歩いているだけで、素敵な出会いや発見があった。



「ご馳走様! ありがと、美味しかった!」


「うぉっ? 早いな! じゃあ行こうか?」


「うん! そういえばお兄さん、名前は?」


「言い忘れてたね。僕の名前はナツメって言うんだ。

 よろしくね、ファーちゃん」



 ファーちゃんに目線を合わせて自己紹介する。

 それにしても賢そうな子だ。

 少し警戒感が薄くて、放っておけないけど……



「さて、どうやって探そうか……

 案内するとは言ったけど、僕も実は詳しくないんだ」


「そうなのか……じゃあ、冒険しながら探す!」


「冒険か……いいよ! ファーちゃんが隊長だ!」


「ファーが隊長!? わーい! ナツメは船ね!」



 あ、僕は役割とかじゃなくて乗り物なのね。

 まぁいい。全力で船をしてあげるとしよう!

 ファーちゃんを抱き上げて、肩車をする。



「高ーい! あははははっ! 行けー!」


「よし来た! 行くぞー!」



 ファーちゃんを肩に乗せ、あらゆる場所を巡った。

 勿論、道など分かるはずもない。

 何の当てもなく、ひたすら突き進む。


 そして、とうとう目的地に辿り着いた。

 街の入口に近い場所に位置した、比較的大きなお家。

 ファーちゃんの反応的にここだろう。



「ファーちゃん、ここで合ってる?」


「うん! ここ! ありがとうナツメ!

 そうだ! ナツメをみんなに自慢したい!」


「いやいやいや、パパやママが困っちゃうから」


「いーやー! ナツメも来るの!」



 随分強引だな……まぁ挨拶くらいならいいか……

 ファーちゃんを肩に乗せたまま、年季の入ったドアをノックする。

 すると返事も無く、ギィッとドアが開かれる。

 恐る恐る中に入ると、衝撃の光景に驚かされた。



「お待ちしておりました、()()()()()()



 何人もの人が片膝を突いて頭を垂れている。

 それに、ファクトマ様?

 え、何? どういうこと?

 困惑している中、ファーちゃんが先程までと同じ調子で話し始める。



「みんな! 顔を上げていいよ!

 待たせてごめんね?」


「いえ、私達も有意義な時間を過ごす事ができました。

 おや、そちらの男の子は?」


「うん、紹介するよ! この人はナツメだ!

 ここまで案内してもらったの! 友達だよ!」



 うん、嬉しい事を言ってくれる。

 この状況じゃなければ素直に喜んでいた所なのだが、見つけてしまったんだ。

 頭を垂れている人達の中にオラシアさんの姿を。

 これ、例の神様が集まる会議じゃないか……




読んでいただきありがとうございます!


お時間に余裕があれば、評価やいいねを押して欲しいです!

更に、「面白い!」「続きが読みたい!」と思ってくれた方は、ブックマークや感想で応援してくれるととても活力になります!


次回、ファーの正体が明らかに? お楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おう、新たな出逢いが! あらあら、あの人まで一緒に…まったくですね。何気ない休日の一場面かと思いきや、この世界への理解がますます深まっていくようで。 [一言] 本作における本筋からブレない…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。