【第46話】完食……?
「……後輩…覚悟……出来てる?」
「いやまぁ、はい。前回の反省を活かしましょう」
「ナツメ君はここに来た事があるの?」
「うん。えげつないボリュームでね、途中でモネさんが来なければ大変なことになってた……」
今でも思い出すだけで満腹になりそうだ。
『超特大骨付き肉』、今回は2回りくらい小さいのを分けて食べよう。
ルーナとレヴィアさんは来た事が無いらしく、目を爛々と輝かせている。
ただ、僕と先輩は1度経験しているからか、面構えが違う。
「……後輩…行くよ」
「今回は4人で完食を目指しましょう」
流石に4人も居れば少し小さいサイズくらい、残さずに食べ切れるだろう。
店内に入った僕達は、前回とは違い6人は座れそうな大きなテーブル席に案内される。
僕とレヴィアさんが隣同士、その向かい側に先輩とルーナが座った。
「ねぇねぇクーちゃん! どれ頼む?」
「……ん……決まってる」
「あら、クークラさんは決まっていますのね。
アタクシは何にしましょう?」
「あの……レヴィアさん、悩んでる所悪いんですけど、たぶん1品で全員が食べれます」
「え? 足りるんですの!?」
「まぁそうなりますよね。
先輩、今回は前より小さいサイズを頼みましょうか」
先輩に確認しようとしたのだが。
「……ん……この……1番大きいやつで!」
「おっ! 嬢ちゃん、前回のリベンジかい?
4人でもきついかもしれんぞ?」
「……構わん……次は食べる」
勝手に注文している!?
しかも前回と同じサイズを!?
僕が少し目を離した隙に……
先輩と目が合うと、得意げにサムズアップでアピールしてくる。
前回の失敗から学んでないのかな?
2人揃って仲良く、気分を悪くしていたのに……
しばらくすると──。
「はい、お待ちどう! 特大骨付き肉になります」
「「「「……ぅわ〜お……」」」」
視界が肉で遮られる。
ジュワジュワと滴る肉汁、香ばしいスパイスの香りが食欲を誘う。
美味しそうではある、あるけど。
「すっごい! 大きい! ナツメ君早く食べよ!」
「こんなの初めて見ましたわ! じ、自分で切り分けてもいいんですの?」
いや、やっぱり大き過ぎるんだよな……
僕も最初はこれくらい目が輝いていたっけ。
さあ、覚悟を決めて挑むとするか。
4人で食べ始めて数十分、目の前のお肉はと言うと。
「完食……だと……? うっぷ……」
「……後輩……クークラ達が普通…だよね? うっぷ……」
「どう考えても、うっ……そうでしょう」
グロッキーな僕と先輩に対して、初挑戦の2人は──。
「美味しかったね〜! また来たい!」
「ええ! ええ! とても美味しかったですわ!
何故もっと早くにこのお店と出会えなかったのでしょう!」
何ともまぁ、満足そうな顔で絶賛していた。
その体躯のどこに、あの量の肉が入るんだ?
それとも種族的な何かなのか?
天翼族は胃が4次元になってるとか?
謎は多いが、完食出来て何よりだ。
食事も終わり4人で談笑していると、ふとこんな事を聞かれた。
「ナツメさん、少し聞いてもいいかしら?
図書館長の仕事って確か、本の中で異形と化した者を倒したりするはず……ですわよね?
今までどんな異形を倒して来たんですの?」
「そうですね……僕が見たやつだと──」
兎の異形、義姉達の異形、巨人の異形、そして最後に鬼の異形。
僕が見てきた異形はまだ4体だけだが、それなりに印象に残っている。
その概要を大まかにレヴィアさんに教えた。
「壮絶ですのね……
でも、物語の中に入るなんて夢のようですわ。
御伽噺のシンデレラ城を生で見るなんて、普通は出来ませんもの。
アタクシは入ってみたい物語が沢山ありますわ」
「レヴィアさんはどんな物語が好きなんですか?」
「そうですわね……
アタクシは特に、儚い物語を好みますわ。
想い人のために奔走して、想い届かず最後には散っていく、そんな物語が好きですわ。
胸がこう、キュンキュンしますの!」
あ〜、なんか分かるな。
僕は基本的にハッピーエンドが好きなんだけど、そういう物語は物語でアリだと思っている。
むしろ物語の美しさで言えば、儚い物語の方が断然優れている気がする。
「良いですよね。でも、職業柄って言って良いのかな?
そういう物語ってとんでもない異形がいそうで、正直怖いんですよね……」
「物語を純粋に楽しめなくなりそうですわね……
アタクシ、今思うと自分が選ばれなくて良かった気がしますの。
あの時は強い言い方をして申し訳ありません」
「いえ! 気にしてませんよ。
初めて会った時は気の強そうな人だなぁ、とは思いましたけど、こうして話していると案外まともな人だし、比べる対象がロイドですからね」
「アレと比べられていたとは……」
騎士学校のAクラスの人でやたらとアピールしてきたのは、レヴィアさんとロイドくらいなんだもの。
「そう言えば、アレは決闘の後どうなったんですか?」
「あれ、聞いてないんですの?
ロイドは約1週間の謹慎及び、Bクラスへの降格が言い渡されましたわ。
控えめに言って、自業自得ですわね……」
そうだったんだ……
アレに興味が無さ過ぎてどうでもいいと言えばいいが、アレの性格的に何かしら報復とか考えていそうで嫌だな。
何も無いといいけど……
この予想が的中してしまうのは、今はまだ先の話だった……
【食事中のひとコマ】
「ウマウマですわぁ! こっちの部位、ルーナさんにも切り分けて差し上げますわね!」
「ありがとう! あとね、ルーナさんじゃなくてルーナでいいよ? もうお友達だし、ね?」
「お、お友達……ですの? アタクシが?」
「え? うん、そのつもりだけど……嫌だった?」
「いえ! そのような事! その…友達だと面と向かって言ってくれた人なんてル、ルーナが初めてなのですわ!」
「そうなんだ! じゃあこれからはお友達!
改めて、よろしくね!」
「こちらこそ、よろしくお願いしますわ!」




